邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

閑話 灰水晶の姫

閑章 遥か遠く、あの宙の下で。


昔、ある国に、貴族の男がいました。
男の妻は病気になり、自分の最後が近づいていることを悟りました。最期の時、母はたった一人の娘を呼んで弱々しく娘の両手を握りしめ、掠れた声で言いました。

「かわいい子、私利私欲など無く、いい子で信心深くいなさい。そうすれば良い神が、いつもおまえを守ってくれる。母は……母は天国から、おまえのことを見ていますよ」

そう言うと、少女の母は少女に灰水晶のペンダントを渡した後に目を閉じ、死んでしまいました。
少女はそれを墓に埋め、毎日母親のお墓に行き、泣きながらも祈りました。
それから少女はより一層信心深くなり、熱心に母親の墓の前で祈りを捧げていました。
そんな折に、父は再婚しました。

再婚して継母となった女は、娘をふたり連れて来ました。
ふたりの容姿は誰もが振り向いてしまうほどの美女でしたが、内面は高慢で、傲慢で、嫉妬深く、意地悪で、夜な夜な街へと繰り出して男を捕まえて夜を越すこともざら、という程の淫靡な女達だったのです。
そして、少女にとって救いなど何も無いと言えるであろうほどの苦しみが始まりました。

「役立たずが、この家で何をしているんだい」と、継母は言いました。

「とっとと台所へ行きな。パンが食べたきゃ、馬車馬のように働くんだね」
それから継姉たちは少女の可愛い洋服を取り上げ、所々がほつれた古い灰色の上着と目の粗い麻の下着、粗雑でサイズの合わない木の靴を与えました。

「薄汚いおまえにはこれがお似合いさ」と言って、ふたりの継姉たちは少女をあざ笑い、台所へ連れて行きました。
こうして家族でありながら小間使いのようにされたかわいそうな少女は朝から晩まで仕事をしなければなりませんでした。

日が登るより前に起き、井戸の冷たい清水を汲み運び、薪を運んで暖炉と台所に火を起こし、暖炉と台所の燃えカスの灰を掻き出し、食事の支度をし、洗濯をしなければなりません。
その上継姉達は、少女をいたぶったり服を脱がせて辱めたり、服の端に火をつけて少女が逃げ回るさまをあざけったり、少女が集めた灰の中にえんどう豆やレンズ豆をたくさん放り込んだりしたので、少女は一日中座りこんで、豆を選り分けなければなりませんでしたし、疲れても、夜にベッドに入ることはできず、少しでも暖かさを求めて暖炉の脇の掻き出した燃えかすの灰の中に寝なければなりませんでした。

そして、そうやっていつも灰とほこりの中をはいずりまわり、薄汚く見えていたので、継母や継姉達は、少女をいつも馬鹿にしていました。

そんな生活の中でも少女は信心深く、むしろより一層の祈りを母の墓の前で神に捧げていました。

父親が市場に出かける時、二人の娘たちに土産は何がいいか尋ねました。

「誰もが振り向く魅惑のドレス」と一人は言いました。

「私の美しさを際立てることのできる美しい宝石」と二人目は言いました。

父はそれから少女のほうに振り向くと、少女にも「何がいい?」と尋ねました。

「お父様が帰ってくる時、一番最初にお父様の帽子に触った枝を」と少女は答えました。
父親は二人の娘には煌びやかなドレスと絢爛豪華な宝石__特大の真珠パールを、少女にはガマズミの枝を持って帰りました。

少女は父に感謝し、もらった枝を母の墓前に挿し、亡き母を想って泣いていました。
すると、少女の涙は光となり、墓前のガマズミの枝に吸い込まれました。
すると枝は根付いてあっという間に成長し、その側には黒百合が咲きました。
それから、少女は日に三度も木の下にいって泣いて祈ると、小さな白い鳥が現れて欲しいものを落としてくれたり、傷を癒してくれるのでした。

しかし、少女がそれを私利私欲のために使うことはありませんでした。

ある時、少女の国の王様が舞踏会を催し、国中の美しく若い女性を招待しました。
舞踏会は三日間、この国の王子が妃を決める大事な行事です。
全て貴族があつまるその舞踏会には、もちろん貴族家なのですから、ふたりの高慢な姉達も招かれました。

