死刑

西田夏樹

8章 ② 急転

その日、松岡はコンビニへ出かけていた。睡眠時間までずらしているのだから、無論外出ともなればどちらかが待機しておくのが常だった。勿論、外界との接触を避ける為、それも極力少なくしていたのだが。



しかし彼が家に帰った時、そこに佐久間の姿は無かった。コンピュータは愚か、二人が共に家から出るなど考えられないことであり、松岡はすぐに事の重さを察した。

警察には到底相談出来なかった。最後に目撃した場所は家。現場検証だとかでここを捜索されれば、無論コンピュータの存在を把握され、確実に目をつけられる事となる。最悪の場合ではそのままこの半年間の苦しみと努力が全て掻き消されてしまう事になりかねない。彼はパソコンのブルーライトが照らすその部屋で、途方に暮れていた。




翌日から松岡は、佐久間から培った技術でネットを隈無く捜索し、攫える限りの情報を入手しようとしていた。身元不明者の情報、行方不明者の情報、そして自殺者・身元不明遺体の情報だ。奇しくもこの時ばかりは政府のデータを参考にせねばならず、彼は少し違和感を感じた。

そして情報捜索を始めた二日後、ネットニュースに速報が入った。少し遠くの川原で変死体が見つかったという事だ。コンピュータを放置しておく訳にはいかないため、ネットで出来る限りの情報を得る事にした。

すると、恐らく中高生であろう少年がインターネット上に死体の動画を生放送で公開していた。普段はこんなものを見る者の事はまるで信じ難く、理解に苦しんでいた所であったが、こういう時にはかなり信頼出来るものであった。だが、死体はうつ伏せで浮かんでおり、その後は警察の捜査で生放送がシャットアウトされ、即刻削除されたため、それ以上の情報を得ることは出来なかった。



そして、次の日のニュースで遺体の身元が分かった。やはり危惧していた通り、遺体の正体は佐久間。あの佐久間であった。

その時、松岡はもう既に犯人の足取りを掴んでいた。だが警察と繋がることは出来ない。彼は、佐久間の復讐も政府へのハッキングも全て自分の力で成し遂げると心に誓った。








そして、その時は来た。
シフトカードは残り二枚。計算上、一枚も無駄にする事は出来ない。
俺は今、この計画を成功させなければならない。



そう思い、彼は都会へと続く川を渡った。

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