紅鯨

ノベルバユーザー162616

鯨と紅

部屋の鏡を見る。目はやる気が感じられず肌はカサカサで肌色も悪い。その不健康極まりない鏡に映っているのが手塚淳29歳であり絶賛無職でどうしようもない奴である。手塚はお笑いが大好きで部屋に引きこもってDVDを再生しては笑って、たまにトイレに行きご飯を食べてまた部屋に引きこもるという毎日を過ごしているのである。
このまま生きて俺の人生終わるのか、…それはなんか嫌だな。スマートフォンを開く。そこには今まで手塚が書き溜めたお笑いのネタがメモ帳のアプリにぎっしり書かれていた。お笑い…、お笑い芸人に俺はなりたいかったんだ。漫才師になって爆笑漫才コンクールに出て優勝するって夢あったんじゃん。でも、この生活やめなきゃダメだし…このまま何もなくて死ぬのはもっと嫌だし。
手塚は覚悟を決めた。やりたいことをやって生きよう、
底辺に今いるなら何でも頑張れる、やってやる!と。
手塚は早速お笑い芸人になるにはお笑い事務所の養成所に入るのが、よく聞く話だったのでお笑い事務所大手に電話をかけた。
「すみません、お笑い芸人になりたいのですが?どうすればいいんですか?」
「ハイ、もしもし大手事務所ですが?あー、お金さえあれば養成所入ってなれるよ。」
「ちなみにおいくらくらいでしょうか?」
「全部で100万はかかるかな」
「…100万。」
「厳しい世界だからね、覚悟があるならまた連絡下さい」
手塚は驚きで黙ってしまった。なるのに100万かかるなんて。
「もしもし、じゃあお願いします。」
電話を切られてしまった。それにしても100万そんなお金がどこにあるだろうか。
手塚は出鼻をくじかれてしまった。少し放心しているとスマートフォンがバイブした。
手塚は目線をスマートフォンに向けるとマリと画面に表示されていた。

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