イセカマジックストーリー《異世界×オカマ×魔法》

毛玉毛糸

31繋がり

「え、えぇ!っ!」

驚きで声をあげそうになったネロの口を、エナスは必死に押さえ込んだ。

「んん!っ!」

口を押さえた拍子に二人は倒れたが、その音で夢の中のサラとウィルが起きることはない。

ネロは数秒呻いていたが、エナスに静かにするよう合図されたので静かになった。

「お願い、話を聞いて。」

いつになくまともなエナスの言葉にネロは息を呑んで頷いた。
その返事に安心したのか、エナスは真顔でありながらも頬を赤くし、その後ろでは尻尾が揺れていた。


「えと、今から言うことはサラやウィルには言わないで欲しい。」

エナスはネロから手を離し、数歩下がって体育座りした。

「見ての通り、私は竜族。今は魔法で人間の姿になってる。」

「どうして?」

「それは…。お父さんを探すため。」

その答えに1つの疑問が浮かぶ。

「貴女、お父さんは3日前に亡くなったんじゃなかったの?」

「…誰もそんな事言ってない。3日前に体調を崩して寝込んでいただけ。」

ネロはそれを聞いてため息を漏らし苦笑いを浮かべる。

「貴女、それにしては紛らわしい反応してたじゃない。サラとウィルは完全に思い違いしてるわよ。」

一応はそれを反省しているのか、エナスは愛想笑いで誤魔化そうと無理に口角を持ち上げた。

「それは申し訳ないと思ってる。でも問題は一昨日の朝。突然何者かによってお父さんは召喚されたの。」

「…召喚?」

ネロは想定外のエナスの言葉に思わず聞き返した。
つい先日の出来事が思い出される。

空を羽ばたく巨体、鱗に覆われた長い尻尾。
その上に浮かぶ召喚陣。

もしかしたらを想像すると、全身から汗が吹き出るのが、生々しくはっきりと感じられた。

「何か心当たりがあるの?」

かけられたその言葉で身体中から出ていた汗が急に冷たくなり、同時に鳥肌が全身を覆う。
今ここでもしかしたらを言うべきか否か、その刹那の内で何度も自問した。

「いえ、ただ『召喚』となるといい気がしないから。」

彼女が出した答えはこれだった。
正しかったかは分からない。ただこちらの方が確かに安心だとは思っていた。

「私は魔女の仕業と思ってる。だから私は、お父さんを探して魔女を殺す。」

ネロの読みは当たったらしい。魔女ではないが、召喚した本人であるサラの命に関わる重大な問いだったと分かっていたなら、彼女も少しは楽だったのだが。
その安堵を見せないように、彼女はあくまで冷静を装う。

「そう。物騒なことね。貴女はあの二人にその事は自分からは言わない方が良いと思うわ。驚くでしょうし、それに」

(…きっとあの子は自分を責めるから。)

「それに?」

「なんでもないわ。これは貴女と私の秘密よ。」

そうして二人は指を切った。互いに念を押すように、長く長く。

明日に備えて寝ようと思いベッドへ戻ると、二枚の葉っぱが枕元に並んでいた。

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