死刑

西田夏樹

プロローグ 狂騒

サイレンが鳴り響く。

消防車、救急車、パトカー、いや、そうでないのかもしれない。

いや、そんな緊急車両が何も起きていないにも関わらず騒音を上げて走るわけがないとすぐに思い直す。

もう何が何の音なのか分からない。

しかし、まるで狭いライブ会場の中で音が駆け巡るように、その叫びにも聞こえる音は鳴り響く。

それは何かを助けるために鳴り響いている音ではない。

否、誰もが“自分を助ける”ために鳴らしているのだ。



瞬間、静寂が辺りを包み込む。

先程までの騒音は突如、嘘のように消えた。

否、元からそんな物無かったのかもしれない。

先程までの音は自分の頭の中だけで流れていたのか。ならそれは自分の心の叫びなのか。それとも…



やっと意識がハッキリした。

すると突然人の叫び声が聞こえてくる。

叫び、悶え、悲鳴。

おそらく先程までもこの不快な声は鳴り響いていたのだろう。

そう、自分にも今何が起こっているのかは分からない。



だが、ただ1つ分かることはある。





それは、この世界が終末に近付きつつある事だ。





しかし、事の始まりは普通の日常だったと記憶している。










今日は普通の春の日、そう、何の変哲もない、だが少し春にしてはいやに寒い日だ。

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