イセカマジックストーリー《異世界×オカマ×魔法》

毛玉毛糸

1-1日常

  現実というものは、いつも不条理なものだ。誰もが想像しないようなことが起こる。

例えば俺だ。俺は高校でいじめられている。理由は知らない。特別太っているわけでも、痩せているわけでも、はたまた不細工なわけでもない。なんなら容姿はいい方だ。成績だって中の上くらいだし、コミュ障なわけでもない。本当に理由がわからない。正直、高校でいじめられるなんて中学では思ったことがなかった。

「はぁ…」

深い溜め息が漏れる。憂鬱だ。今日もこの教室に来てしまった。学費を払ってくれている親に申し訳ないという理由だけが俺をここまで連れてくる。本当は来たくないのだが…

「うぐっ…」

突然肩に太い腕が巻き付いた。

「よお~!山本ぉ~!ちょっと今日電車ん中で痴漢してよお、朝からお楽しみしてたわけ?したら、そのオカズ女が反抗してきたんだよ!まぁ電車おりたら即ぶん殴って黙らしたんだけどよお。でもまだその怒りがおさまらねぇ、早速だが殴らせろ?」

また赤井か…いつも俺をいじめる奴らのリーダー。つくづくクズだよな。武勇伝みたいに言ってるけど、なんの自慢にもならねえよ、その腐った行為。

とは思いながら、何も言えないのが俺なんだけどな

「おら、いくぞおおお!」

ドスッゴツッ

「アーッハッハッハー!」

気持ち悪い笑い声だ。

い、痛い…腹と顔面交互にくるかぁ…しんどいなぁ…

「あーあ、なんか物たんねえなぁ……あ!お前、根性焼きってやったことあっか?俺すげぇ興味あんだよなあ」

ポケットから煙草とライターを取り出した。

ま、まじ?ホントに火着けてるし…流石に怖いな…

そんなことを考えている頃にはもう煙草は俺の腕にあった。

ジュウウゥ

「はあ!あぁあぁあぁあああ!」

思わず声が出てしまった。
く、クソ!まじで痛い!熱い!あり得ねえ!

「アーッハッハッハー!」

変わらない高笑いが教室に響く。
いつも気にしないクラスメイトだが、流石に引き気味に見ている。

助けてくんねえのか。まぁ、いつものことだけど。

「あーあ、楽しいなあ、おい?」

「そ、そーですか?そりゃよかった」

なんて思ってるわけねえだろ。でもまぁ、ホームルームの始まる時間になったし、朝はとりあえず安心だ。アイツ、授業の時はサボって脱け出してるしな。





キーンコーンカーンコーン

やっと昼休みだ。まぁもちろんいじめられっ子の俺はぼっちだし、楽しみなものではないのだが。
って、あれ?今日は赤井、教室にいないんだな。これで落ち着いて昼食が摂れる。

「お前またこんなオタクみたいの描いてんの?キモいんですけど。てかなんでお前みたいのが学校来てんだよ?帰れよ!」

あぁ、女子は怖い。俺のクラスにはもう一人、女子のいじめられっ子がいる。根室だ。地味で眼鏡でおさげ髪。典型的ないじめられっ子だ。彼女のいじめられている理由は明確だ。どうやら彼女はオタクらしい。おそらくショタ属性なのだろう、そんな声がよく聞こえる。

「別に誰がどんな趣味嗜好だろうが、どうだって良いだろ?」

直接言うなんていう勇気は全くないので、小さな独り言で落ち着いた。

根室は数人の女子に髪の毛を掴まれながら教室を出た。恐らく教室ではできないようないじめが行われるのだろう。

昼休みが終わる頃には根室は帰ってきたが、彼女は制服ごとびしょ濡れだった。

「俺とは真逆の苦だな。」

根性焼きの痕を見ながら言ってみた。






キーンコーンカーンコーン



気付くと帰る時間だ。今日は赤井に目をつけられる前に帰ろう。

リュックを背負っていつでも教室を出られるようにする。幸いアイツの席は離れているため、捕まえられるなんてことはないだろう。

「きりーつ。れーい。さよーならー。」

日直しか言わない挨拶を聞くと、すぐに教室の扉を開けてダッシュした。足を止めずに帰路につく。

「ハァハァ…さ、作戦成功!」

久しぶりに成功した。今日は運がいい。

家に帰ると、まぁいつもの通り特別言うこともないような日常で今日が終わった。

「神様、どうか俺を異世界へ連れていって下さい。難しければ性別を変えるだけでも構いません。どうか、俺のこの腐った人生に転機を下さい。」

寝る前に必ず唱える。1年前くらいから始めた俺の日課だ。と言っても、声に出し始めたのはつい1ヶ月前からだが。確実に今の人生が変わる2つを祈る。
アホらしく思えるかもしれないが、朝になったら願いが叶っているかもしれないという希望だけが、俺の生きる糧になっているのだからしょうがない。

こうして俺の1日は終わりを迎えるのだ。

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