死刑

西田夏樹

7章 ① 物音

「えっ・・・」
私たちはとっさに間抜けな声を上げてしまった。

「おい、ハッキングって誰にだよ?まさか政府だとか言うんじゃないだろうな?」
瀧川が池川に必死に問いただす。というか何故よりによって男二人の名字のどちらにも川が付いてるんだ。ややこしくて仕方がない。

「・・・。」
「いやなんで無視するんだよ。」
「名前を言っただけでこんなにも教えてやったんだ。むしろ感謝してほしいぐらいだが?」
「いやこんなにもって・・・そんな大したこと言ってねえだろ。」
「携帯がハッキングされてるんだぞ?それも政府に。それが“大したこと無い”ってお前、マンガの読みすぎか?」
「いや、お前政府って言っちゃってるぞ。」

偉そうな割に口が軽い。この分かりやすい性格を利用すればもう少し何か聞き出せるかもしれない。

「まあコイツの話を信用するかは置いといて、とりあえず携帯持ってんのは危険だとは俺も思う。恵子、どうする?」
急に下の名前で呼ばれたのでビックリした。まあ、悪い人では無いのだろうが。
「あ、あぁ・・・はい。私はとりあえず得られるだけの情報は調べて置きたいと思います。無くなっちゃうと調べ物も出来なくなるので・・・。」
「じゃあその後は?」
「別に壊してもいいんじゃないかなって思います。」
「そうだな。そうしよう。」

「待て待て待てお前達ッッ!」
池川は何故かフィギュアスケート選手のようにクルッと一回転した。無論、そのような美しいものでは無いのだが。
「何故私に意見を求めない!!」
「いや聞いても答えねえだろ。」
「・・・その通りだ。」
何故池川が話に割り込んで来たかは全く持って不明だ。

「じゃ、じゃあとりあえず何について調べます?」
「おいお前、何か情報知らないのか?」
「・・・。」
「なんでこんな時は黙るんだよ・・・。」
「とりあえず、この国の最高峰の機械について調べません?AIとか、スーパーコンピュータとか。」
「何でだ?」
「あんなロボット・・・ガーディアンでしたっけ?を動かすことが出来るのなんてそれぐらいだと思うんですよね。」
「なるほど。」



私たちが調べた結果、この国のAI産業最大手の企業は「dagy」という会社で、最も優れているAIの名前は「zeus」というらしい。そして、政府が管理する最大級のスーパーコンピュータの名前は「載」。他にも調べたが、あのロボットたちに関係していそうなのは予想通りこの二つだけであった。

「なんだよゼウスって・・・完全に厨二病じゃねえか。」
「それは別にいいじゃないですか。ていうか、殺戮用ロボットに“ガーディアン”とか名付けておきながらよく馬鹿に出来ますね。」
「いやガーディアンは別にいいだろ。」
「そうですかねぇ。」
「・・・それで、載ってなんなんだよ。こっちはセンスの欠片もねえじゃねえか。」
「なんか、載って単位?らしいですよ。億とか兆みたいな。」
「1兆の何倍なんだ?」
「1“こう”倍らしいですね。」
「いや“こう”も知らねえよ。どんな漢字なんだ?」
みぞって書くらしいです。」
「どういう理論で溝なんだよ・・・。」

と、その時、工場の奥で何かが壊されるような音がした。
「キャーー」
とっさに女の子らしい叫び声を上げてしまった。恥ずかしい。
「いや女子かよ。」
「一応女子です!!・・・でもさっきの音、なんなんでしょう?」
「まあこんな状況なんだから変な音ぐらい鳴るだろ。」
「いや何を根拠に?」
「それは・・・あぁ、分かんねえな。」
「頼りないですね。」
「そんな事ねえよ!」

「お前ら、ラブラブだな。」
池川が今度はニヤけながらこちらを向いている。かなり気持ち悪い。というか池川の存在を軽く忘れていた。



と、その時、突然男が工場の奥から走ってきた。その男は池川の背後に立つと、あの例のカードを背中に貼り、走り去っていった。いや、というかあの男は・・・。
「松岡・・・さん?」

その瞬間、またあの鉄の足音が近付いてきた。ガーディアンだ。だがここにはこの3人しかいない。そしてその中で彼だけがシフトカードを持っていない。
「おい、おいおいおい待ってくれ!!このカードは・・・このカードは私が!!」
その後に何を言おうとしたのかは分からない。だが、彼はもう逃げようともせず、まるで死を受け入れているかのように寝転び、その時を待った。
「ハハハッ・・・これが私の最後になるのか・・・皮肉なものだな・・・」
そう言った時、ガーディアンの腕に取り付けられた刃物が池川の首を弾き飛ばした。そしてまたこれまでのように、四肢を切断し、内臓を引きずり出すと、またガーディアンは何事も無かったかのように去っていった。



「結局なんで名字聞いたんだろうな・・・。」
「さぁ・・・?ていうか、最後に言った一番まともな言葉、『お前ら、ラブラブだな。』でしたね。」
「まともか?それ。」
「さぁ・・・。」

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