邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜

クロシヲ

第二百四十六話 遭遇: Encounter

7章 あゝ神よ


「まあ、現状で黒幕についてわかっていることは何もわからないってことだけですね」

シグレがそう言うと、クーフーリンは唐突に空中にルーンを描き、背後に忍び寄っていた巨大な鷹のような黒獣を焼却した。

「そうだな、黒獣はこの通り消せる。何故かルーン魔術はクリードやコインヘンのような化物にも効いたしな」

「試したんですか?」

その時、周囲にズン!と重い音が響き渡る。

「そうそう、進んでるだけで今みてぇにズンズンうるさくてな。たが、ルーンで足を焼いたり、凍らせたりしたら…………ん?」
「なんで、今、その音が?」

ギ、ギギ、ギギギと油の指されていない歯車のような軋んだ動きで後ろを振り返った二人の目の前には、黒い山嶺があった。
否、山嶺などではない。
生物だ・・・
成程、これならあの500mに及ぶ足跡も納得である。
常人の視力ならば全体を把握することすら出来ないであろう巨体。
始まりの街より大きいであろう。もしかしたら何時ぞやの王都をも超えるかもしれない。
何せ頭部から生える角と思しき部分ですら家屋を建ててもビクともしないであろうほど太く、そして大きいのだ。
皮膚に存在する魚の鱗のようなものはひとつですら人間より大きく、体表に無数に存在する棘に至ってはその一つ一つがサーバー対抗戦のときの城と同等かそれ以上の大きさである。
黒い体表に爛々と紅く輝くいくつもの瞳に光はなく、機械のように何かを追っている。
全てにおいてスケールが、根底からして違うのだと一瞬で悟ってしまうであろう程の巨体。
それ程の威容を誇る巨獣が、二人の前に佇んでいた。

瞬間、周囲にもはや立つどころではないほどの強風が走り抜ける。

「バレてますよね。これ。明らかな敵対行動では?」
「いや、バレてねぇ。奴にとってこれはただの呼吸、鼻息だ」
「生物としての次元が違いませんか?」
ゲイ・ボルグおれの槍の原典だぜ?その辺に転がってた死体の頭蓋から神すら殺す因果逆転の魔槍が作れんだ。ぎゃくにそれくらい出来なきゃおかしい」
「ぶっ壊れですね……」
「ああ、その通りだ」

「さて、どうすっかねぇ……」

鼻息により吹き飛ばされ数百m後方に着地したクーフーリンの頬には、一筋の汗が伝っていた。


誤字脱字や作品への意見等ございましたらコメントしていただければ幸いです
(誤字脱字がありましたら、何話かを明記した上で修正点をコメントしていただければ幸いです)

いいね、フォローもお願いします

Twitterのフォローもお願いします
(IDは@87lnRyPJncjxbEpです)

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品