僕達は《神に戦い》を挑む。

結城 翔

第五話 アジトでの戦い。開戦

「はぁっ。はぁっ。」

「ここね。......ってちょっとあんた体力なさすぎでしょ。」

「普段運動していない奴が車を全力疾走で追いかけたらこんなもんだよ!」

「まだ叫ぶ体力あるなら大丈夫そうね。入るわよ。」

 俺たちは少女を乗せた車を全力疾走で追いかけ、ついにアジトを見つけ出した。見失いもしたが一本道なのが助かった。
 アジトは広くはないが狭くもないという感じで、灰色の壁に屋根のないアジトは殺風景に思えた。

「伏せて!」

 俺はとっさにしゃがんだ。俺の頭上をバットが水平に空を切った。
 俺は相手と距離を取り、どんな攻撃が来ても対応出来るように構えた。

「よくかわしたわ。褒めてあげる。」

「それはありがとうございます。」
 
 彼女はバックステップで俺の隣に来て、俺と同じように構える。

「お前ら後ろに付けてきてた奴らだよな。何しに来た。」

 バットを振り回していた男は、肩にバットを置き尋ねてきた。

「あなた達が誘拐した女の子を取り返しに来たわ。」

「なーるほど。リーダー。どうしますか?」

 彼はコンテナの上に座っている男の方を向かって言った。ここには四人いるが、リーダーの男が一番若そうだ。相当実力があるということか。

「お前らが探している女はこいつのことか。」

 男はコンテナを足で叩くと、コンテナの叩いた側面が大きな音を立てて床に落ちた。
 中には椅子に座らされ、椅子に手足を縛られている女の子がいた。

「モモ!」

「ハク!?助けに来てくれたの!?」

 モモの所まで走って駆け付けようとした俺の前を三人が遮る。

「ここから先には通さねぇぜ。」

「邪魔だ!」

「ねぇねぇねぇねぇ!」

「彼女を取り返したきゃ俺達を倒してからにしな!」

「ねぇねぇねぇねぇ!」

「俺を怒らせるなよ?」

「ねぇねぇねぇねぇ!」

「......。」

 全員に沈黙が流れる。

「うるせぇな!なんだよ!」

「あのリーダーとかいう奴の男の背中にぶら下げてあるの私の刀だわ!」

「は?あの刀が?なんて偶然だよ。」

「刀があるなら話は早いわ。あの刀を奪い返してとんずらかくわよ。」

「モモはどうするんだよ!」

「モモ?ああ。あんたの探し人の。そんなの関係ないわよ。」

「ここに来た目的なんだが!?」

「そう言えばあんた世界一の美少女的女の子なんてハードル上げてたわね。そんな子は存在しないって私が直接見て判断してあげるわ。......うっそ!?なにあの子!?世界一の美少女的女の子じゃない!」

「いちいち騒がしい奴だな!」

「あんな世界一の美少女的女の子と、あんたみたいな冴えない男が友達な訳がないわ。......もしかしてあなたが誘拐犯?」

「んなわけあるか!」

「茶番はそこまでだ!」

 敵のリーダーが手に持っている二丁の拳銃で俺達を撃ってきた。俺らは近くのコンテナの裏に隠れた。

「どうする?先に三人を倒すか?」

「いやリーダーの武器は拳銃。三人と戦ってる時にバックアップされたら面倒だわ。私が三人を引き付けてるからあなたがリーダーをやって。」

「俺が?」

「だって私剣士なのに刀持っていないもの。多分あなたより戦えないわ。」

「なら三人相手するのも辛いんじゃ。」

「それぐらいは何とかしてみせる。心配しないでリーダーと戦ってきて。」

「了解。」

「行くわよ。......そういえばまだ名前聞いてなかったわね。」

「ああ、俺の名前は中洲ハクト。よろしく。」

「私は千葉アカリ。行くわよ。」

 俺らは同時に双方向から飛び出し、相手側に接近した。運良く俺側には一人のみ。
 相手は木刀を頭上に構えて振り下ろす。俺はサイドステップで木刀をかわし、相手の右肩目掛けて叫んだ。

「パワーウィンド!」

 相手は突風に飛ばされ千葉の方向に飛ばされた。

「詠唱破棄!?」

 この世の中にある魔法は通常詠唱しなければ発動しない。だが俺はその詠唱を言わずに魔法を使う事が出来た。理由はスキルによるものだ。スキルとは個人が持っている特有のもので、同じスキルは同じ世代に存在することはない。
 俺のスキルは詠唱破棄。そのまんまの意味で、詠唱を言わずして魔法を使える。その為、普通接近戦に弱い魔法使いとは違い、接近戦に強くなる。
 俺はモモと所まで走った。が、俺の目の前に敵のリーダーが立ちふさがる。

「通すか!」

 彼は二丁の拳銃を構える。

「ぶっ潰す!」
 
 俺は腕を突き出し、ネックレスが煌めく。

「フォトンレーザー!」

 二人の男が今、衝突する。

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