邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜
閑話 毀骸の王子 八頁
閑章 遥か遠く、あの宙の下で。
「この家にはもうそんな高価なものを購えるようにものはいませんよ。前の妻との子供は、家事をやらせているだけなので金は持っていないはずですから。そもそも、あれはすすやらで薄汚れている。そんな奴を名誉ある王妃を選ぶための舞踏会に出すなど、他の貴族たちから正気を疑われてしまいますよ」
どこかバカにしたような言い方でそういった父親に対し、王子様はすぐに少女を連れてくるようにと伝え、一旦馬車の中へと戻って行きました。
そして、従者に命じて少女の体を綺麗に清め、美しい服を着させ、魔法で擦り切れた手や足の傷を治した後に、椅子に座る少女に対して静かに水晶の靴を差し出しました。
なされるがままに少女が靴を履くと、それは姉達のように小細工をしたわけでもなくぴったりと嵌りました。
こうして、王子様は少女と共に城へと帰り、幸せに暮らしたのでした。
めでたしめでたし。
「…………本当に、そう出会ったらよかったんですがね。私達は幸せに暮らし、生涯を終える。それで、良かったのに」
「先程の話でも言いましたが、悲劇はこの後に起こります」
盛大な結婚式が終わり、王城へと戻ろうとしていたまさにその時、それは現れました。
誰もが昼下がりの暖かな日差しと馬車の緩やかな振動により眠気を覚えるその最中に、鳥が、一羽、いたのです。
どこから来るのでもなく。元からそこにいたのでもない。
『ハッピーエンドなんて許さない』
少女の肩にいつの間にか乗っていた鳥が、年齢のわからない声で話しかけてきました。
その鳥の不穏な発言に嫌な予感を覚えた王子様は、持っていた剣で取りに襲いかかりましたが、簡単に防がれ、あまつさえ水晶の中に封印されてしまいました。
水晶の中では何かを見ることはできても、何かに触れることも、聞くこともできない。
王子様は、だんだんと壊れていく少女を、ただ見守るだけでした。
少女に囁く何かが何を言っているのかなど知る由もない王子様は、ただ、何かへの感情を積み重ねる。
恐怖、畏怖、激怒、憎、怨、恨、呪……
様々な感情が浮かんでは記憶の海へと融けて行く……
王子様は、目の前で殺される少女を、その生き様を、後悔を、呪詛を目に焼き付けて、壊れた少女を見届けた。
従魔スキル紹介
反転
物事を反転させる。
物質であるかどうかは問わず、あらゆるものを反転させる
誤字脱字や作品への意見等ございましたらコメントしていただければ幸いです
(誤字脱字がありましたら、何話かを明記した上で修正点をコメントしていただければ幸いです)
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「この家にはもうそんな高価なものを購えるようにものはいませんよ。前の妻との子供は、家事をやらせているだけなので金は持っていないはずですから。そもそも、あれはすすやらで薄汚れている。そんな奴を名誉ある王妃を選ぶための舞踏会に出すなど、他の貴族たちから正気を疑われてしまいますよ」
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そして、従者に命じて少女の体を綺麗に清め、美しい服を着させ、魔法で擦り切れた手や足の傷を治した後に、椅子に座る少女に対して静かに水晶の靴を差し出しました。
なされるがままに少女が靴を履くと、それは姉達のように小細工をしたわけでもなくぴったりと嵌りました。
こうして、王子様は少女と共に城へと帰り、幸せに暮らしたのでした。
めでたしめでたし。
「…………本当に、そう出会ったらよかったんですがね。私達は幸せに暮らし、生涯を終える。それで、良かったのに」
「先程の話でも言いましたが、悲劇はこの後に起こります」
盛大な結婚式が終わり、王城へと戻ろうとしていたまさにその時、それは現れました。
誰もが昼下がりの暖かな日差しと馬車の緩やかな振動により眠気を覚えるその最中に、鳥が、一羽、いたのです。
どこから来るのでもなく。元からそこにいたのでもない。
『ハッピーエンドなんて許さない』
少女の肩にいつの間にか乗っていた鳥が、年齢のわからない声で話しかけてきました。
その鳥の不穏な発言に嫌な予感を覚えた王子様は、持っていた剣で取りに襲いかかりましたが、簡単に防がれ、あまつさえ水晶の中に封印されてしまいました。
水晶の中では何かを見ることはできても、何かに触れることも、聞くこともできない。
王子様は、だんだんと壊れていく少女を、ただ見守るだけでした。
少女に囁く何かが何を言っているのかなど知る由もない王子様は、ただ、何かへの感情を積み重ねる。
恐怖、畏怖、激怒、憎、怨、恨、呪……
様々な感情が浮かんでは記憶の海へと融けて行く……
王子様は、目の前で殺される少女を、その生き様を、後悔を、呪詛を目に焼き付けて、壊れた少女を見届けた。
従魔スキル紹介
反転
物事を反転させる。
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