姉さん達は喜び、少女を呼びつけました。

「わたしたちの髪をとかして、靴にブラシをかけなさい。___もちろんお化粧もね。そして、しっかりと靴紐をお結び。ああ、コルセットも忘れずに、わたしたちは、舞踏会の王子様の所へ行くのよ。お前みたいな穀潰しの醜女とは違うんだ」

少女の名前は、もう呼ばれなくなっていました。
多分継母や姉達は、少女の名など覚えていないのでしょう。父もそうかもしれません。
そんなことにもめげず、少女はできるだけきれいに姉さんたちをおめかしさせました。
ですが少女は舞踏会に行きたかったので、そのまぁるい瞳からぽろぽろと涙を零しています。泣いているのです。
そんな少女は、継母に舞踏会に行けるよう頼みました。

「行きたいわよね、おまえも」と継母は言いました。

「でも」
微かな希望を抱いた少女に、まるでヒキガエルのように醜悪に顔を歪めた継母は、あくまで正論なのだと、自分は悪くないと主張するかのように優しく、諭すように少女に話しかけた。

「おまえは汚れているのに、舞踏会に行きたいのかい?しかも、体を着飾る美しいドレスも、煌びやかな靴もないのにどうやって踊るんだい?」しかし少女が頼み続けると、心底面倒くさそうな顔で舌打ちしながら継母は近くにあったレンズ豆の入った瓶を掴み取り、その蓋を開け、中身を少女が集めた灰の中にそっくりそのままふりかけ、よほど少女にきてほしくないのかその上から灰をかぶせました。

「おまえのために灰の中にレンズ豆を撒いたよ。これを二時間以内に選り分けることができたら、ドレスを買い、靴を買い、舞踏会へ連れて行ってあげましょう」
そう言われた少女は裏口から庭に行き

「鳥さん、鳥さん、お空にいる全ての鳥さん、こっちへ来て私を助けてください」

すると墓前のガマズミの木に止まっていた二羽の白い鳥が台所の窓から羽を羽ばたかせながら入ってきました。
続いて空にいた全ての鳥が窓から家の中へ入り、灰の周りで羽ばたき群れになりました。
そして、灰の中に撒かれた豆をこつこつとついばみ、汚されたり腐っている悪い豆は食べてしまい、まだ食べることのできる良い豆だけ皿に残しました。
鳥達の力を借りたことで、少女が全ての豆を選り分けるのには一時間もかかりませんでした。
少女は鳥達にとても感謝し、全員に水と豆を与えました。
そして、少女の礼を受けた鳥たちはみんな飛び立って行きました。

それから少しあと、少女は継母に意気揚々と選り分けた豆を手渡した。
ついに舞踏会に連れて行ってもらえると少女は信じていた。その目には確かな希望があったが、継母はきっぱりと言った。

「ダメよ、おまえはドレスもないし、踊れない。舞踏会に行ったって、ただ笑われるだけだよ」と跳ね除け、面倒くさそうな顔で少女に無理難題を突きつけた。「2皿分の豆を灰の中から一時間以内に選り分けたら、連れていってやるよ。まあ出来やしないだろうがね」と継母が灰に豆を撒くと、どこかへ行ってしまった。
少女は裏口から庭に出て泣いた。

「ハトさん、ハトさん、我らが神のおわします天の国より下にいる全ての鳥さん、こっちへ来て私を助けてください」

”良いお豆はお鍋の中へ悪いお豆はおなかの中へ”

すると2羽のハトが台所の窓から入ってきました。続いて空にいた全ての鳥が灰の周りで羽ばたき群れになりました。そして、こつこつとついばみ、やはり腐っていたり汚れている悪い豆は食べてしまい、まだ食べられる良い豆だけ皿に残しました。
鳥達の協力もあって少女が全ての豆を選り分けるのに三十分もかかりませんでした。そして、鳥たちは豆を貰ってみんな飛び立って行きました。
そして少女はその皿を継母に持って行き、今度こそ連れて行ってくれるよう頼みました。

しかし継母は言った。「おまえは連れて行かないよ。ドレスもないし、踊れないじゃないか。あたしたち、恥をかくところさ」そう言うと継母は少女に背を向け、二人の姉を連れて馬車に乗り、どこかに行ってしまいました。


もうこれで元ネタわかったと思います。

今回から閑章が開始

従魔スキル紹介
範囲内絶対知覚権
あらかじめ指定した範囲に起きたあらゆる事象を理解し、知覚するもの。
最大範囲は30m、探知範囲に自身がいることが条件。
奇襲を無効化する

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