邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

第四百十二話 ジョブの力はすごい

9章 Grim happy end


「さて、存外に早く着きましたね。急いだとはいえ、こちらに到着する頃には既に日は沈んでいるものだと思っていたのですが」

夕暮れ時の街を歩きながら、シグレはそう思案する。
ここは場所的にはかなり遠いため、転移魔法や飛行魔法を使ったとしてもたどり着くには夜までかかると思っていたのだが、どうやらそこまでの距離ではなかったらしく、想定よりもずっと早く着いてしまった。
ここは月の国、旧王国の第二王子、つまるところの国では民を顧みず、自分に都合のいいもの以外は排除しようとする選民思想に取り憑かれた悪逆非道の王と言われている人間が治める国である。
しかし、実際に月の国を見ているとそんな事実は一切ない。
むしろ、民からの不安が聞こえないあたり第二王子おとうとの方が第一王子あによりいい政治をしていると行っても過言ではないのではなかろうか。
上下水道の整備は行き届いており、街中を歩く人たちの顔は明るく、話を聞く限り徴兵令や重税などはないようである。
どうしてここまで開きがあるかと言うと、理由は単純。
こちらの国の方が優秀な人材が大量にいるのである。
旧帝国において専業兵士もしくは騎士として活動していた人間たちは太陽王こと第一王子参加の騎士団以外はそのほとんどが第二王子側についているほか、内政においても真に優秀なものはほとんどこちらにいるようで、太陽王側に行った政務官は賄賂などによって成り上がった使えない小物ばかりらしい。
魔法によって魅了した軍の兵士によると太陽の国とは兵士の規模、技術や装備の質、戦術などの観点から見て圧倒的な開きがあり、太陽王個人の武勇に対しては月の王のスキルによってどうにか抑え込めることができているのが現状らしい。
しかし、いかに様々な点で優っていようと太陽王の持つ配下を強化するジョブの効力が圧倒的すぎるせいで膠着状態になってしまっているらしい。
所詮は民兵。騎士であるならば一対一なら圧倒することはたやすいが、彼らは基本数で押しつぶす戦略を多用する上に致命傷や身体欠損でなければ急速に回復する異常な治癒能力も合わせて押しつぶされることもままあるらしい。
個人の武勇ですべてを台無しにされるのは防げているが、スキルやジョブの効果を無効化する手段などが現状存在しないため、太陽王の持つジョブによって強化された民兵に対し膠着状態となってしまっているのだという。



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