ダンジョンを現役冒険者パーティーで経営、そして冒険者から金品+命を奪うのはアリですか?
第12話 自己紹介
「琥珀君、まだかな~?」
琥珀の泊っている宿屋の入り口から宿屋の一番奥にあるカウンターまでそう叫ぶヨミス。宿屋の一階、この階では今朝食を摂りに来た冒険者が大勢おり、現在琥珀はヨミスのお蔭で注目を浴びてしまっている。注目を大勢から浴びることは全くと言って良いほど慣れていない。十代になる前から暗殺者として世界の裏側に潜んで暮らしていた琥珀にとって注目とは今までやってきた事の反対なのだ。いつもは誰からもあまり認識のされないような一般的な行動をとり、ユニークな恰好やキャラの濃い人や見振りにもひたすら避けてきた...。と、そろそろ行かないとまたヨミスが叫びだしそうだ。
「じゃあ、あまり早くは帰ってこないのね?」
「いや、多分明日か明後日には帰ってくる。護衛に行くだけだ。一日か二日ですぐに帰ってくる」
「あら、そうなの? なら貴方が居ない間だけ他の客に貸そうと思っていたけどそれは出来なさそうね。ちゃんと生きて帰ってくるのよ?」
「ああ、必ず。ではもう行ってくる」
琥珀は受付台にいる女将に部屋の鍵を渡した。
「琥珀君~。まだかい!?」
再び、ヨミスが宿屋の入り口から大きく叫ぶ。
「ああ。すぐ行く」
本当に叫ぶのやめてほしい。
「ところで俺をここへ運んで来たのは誰だ?」
「えっと...。確か今、入り口で君の名を叫んでいる男が急いで貴方を背負って来ていたわよ?」
「へ~。ヨミスがね...」
「ん? どうしたんだい? まあ、お礼を言っておきなさいよ!」
「ああ。では、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい。絶対帰ってくるんだよ!」
そうして琥珀は宿屋の女将に見送られ、この町を出た。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「では自己紹介をしようか」
現在、エルドを出発してから1時間。ベルムヘイドの首都まで残り3時間程。馬車の上には先ほどの暗殺者たち4人とヨミス。一人の暗殺者は馬を引いており、馬車の中で琥珀は3人の暗殺者たちに常に殺気を送られている。
「ヨミスさん、このような者に我々の情報を教えては―――」
「心配しなくても琥珀君はこれから僕らの大事な仲間になるんだから自己紹介はちゃんとしておいた方が良いと思ってね」
「強制的にだがな」
「脅したみたいで悪かった。でも君を助けたのも僕だよ? まあ、現に君の仲間をあの時助けられなかったから今からわざわざベルムヘイド王国まで行かないといけないんだけどね」
「ちっ...」
それでも3人からの殺気は止まない。
「3人もそうピリピリせずに...。そうだ、アレックス、自己紹介を!」
「アレックスだ」
「いや、名前だけじゃなくてどんな人かとか」
「...。家族の事は言えない。他の事でもいいのなら...」
ヨミスは頷いた。
「俺は能力向上系の魔法と防御魔法が得意だ。ちなみに使う武器は杖、この通り魔法系アサシンだ」
「次は私が。私はクレア。得意なものというより私には短剣の技が50種類以上あるのが自慢かな? じゃあ、次はヘイドね」
「俺は防御魔法が得意だ。俺はいざという時はヨミスさんだけを防御し、他の者には防御魔法を使わない」
「で、最後は...ゼイドだが...。暗殺方法が特殊でどのような武器を使っているかも解らない。そして彼は喋るのが得意じゃなくてね。だから彼にはいつも馬車引きを任せてしまっている」
「暗殺方法が特殊というのは? マントから武器が見えなくても戦闘時には必ず武器を出すだろ?」
「えっとだな...。ゼイドは僕にもまだ一回もマントの中身を見せてくれたことが無いんだ。そして彼の武器は少なくともあのマントから出さずともあまり体を動かさずに敵を射撃することが出来る。僕たちが知っていることはこれだけだよ」
「射撃範囲は?」
