やっぱ嘘

りりあ

第1話

 溜息をすると、寿命が短くなる。
小学生の時、先輩にそう教えられたことを思い出した。しかし溜息をしたい気分だってあるのだ。仕方ない。美心音は小さく溜息をついた。今日、仲の良かった子達と喧嘩をした。だから当然一緒に帰る友達がいなくなってしまったわけで。
「今年最後の部活の帰りが1人だなんて最悪!」
頭の中でぐるぐるとさまざまなことを考えて、でも考えても意味はなくて。嫌な気持ちで心がいっぱいの時に、ふと前を見ると、見覚えのある後ろ姿が目に入った。大谷聖(こうき)。同じ部活の男子だ。忍び足で、聖との間隔を狭めていく。あと少しで触れるか触れないかのところで聖は振り向いた。
「あ、え??真田…?え?」
想像以上に戸惑っているそいつを見て、美心音は一気に自分の頬が赤くなるのを感じた。
「お、大谷が見えたから、追いかけてきちゃった」
「そ、そっか。珍しくね?1人でいるの。」
「そこは触れちゃダメだと思う。」
聖は、何かに気づいて気まずそうに目をそらした。無言の空気が一瞬にして作り上げられた。その空気を壊して口を開いたのは聖だった。
「そういえば、俺誕生日プレゼント貰ってないんだ」
「どうしたの、急に。」
「話変えんのが苦手なんだよ、、。」
照れた表情で言う聖を見て、美心音はクスクスと笑ってしまう。
「大丈夫大丈夫、続けて?」
まだ少し笑いながら話しの続きを促すと、聖は渋々話し始めた。
「だから、この前誕生日だったんだけど、親からプレゼントも何もなくて悲しかったなーって。どうでもいいなこんなこと。」
「いやいやいや?残念だったね!」
「ほら、返事雑じゃん」
バレたかと笑うと、聖はしょうがないなとでも言うかのように笑った。ああ、その笑顔好きだなと美心音は思った。
 2人で何気ないことを話しながら歩いていくと、いつのまにか交差点についていた。ここで美心音は右に、聖は信号を渡って真っ直ぐに進む。
「じゃあ、バイバイ!」
「赤だから、青になるまで待ってくんない?」
聖に言われて、美心音は曲がるのをやめた。しかしすぐに信号は青に変わる。美心音はまた、手を振った。けれど聖は渡ろうとしない。
「青だよ?」

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