ダンジョンを現役冒険者パーティーで経営、そして冒険者から金品+命を奪うのはアリですか?
第10話 クリアと条件
 一刀両断。ダンジョンボスは琥珀により上半身と下半身を真っ二つに切り裂かれ、消滅していった。
「琥珀! 凄いじゃない、貴方! 今のどうやってやったの!?」
「今の…?」
「凄いな。まさかあの巨体の腹を切り裂くとは…。琥珀、本当に駆け出し冒険者なのか?」
(どう言ったものか…。「実は前、暗殺者してました~」というのも違和感あるし…)
 そもそも冒険者は暗殺者を嫌っている。何故ならランクの高い冒険者たちの三分の一は暗殺者に狙われ殺されているからだ。
 次に何を言うべきか悩んでいると不意に脳内が真っ白になり思考が停止した。
 まただ。昨日から時々、脳内にある文章が流れ込んでくる。
『鍛えし者よ、クリア報酬は管理の権利』
 と。何の事だかさっぱり解らない。だがこの文が現れ始めたのはダンジョンボスを倒した日の夜からだ。つまりこの文はダンジョンと関係している可能性が高い。もしくは何者かに魔法を使われ、直接琥珀の頭の中に語り掛けているかだ。
 もしこの文が本当にダンジョンからのメッセージだと仮定したとするとダンジョンは琥珀に再び何かダンジョンボス以外を倒す、もしくはダンジョン内の何かしらの条件をクリアしなければならないということになる。だがダンジョンボス以外のもので挑戦するべきものとはダンジョンの中間点に存在する中ボスと言われている存在だ。ダンジョンの受付人によるとこのダンジョンではその中ボスに5ヶ月前50人が挑み、生き残って帰ってきた者はたったの30人だったらしい。ちなみにその中ボスの名前はベヒモス。ベヒモスは鼠では無く、陸上ドラゴンといった外見らしい。
「どうしたのよ、そんな暗い顔して?」
 エレガが琥珀に声をかける。
「いや、何でもない」
「もしかして、本当は駆け出し冒険者じゃなくて有名な冒険者だったりして…」
 エレガは疑いと期待の目でこちらを見つめる。大丈夫だ、エレガ。それは無い。冒険者やダンジョン、そして肝心な魔物についてこれほどまでに無知な男が有名な冒険者なはずがない。
「やっぱりそうだったのね! 有名な冒険者だったのならそう言えばいいのに! 確かに最初はボロボロなマントと防具を装着していなかったから救済としてパーティーに誘ったけど――――」
「いや、有名な冒険者ではない。町に帰ったら教える」
「分かったわ…? では町に帰ってからね」
 エレガとエルクは不思議そうにしていたが、先ほどダンジョンボスから逃げ出していたまだ回復途中の二つのパーティーがいることを思い出し、回復に向かった。そして琥珀は可能性が低いものの、ダンジョンボスが再び復活しないかを確認するためダンジョンボスの消滅した所へ向かった。
「え? 貴方、回復魔法使えないの?」
「何だ? 知らなかったのか? 今までに俺が回復魔法を使った事など一回も無かっただろ?」
「言われてみればそうね。って、回復魔法を使えなかったらこのパーティーに入る前、どうやってダンジョンに潜ってたのよ!?」
「まあ、俺はこう見えても若い頃は『絶対防御壁』なんて言われていたのだぞ?」
「は? 絶対防御壁? バコバコ攻撃入れられて傷をよく負うエルクが?」
「むっ…。それは…。若い時は今よりずっと動きが鋭く筋肉も倍以上だったからな」
「今の倍以上? うっ、気持ち悪…。一体何目指してたのよ」
「まあそれはともかく、あまり傷を負うことは無かったから回復魔法なんぞ覚える必要が無かったんだよ。だがそれから老いていき、体も動かなくなってからは護衛役やダンジョンの浅い場所ばかり潜っていたからな。結局、このパーティーに入ってもなお未だに覚えていない」
「へ~」
「おい! 今、絶対に聞いて無かっただろ! ちゃんと聞け、エレガ!」
 と、まあ向こうではエレガが回復魔法を使っており、エルクは使えないため側でエレガと騒がしく話しているようだ。回復魔法はほぼ全ての冒険者が最初に学ぶ魔法…らしい。しかし回復魔法を覚えていないというのはとても稀なことだ。回復魔法が必要無かったのであれば当時のエルクは本当に防御力が高かったのだろう。まあ、琥珀が回復魔法を覚えられないのは魔力がそもそも体内に備わっていないためなのだが。
 そして琥珀はダンジョンボスの消滅した場所まで行くと、穴へ入った。穴とはダンジョンボスが派手に地面へ衝突したことにより出来た穴であり、その穴は深さ5、6メートル程だ。少し歩いていると何やら紫色の球体が一つ。そして透明な球体が一つ。ダンジョンボスを倒した事による報酬なのだろうか。手に取ってみるが、何も起こらない。脳内にも何か浮かんでくる文字も文も無い。
 って…あ…。体の力が急に無くなっていき視界も次第に暗くなった。琥珀は目を閉ざしていき、その場に倒れた。
 ...こ...は....く....。
 ...琥...珀...っ..て....ば....。
 誰かの声がする。エレガか。彼女が近くにいることは分かるが、体に力が入らない。一体今、自分がどのような体勢でエレガが何をしているのかも解らない。全てが闇に包み込まれる。
