死刑

西田夏樹

7章 ② 経緯

また一人の男が命を落とした。
このような光景を見ることに慣れてしまっている自分に恐怖を感じる。



「で、アイツは何の犯罪を犯したんだろうな。」
「あの物音が関係あるんでしょうか?」
「物音?」
「あの何かが壊されるような・・・。」
「ああ、お前が女子みたいに怖がってたやつか。」
「だから女子ですって・・・。」

やはり何となく、この人とはイマイチ波長が合わないような気がする。

「ま、とりあえずアイツが来た方を見に行ってみるか。」



汗ばんでいた体が寒さで冷え、急に体が震える。
寒い。そんな事まで我慢するしか無いこの状況をまた恨めしく思う。そんなくだらない事を考えていると、先に歩いていた瀧川が前で間抜けな声を上げた。
「なんだこれ。」
「これ・・・少し古い機械の配管が潰されていますね。」
「器物破損ってやつか。」
「シフトカードを使えば、これだけで人を殺す事が出来るんですね・・・。」
「しかも自分の手で殺らねえってのがまた汚いよな。」



ますます松岡の考えていることが分からなくなってきた。何故私にこのカードを渡したのか。何故急に消えたのか。そして何故人を殺すのか。
人の考えが全く分からないことがここまで気分の悪いものなのかと思い、初めて感じるもどかしさに苛立ちを感じる。工場の錆びれた窓から吹き抜ける風が少し生暖かい。

「お前、あの男のこと知ってるみたいだったな。」
「いや・・・。」
「嘘はつかせないぞ。今ここでお前が嘘をつくと信用問題に関わる。本当の事を言え。」
「いやその、あの人とはそこまで関わったことないんです。仕事の関係で少し接点があったくらいで。私、結構人の顔とか覚えちゃう方で、それで覚えてたみたいで・・・。」
「でも名前も言ってただろ。松岡・・・だったか?」
「いや、それも同じで記憶に残ってたみたいです。」
「そうか・・・。そんな奴もいるんだな。」

理解があって助かった。とはいえ、私は嘘はついていない。ただ直感で、今自分の知っていることを全て話してしまうのは危険だと感じた。
まだこの状況で、赤の他人を信用するには早すぎる。そう思った。



「実は俺も、あの男・・・松岡を知っている。」
「え?」
「というか・・・。」





「俺はシフトカードをあの男から手に入れた。」

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