ディス=パータ

ノベルバユーザー196004

第6話 明るい夜の灯り火

都市部の壮大な夜景を背後にして部屋へ向かった。


「明日はちゃんと寝過ごさなきゃなぁ」


期待を胸に高ぶっていた次の瞬間、大きな爆破音を施設内に響き渡る。


「なんだ?!この音は……ブリーチングチャージの爆破音か?音は施設を囲むように四方向から同時に衝撃が伝わってきた。まずいな、これは十中八九敵襲だろう、しかもこのやり方は正規軍の可能性が高い。敵が中に突入してくる。少佐達と合流しなければ」


爆破音が聞こえたあとすぐさま階段を駆け下りロビー階の少佐たちがいるであろうエリアに向かった。
ロビーをまたぎ向かいの通路へ渡ろうとしたその時、目の前を青い弾道が横切る。


「うっわあぶねぇ、蜂の巣にされるところだったな」


壁の角を背にしてカバー行動をとりロビー内の様子を見ると、既にロビー内に敵兵が散開していた。
威嚇射撃のせいで向かいの通路に渡れない。


「降伏して大人しく手を上げてゆっくり前に出てこい。そうすれば命は保証する」


敵から降伏勧告を言い渡される。


「敵は何人だ?……くそ……どうすればいい……」


「レオ・フレイムス!無事か?」


向かい通路から声が聞こえてきた。そちらを見ると少佐たちが向かいの通路から姿を現した。


「ここでは合流できない!地下まで行って武器庫に来てくれ!そこ合流しよう!」


そう言って少佐たちは戻っていき、言われた通り来た道を戻り階段を下っていく。すると、頑丈そうなドアのある部屋があり、その扉の前に少佐たちが待っていた。


「来たな、まずは中に入るぞ」


中に入り少佐が頑丈な扉を閉めロックするような音が聞こえると部屋の明かりが点灯する。そこには武器と弾薬の山があった。


「好きなものを持っていけ、ここからガレージに向かい装甲車に乗って裏口から脱出する」


ここにある武器は全て正規軍の使用する武器種ばかりが置いてある。共和国軍の使用しているカービンライフルAE-48はAE弾と呼ばれる特殊合金で量産された弾丸を扱う。貫通性能が極めて高くフェーズ・アーマーⅡのフルアーマーを容易く貫通する。コンバットヒートナイフとAEピストルを装備し、ガレージに向かった少佐の後を追う。


「しかしまさか本当に襲撃されるとは。子供たちが丁度いない時でよかったよ」


「襲撃されるって分かってたのか?」


「いや。だが君はあの作戦の最後の生き残りだ。君の情報が私に伝わるのを嫌がる連中もいるということだろう」


「俺の情報の価値はなかったんじゃなかったのか?!」


「表面上ではそうなっているというだけの話だ。あの作戦の実状を知っているのは君だけなのに情報の価値がないわけないだろ」


やっぱり価値があったんじゃないか……すると共和国は俺に接触することに対してかなり慎重だったというのが真理だろう。


「だとしても敵は何者だ?俺の情報を狙っているのか?」


「分からない、だが間違いなく殺しに掛かってることには違いないだろう」


そしてガレージに続くL字道を曲がると、ガレージは敵だらけだった。


「まずい!戻れ!」


少佐たちを発見した敵兵は躊躇なくL字通路に向けて銃撃する。


「大人しく出てこい!そうすれば命は保証する」


先ほど聞いた降伏勧告をまた言い渡してきた。


「これは出てったら間違いなく撃たれますね……」


ミーティア中尉が恐る恐るそう言うと、武器を構える。


「いや待て、さすがにこの道じゃ蜂の巣にされる。挟み込まれる前に別ルートで脱出しよう」


「いや、それは無理だ」


別の脱出方法を提案するが少佐に却下される。


「じゃあ他にいい案でもあるのか?」


「あぁ、私が先陣を切る。お前たちは後に続き私を援護しろ」


「そんな無茶な!死ぬぞ!」


そう言って止めようとするが彼女は聞く耳をもたずに生成したソレイスを片手に凄まじい速さで敵に突っ込んでいく。


「大丈夫ですよ、イニシエーターの力をご覧あれ」


ミーティア中尉は勝利を確信めいた笑顔で微笑む。


少佐は弾丸の嵐の中を駆け巡る。


弾丸は彼女に当たることなく弾道がそれていく、まるで少佐があらゆる障害を拒絶するように。


少佐はあっという間に次々と敵の間合いに入っては容赦なくその刀を振るい敵を切り裂いていく。


「イニシエーターだ!距離をとれー!!」


敵兵の隊長らしき人物が周りに指示を出す。少佐から距離をとり包囲しようとするが。


少佐はそれを許さなかった。


目に追えぬ速さで剣を回転させ、周りの敵を切り刻む。


そして気づけばあっという間にガレージ内の敵を制圧していた。


「す、すごい……これが覚醒者の力なのか……人の身で成せる技じゃない……」


決して人の身では到達することのできないその領域を、ただただ傍観することしか出来なかった。開いた口がふさがらないとはまさにこのことだ。そして、あの時みた光景は幻想ではなかったと、初めて確信をした瞬間だった。


「こんなのは大した事ない。それより、敵を見てみろ。これは共和国軍のフェーズ・アーマーだ」


「あぁ、青い弾道を見てから察しはついてたが、俺たちは共和国軍に狙われてるのか?」


「どうやらそのようですね。これは予定を早めることになりそうです少佐」


「あぁ、時間がない。そこの装甲車に乗って脱出する。ミーティア中尉運転を頼む」


「了解です」


そして三人とも軽装甲車に乗り込んだ。


「少佐!ガレージが認証しません!このままでは扉が開きません!」


「仕方ない、任せてくれ」


そう言うと少佐はガレージの開閉口に向かって手をかざす。すると扉に円状の穴が空いた


「覚醒者ってのはなんでもありかよ……」


その開いた穴を潜りガレージを出た瞬間、武器庫側から来た追っ手に装甲車を撃たれが難なく凌いだ。


「なんとか脱出したな……」


「ミーティア中尉、都市部の空港に向かってくれ。今からゼンベルと連絡を取り今すぐガンシップを動かせるようにする」




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「アウレンツ大佐!ご報告いたします!ガレージを制圧していたフィアット隊Cが全滅、裏口から軽装甲車に乗って逃走した模様」


「ほう、やはりこの程度では仕留められんか。さすがイニシエーターと言った所か、ではコードc発動。アストレア級ガンシップで追撃。市街地での兵装使用を許可する」


「了解、ガンシップを出撃させます」

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