ディス=パータ

ノベルバユーザー196004

第4話 決断とした日々

前書き
ストロフュースさんは中佐から少佐にしました。


追記 名前をレイシア・アルネートに変更
ミル中尉をミーティア・ミル・クォーラムに変更











俺が驚愕にうちひしがられる中、レイシア少佐はレイシスと呼ばれる存在について話した。


「君が衛生で会ったレイシスと言い残したその人物。おそらく我々が認知している存在と同一のものだろうと考えられる」


「じゃあ、あの魔法のような力は幻ではなかった……ということか?」


「そういうことになる、そしてそのような未知領域の存在を我々は仮称だが覚醒者と呼んでいる。それらは何らかのきっかけ、もしくは先天的に未知の力を操る者達だ」


「未知の力か……はぁ、笑えてくるなこりゃ……未だに信じられない……今までそういうやつらってのはたくさんいたのか?それとも実はそこらじゅうに……居るのか?」


「いや、一般的に覚醒者と呼ばれる存在は一億人に数人程度だ。それに覚醒者自体が自覚していない場合もあるし、そもそも存在自体を国が隠している。正確な事は我々も分からないのだ」


「そうか……だがこれは国が思っている以上に深刻なんじゃないか?現にあの作戦でレイシスとやらに俺たちは壊滅させられている。現代兵器が通じない敵が現れているんだぞ?国はなにもしないのか?」


この問に彼女たちは息詰まっていた、お互いに顔を見合わせながら確かめるように答えた。


「これを話す前に、あなたは選択をしなければならない」


「選択……だと?なんのだ?」


「今から話そうとしていることは国家の最高機密に関わることだ。君の覚悟をしりたい。今から話すことを聞けば、君はあの我が家に帰ることはできなくなるだろう。それでも知りたいか?」


その唐突な覚悟の問いに俺は迷っていた。
我が家に帰ることはない。彼女達は俺を都合のいい傭兵にしようとしているのか、はたまた口封じか。そんなことを考えすぎながらも、好奇心が叫んでいた。そしてまた奴と出会いと思っていたのだ。
金に有り余る生活は俺には合わなかった、所詮傭兵というものは泥沼な戦場に己の存在価値を見出したがる生き物なんだ。俺に戦いのない日常などそれこそが非日常なのだ。
金などいらん、家もいらん。
ただ俺が戦うことのできる場所を与えて欲しい。ただそんな心にもないようなことを思ってしまう。
俺は何がしたいのか、これからどうしたいのか。体は刺激を求めている。
未知の世界に踏み込み、俺はその世界を見てみたい。


「俺がその機密を知るのに必要な条件はなんだ?」


「君には私の私設部隊の一員になってもらう。そして君の全てを私に捧げるのだ」


彼女は狡猾にそう言い放った。まるで確信を得たかのように。


「ほう、随分大きくでたな。それに私設部隊って……」


「もちろん軍とは別個の独立した私の為の部隊だ。悪い話ではなかろう?我が部隊に入れば毎日3色食えるし、寝床もある。崩れ切った生活リズムを正すことができるぞ。あと毎朝ミル中尉が起こしてくれる。なんなら私が起こしに行ってあげてもいい」


なんとも魅力的なお誘いだ。こんな話に乗らない手はない!


「いや、しかし……」


「不満か?」


いや、不満ではないが現状その話に乗ることのメリットと言えば機密を聞けることの他に毎朝起こしてくれる以外のメリットがなさすぎる……むしろデメリットの方が多いまである。


「その話、俺の旨みが薄過ぎじゃないですかね……」


「問題ない。どうせろくな生活をしていないんだろう?なに深く考えることもあるまい。新たな新生活をスタートさせると思えばこのくらいは序の口だ。どうせなら充実した傭兵ライフを送りたいだろう?孤独な生活はやめて、我らと共に歩もうじゃないか」


そういって少佐は今までの冷酷な表情からは想像のつかないような笑顔で手を差し伸べた。となりのミル中尉もさぁと言わんばかりに見つめてきた。


(今更だが、とびっきりの美人女性二人で部隊勧誘って卑怯すぎやしないか。これを狙ってやっているんだとしたら質が悪すぎる)


俺の今までの人生でこんな気分なった瞬間は一度もなかった。
常に一匹狼で、組織に誘われることもあったが関心はなかった。家族の顔もろくに覚えていない。仲間など要らないと思っていた。だが今は、彼女たちに期待しているのだ。
俺の心の隙間をひょっとしたら埋めてくれるんじゃないかと。俺のこの空っぽな心に何かをもたらしてくれんじゃないかと。俺の行きどころない期待を胸に遂に決断した。


「あぁ、こんな俺でいいのなら喜んで少佐に尽くそう」


そう言って、彼女の手を取った。


「交渉成立だ。今日はもう遅い、まずは休むといい。詳しい話は明日でも遅くはなかろう。ミル中尉、寝床に案内してやれ」


「了解です少佐」


レイシア少佐は俺の手を離し振り返って歩き出した。
そして……


「あぁそうだ、君の資産は喜んでうちの部隊の資金として活用させてもらうよ」


一回立ち止まった彼女はそう言ってまた振り返って歩き出した。見たことのないような笑顔で。


「もしかして、俺って金目当てか……?」


「そ、そんなことないですよ!あなたの実績や経歴をちゃんと考査して我が部隊に迎え入れたんです!お金目当てなんてとんでもない!!」


ミーティア中尉は必死の形相でそう答える。
しかしそうであっても別に構わないと思った。なぜならこれから毎朝彼女たちに起こしてもらえるのだから、これ以上の幸福はない。というかさっきからそのことしか頭にない。


そしてミーティア中尉に部屋を案内されるとそこは思っていたよりも快適な空間だった。ベッドがダブルベッドであり、小さめの個人用冷蔵庫にホログラムTVまである。


「まるでそこら辺のホテルの一室だな」


「気に入っていただけたようでなによりです。明日はわが部隊の活動内容やらなんやらの説明がありますのでそのつもりでお願いします。では失礼しますね」


「そうか分かった。ではまた明日だ」


「はい、お休みなさいレオさん」


「あぁ、お休み……」


彼女はさっさと部屋を出て行ってしまった。


まぁいい。聞きたいことはまだあったが、今日はいろいろあり流石に疲れていた。早めに寝て明日に備えるとしよう。



俺は時々思うのだ。この残酷な世界に平穏があらんことを。





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「各隊通達。マーカーが予定通り幼児施設の建物に入るの確認した、作戦をレベル2にシフトする」


「了解。フィアットA、フィアットB、フィアットC、各部隊作戦行動を開始……」











          

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