「判らないけど大体500kmくらい離れたところから相手の頭部の中心を狙撃したのが僕の今まで見た中での一番の射程距離かな。彼はターゲットの近くではなく、遠く離れた場所から射撃することができ、その依頼成功率はほぼ100%と言われていたくらいなんだよ」
「それほどの狙撃者を何故、お前が?」
「いや~、それがね。運よく彼の命を助けてね。命の恩人に対する礼として僕との長期契約を申し込んでくれたんだ」
ヨミスは嬉しそうに言った。今思えば、彼のような狙撃手が仲間にいるのならば今回の暗殺計画、彼以外の5人で彼に魔力を送り、彼が超遠距離から屋敷内全員を狙い撃てば確実に暗殺は出来ると思うのだが...。何か武器を使うデメリットでもあるのだろうか? 複数の暗殺者で依頼を実行することは多々あったが、各依頼ごとに適任の暗殺者に他の暗殺者たちが自身の魔力を全てその一人に与えるということは普通にあり得る。
つまりそれをしない理由は3つ。一つ目は琥珀をまだ信じていない為、全員が魔力を彼に託した後、すぐに琥珀が裏切り自分達が襲われることを恐れている。二つ目は彼の使う武器と魔法の消費魔力が激しい為、全員分の魔力をかき集めたとしても足りない。三つ目、その他琥珀がまだ知らない彼の弱点によるもの。
一つ目は可能性が低い。琥珀がヨミスに強力しない=仲間を助けられない。それはヨミスも理解しているはずだ。つまり暗殺が完全に終わるまでは琥珀が彼らを裏切ることは出来ないのだ。
で、二つ目の可能性は高い。というよりこれが理由と考えてほぼ100パーセント間違いはないだろう。これほどしっくりくる理由は無い。
「まあつまりお前は彼を助け、命の恩人だからと言い張り彼を無理やり契約させたと..。酷い話だな」
「いや、琥珀君? 誤解だからね? 僕がそんなことをする人に見えるかい?」
「そう見えるよ?」と、ツッコミを入れそうになった琥珀だが、ヨミスが反論し、それにまた返答するのが面倒だった琥珀はツッコミを入れるのを辞めた。まあ、何を言っても彼と組まなければいけないことは確実だ。とにかく琥珀は我慢し、彼らと組むことを承諾したのだった。
琥珀の泊っている宿屋の入り口から宿屋の一番奥にあるカウンターまでそう叫ぶヨミス。宿屋の一階、この階では今朝食を摂りに来た冒険者が大勢おり、現在琥珀はヨミスのお蔭で注目を浴びてしまっている。注目を大勢から浴びることは全くと言って良いほど慣れていない。十代になる前から暗殺者として世界の裏側に潜んで暮らしていた琥珀にとって注目とは今までやってきた事の反対なのだ。いつもは誰からもあまり認識のされないような一般的な行動をとり、ユニークな恰好やキャラの濃い人や見振りにもひたすら避けてきた...。と、そろそろ行かないとまたヨミスが叫びだしそうだ。
「じゃあ、あまり早くは帰ってこないのね?」
「いや、多分明日か明後日には帰ってくる。護衛に行くだけだ。一日か二日ですぐに帰ってくる」
「あら、そうなの? なら貴方が居ない間だけ他の客に貸そうと思っていたけどそれは出来なさそうね。ちゃんと生きて帰ってくるのよ?」
「ああ、必ず。ではもう行ってくる」
琥珀は受付台にいる女将に部屋の鍵を渡した。
「琥珀君~。まだかい!?」
再び、ヨミスが宿屋の入り口から大きく叫ぶ。
「ああ。すぐ行く」
本当に叫ぶのやめてほしい。
「ところで俺をここへ運んで来たのは誰だ?」
「えっと...。確か今、入り口で君の名を叫んでいる男が急いで貴方を背負って来ていたわよ?」
「へ~。ヨミスがね...」
「ん? どうしたんだい? まあ、お礼を言っておきなさいよ!」
「ああ。では、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい。絶対帰ってくるんだよ!」
そうして琥珀は宿屋の女将に見送られ、この町を出た。
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「では自己紹介をしようか」
現在、エルドを出発してから1時間。ベルムヘイドの首都まで残り3時間程。馬車の上には先ほどの暗殺者たち4人とヨミス。一人の暗殺者は馬を引いており、馬車の中で琥珀は3人の暗殺者たちに常に殺気を送られている。
