第百三十六話怨讐

6章玩具は盤上で踊る

「ガハッ…！」

貫かれた身体から鮮血が溢れる。
湧き出た紅の液体が黒い床を濡らし、急速に体の力が抜けていく。
体の芯がスッと冷めていくような感覚がシグレの身を包みこむ。

（だめ…だったか…だが…）

未知の手段で持ってシグレの渾身の叛逆を無効化し、あまつさえそれで笑って見せたロキを見て、シグレは未だ諦めない。
既に末端の感覚は無く、視界は霞み、言い様もない悪寒に全身が包まれていく。

「解リリ…放ス…」

「なっ！まだ何ッ…

魔法封印マジックシール

魔法を封印することで、好きな時に封印した魔法を発動できるという魔法。

そして、封印した魔法はノーコストで発動できる・・・・・・・・・・・。

厳密には、魔法を封印するときにコストを払っているのだが、それは関係がない。

滞りなく普段と同じく発動した転移門ゲートは、シグレにとっての天の助け、ロキにとっての最悪の敵を呼び起こす。

「ロキィィィィィィィィィィィィィィィィ！」

シグレの魔法発動に気づいたロキが止めようとするが、ロキとシグレの間にできた光の渦から、白銀の輝きを纏うモノが現れる。

そのモノは即座にロキに突進していき、その体を噛み砕く。

白銀の毛並みをロキの鮮血で染めたフェンリルが、雄叫びをあげる。

「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ！」
「ッ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿!!」

狂える神狼フェンリルの雄叫びに、ロキの無言の絶叫が重なる。
その大音量は容易に周囲の瓦礫を粉砕し、微粒子レベルにまで分解する。

破滅を招く咆哮ルインズロアによって更地となった黒い部屋の中で、蹂躙が始まる。

神速で喰らいつくフェンリルに、ロキは反応すらできずになすがままとなり、その足を噛みちぎられ、下半身を呑まれ、頭を爪で薙ぎ払われる。

だが、それでもロキは死なずに悲鳴とともに少しづつ嬲られ続ける。

そして、フェンリルの紅く染まった爪が、ロキの腹へと突き刺さった。

フェンリル召喚！

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（IDはあらすじにあります）