「琥珀! 凄いじゃない、貴方! 今のどうやってやったの!?」
「今の…?」
「凄いな。まさかあの巨体の腹を切り裂くとは…。琥珀、本当に駆け出し冒険者なのか?」
(どう言ったものか…。「実は前、暗殺者してました~」というのも違和感あるし…)
 そもそも冒険者は暗殺者を嫌っている。何故ならランクの高い冒険者たちの三分の一は暗殺者に狙われ殺されているからだ。
 次に何を言うべきか悩んでいると不意に脳内が真っ白になり思考が停止した。
 まただ。昨日から時々、脳内にある文章が流れ込んでくる。
『鍛えし者よ、クリア報酬は管理の権利』
 と。何の事だかさっぱり解らない。だがこの文が現れ始めたのはダンジョンボスを倒した日の夜からだ。つまりこの文はダンジョンと関係している可能性が高い。もしくは何者かに魔法を使われ、直接琥珀の頭の中に語り掛けているかだ。
 もしこの文が本当にダンジョンからのメッセージだと仮定したとするとダンジョンは琥珀に再び何かダンジョンボス以外を倒す、もしくはダンジョン内の何かしらの条件をクリアしなければならないということになる。だがダンジョンボス以外のもので挑戦するべきものとはダンジョンの中間点に存在する中ボスと言われている存在だ。ダンジョンの受付人によるとこのダンジョンではその中ボスに5ヶ月前50人が挑み、生き残って帰ってきた者はたったの30人だったらしい。ちなみにその中ボスの名前はベヒモス。ベヒモスは鼠では無く、陸上ドラゴンといった外見らしい。
「どうしたのよ、そんな暗い顔して?」
 エレガが琥珀に声をかける。
「いや、何でもない」
「もしかして、本当は駆け出し冒険者じゃなくて有名な冒険者だったりして…」
 エレガは疑いと期待の目でこちらを見つめる。大丈夫だ、エレガ。それは無い。冒険者やダンジョン、そして肝心な魔物についてこれほどまでに無知な男が有名な冒険者なはずがない。
「やっぱりそうだったのね! 有名な冒険者だったのならそう言えばいいのに! 確かに最初はボロボロなマントと防具を装着していなかったから救済としてパーティーに誘ったけど――――」
「いや、有名な冒険者ではない。町に帰ったら教える」
「分かったわ…? では町に帰ってからね」
 エレガとエルクは不思議そうにしていたが、先ほどダンジョンボスから逃げ出していたまだ回復途中の二つのパーティーがいることを思い出し、回復に向かった。そして琥珀は可能性が低いものの、ダンジョンボスが再び復活しないかを確認するためダンジョンボスの消滅した所へ向かった。
「え? 貴方、回復魔法使えないの?」
「何だ? 知らなかったのか? 今までに俺が回復魔法を使った事など一回も無かっただろ?」
「言われてみればそうね。って、回復魔法を使えなかったらこのパーティーに入る前、どうやってダンジョンに潜ってたのよ!?」
「まあ、俺はこう見えても若い頃は『絶対防御壁』なんて言われていたのだぞ?」
「は? 絶対防御壁? バコバコ攻撃入れられて傷をよく負うエルクが?」
「むっ…。それは…。若い時は今よりずっと動きが鋭く筋肉も倍以上だったからな」
「今の倍以上? うっ、気持ち悪…。一体何目指してたのよ」
「まあそれはともかく、あまり傷を負うことは無かったから回復魔法なんぞ覚える必要が無かったんだよ。だがそれから老いていき、体も動かなくなってからは護衛役やダンジョンの浅い場所ばかり潜っていたからな。結局、このパーティーに入ってもなお未だに覚えていない」
「へ~」
「おい! 今、絶対に聞いて無かっただろ! ちゃんと聞け、エレガ!」
 と、まあ向こうではエレガが回復魔法を使っており、エルクは使えないため側でエレガと騒がしく話しているようだ。回復魔法はほぼ全ての冒険者が最初に学ぶ魔法…らしい。しかし回復魔法を覚えていないというのはとても稀なことだ。回復魔法が必要無かったのであれば当時のエルクは本当に防御力が高かったのだろう。まあ、琥珀が回復魔法を覚えられないのは魔力がそもそも体内に備わっていないためなのだが。
 そして琥珀はダンジョンボスの消滅した場所まで行くと、穴へ入った。穴とはダンジョンボスが派手に地面へ衝突したことにより出来た穴であり、その穴は深さ5、6メートル程だ。少し歩いていると何やら紫色の球体が一つ。そして透明な球体が一つ。ダンジョンボスを倒した事による報酬なのだろうか。手に取ってみるが、何も起こらない。脳内にも何か浮かんでくる文字も文も無い。
 って…あ…。体の力が急に無くなっていき視界も次第に暗くなった。琥珀は目を閉ざしていき、その場に倒れた。
 ...こ...は....く....。
 ...琥...珀...っ..て....ば....。
 誰かの声がする。エレガか。彼女が近くにいることは分かるが、体に力が入らない。一体今、自分がどのような体勢でエレガが何をしているのかも解らない。全てが闇に包み込まれる。
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