「ヨミスさん、このような者に我々の情報を教えては―――」
「心配しなくても琥珀君はこれから僕らの大事な仲間になるんだから自己紹介はちゃんとしておいた方が良いと思ってね」
「強制的にだがな」
「脅したみたいで悪かった。でも君を助けたのも僕だよ? まあ、現に君の仲間をあの時助けられなかったから今からわざわざベルムヘイド王国まで行かないといけないんだけどね」
「ちっ...」
それでも3人からの殺気は止まない。
「3人もそうピリピリせずに...。そうだ、アレックス、自己紹介を!」
「アレックスだ」
「いや、名前だけじゃなくてどんな人かとか」
「...。家族の事は言えない。他の事でもいいのなら...」
ヨミスは頷いた。
「俺は能力向上系の魔法と防御魔法が得意だ。ちなみに使う武器は杖、この通り魔法系アサシンだ」
「次は私が。私はクレア。得意なものというより私には短剣の技が50種類以上あるのが自慢かな? じゃあ、次はヘイドね」
「俺は防御魔法が得意だ。俺はいざという時はヨミスさんだけを防御し、他の者には防御魔法を使わない」
「で、最後は...ゼイドだが...。暗殺方法が特殊でどのような武器を使っているかも解らない。そして彼は喋るのが得意じゃなくてね。だから彼にはいつも馬車引きを任せてしまっている」
「暗殺方法が特殊というのは? マントから武器が見えなくても戦闘時には必ず武器を出すだろ?」
「えっとだな...。ゼイドは僕にもまだ一回もマントの中身を見せてくれたことが無いんだ。そして彼の武器は少なくともあのマントから出さずともあまり体を動かさずに敵を射撃することが出来る。僕たちが知っていることはこれだけだよ」
「射撃範囲は?」
「判らないけど大体500kmくらい離れたところから相手の頭部の中心を狙撃したのが僕の今まで見た中での一番の射程距離かな。彼はターゲットの近くではなく、遠く離れた場所から射撃することができ、その依頼成功率はほぼ100%と言われていたくらいなんだよ」
「それほどの狙撃者を何故、お前が?」
「いや~、それがね。運よく彼の命を助けてね。命の恩人に対する礼として僕との長期契約を申し込んでくれたんだ」
ヨミスは嬉しそうに言った。今思えば、彼のような狙撃手が仲間にいるのならば今回の暗殺計画、彼以外の5人で彼に魔力を送り、彼が超遠距離から屋敷内全員を狙い撃てば確実に暗殺は出来ると思うのだが...。何か武器を使うデメリットでもあるのだろうか? 複数の暗殺者で依頼を実行することは多々あったが、各依頼ごとに適任の暗殺者に他の暗殺者たちが自身の魔力を全てその一人に与えるということは普通にあり得る。
つまりそれをしない理由は3つ。一つ目は琥珀をまだ信じていない為、全員が魔力を彼に託した後、すぐに琥珀が裏切り自分達が襲われることを恐れている。二つ目は彼の使う武器と魔法の消費魔力が激しい為、全員分の魔力をかき集めたとしても足りない。三つ目、その他琥珀がまだ知らない彼の弱点によるもの。
一つ目は可能性が低い。琥珀がヨミスに強力しない=仲間を助けられない。それはヨミスも理解しているはずだ。つまり暗殺が完全に終わるまでは琥珀が彼らを裏切ることは出来ないのだ。
で、二つ目の可能性は高い。というよりこれが理由と考えてほぼ100パーセント間違いはないだろう。これほどしっくりくる理由は無い。
「まあつまりお前は彼を助け、命の恩人だからと言い張り彼を無理やり契約させたと..。酷い話だな」
「いや、琥珀君? 誤解だからね? 僕がそんなことをする人に見えるかい?」
「そう見えるよ?」と、ツッコミを入れそうになった琥珀だが、ヨミスが反論し、それにまた返答するのが面倒だった琥珀はツッコミを入れるのを辞めた。まあ、何を言っても彼と組まなければいけないことは確実だ。とにかく琥珀は我慢し、彼らと組むことを承諾したのだった。
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