ディス=パータ

ノベルバユーザー196004

第2話 亡羊の嘆

あれから3ヶ月が経っただろうか。


あれは地獄だ。


屈辱だ。


なんであんなものがいるんだ。


それより、なにより……無力な自分に腹が立つ。


気づけばもう夕方だ。起きたのは1時間くらい前、生活リズムが乱れきっていた。起き上がるとすぐさま冷蔵庫から冷えきってない偽装アルコール飲料を手に取った。
(そういえば、俺は最近なにもしてないな……)


俺の傭兵家業で最後の任務だった。
「衛星光学兵器撃墜作戦」
あの作戦で生き残ったのは俺だけだ。他の傭兵はみんな死んだ。俺たちは反撃する暇もなく、無慈悲かつ理不尽に殺されていった。ただの1人も生き残らずに俺だけが、ただただ生き残った。
今となっては何故生き残れたのかは分からない。
確かなのは、俺はあの後プログラムを始動させ仲間の傭兵達と共にアイツに立ち向かったという事だけだ。そして、奴は言っていた。
「レイ……」


トントントントン。


俺がその言葉を思い出さそうとしていたその時、玄関ドアが叩かれた。
(最近はそんなに出かけてなかったし、心当たりないな……)


「はーい、どちらさま?」
抜けた声で応答した。


「我々は共和国参謀本部より参った。例の任務の報告内容について確認したいことがあるのだ。開けてもらえないか」


(共和国参謀本部だと?わざわざそんな所からこんな辺境の家までやってきたのか、ご苦労な奴らだ。まぁ言うほど辺境でもないが)


ドアを開けるとそこには2人の女性が居た。1人はショートヘアで茶色の髪をしている。顔立ちは非常に端整で、眉毛は薄い。


「かなり好みだ……」


「えっ?」


「あっ……」


あまりの可愛いさに思わずについうっかり口に出てしまったが、気を取り直してもう1人の方の女性に目を向ける。


「えーと……もう1人の方は、たしかレイシア少佐。でしたっけ……」


「そうだ。ここで立ち話もあれだから中に上がらせてもらえないか?」


「えっ、あ。ちょっーとまっててください……今少し片付けますから!」


そう言残すとすぐ様、缶類の飲みかけや如何わしい本をまとめて袋に突っ飲み奥の部屋に隠した。


「かなり時間がかかったようだけど、なにか見つかったらマズいものでもあったのかね?」


「えー、あー、いやそんなことはないですけど……人が家に上がるのは久しぶりなものでして……とても人に見せられないほどゴチャゴチャしていただけです……ほんとうにそれだけです……」


「どうやら我々が思っていたより元気そうですね。あなたが最後に帰還した時、絶句した様子で会話も出来ませんでした。期間が開けばそのうち口を開くだろうと思っていましたが、もっと早くに来れば良かったですかね少佐」


「そうだな、こんなにも状態復帰が早かったのならこんなに期間を開ける必要もなかったか」


なるほど、不思議に思っていたが彼女等は俺の状態が精神的にまいっていたのを知っていたから接触してこなかったのか。


「しかし様子を見るにしてもさすがに3ヶ月も期間をあけるのはやりすぎだったのでは?俺の記憶が無くなっていたらどうするつもりだったんですか」


「別に問題はない。君の情報の必要性は本部で低いと判断されている。我々がここに来たのもただの挨拶みたいなものだから安心してくれ」


「ただの挨拶ですか。これでも最後の生き残りのはずなんですけど……じゃああなた方は何を聞きに来たんですか?」


「逆よ」


逆……?つまり彼女等は質問されに来たのか?


「逆……っていうのは、俺があなた達に質問をする。ってことですか?」


するとレイシア少佐は意外な顔をして答えた。


「あなたはあの作戦の事について何も思わないのかしら?聞きたいことが星のようにあるんじゃない?」


そうだ。思い出した。


忘れていた憎しみと怒り。


屈辱と絶望を。


「そうだ……そうだった……あなた方に聞きたいことがいくつもあるんだ」


少々を声を荒げたが、彼女等は特に驚く様子もなかった。それどころか、それを待ちわびていたかのようだ。


「あの施設には警備兵どころか、職員は全員非戦闘員だった。あんたはこれを知っていたのか?知っていてあの命令をしたのか?」


そしてまた沈黙が生まれた。
しばらくすると彼女は答えた。


「知らなかった」


彼女は怪訝な顔をしながら言い返した。
そして彼女は言葉を続けた。


「前情報では施設付近に武装した所属不明の部隊を確認していた。その部隊はどこにもリストのない未確認部隊で、我々は最大限の警戒をしていた。でも部隊は作戦決行日に現れなかった。居たのは報告通り非戦闘員だけだった」


彼女はそう言ったが、彼女の言葉からはあの存在についての事はでてこなかった。あれは幻なんかじゃないはずだ。


「非戦闘員だけじゃなかったんだ」


「ほう?」


「あそこには悪魔がいた。漆黒のローブに身を包んだ大鎌を持った悪魔だ。あれは人ではなかった。あれに他の傭兵はみんな殺されたんだ」


何度も何度もフラッシュバックするあの光景はやはり信じられなかった。こんな話を信じてはくれないだろうと思いつつもすべてを話した。


「アイツは言った……最後に俺を殺さずに言い残していった……レイシスと…………」

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