異世界でデスゲーム~この世界で神になる~
予兆
「いつもはこんなんじゃないのか?」
琉璃の発言に、きっと今の俺は不安の色を隠しきれていない。一気に走った悪寒が全身に行き渡り鳥肌が立つ。
恐る恐る問いかけた言葉に、落ち着いた様子で琉璃は言った。
「ふむ……。まあ、気のせいかもしれぬ。故に、気にせんでも良い。それよりも、ララが持っているソレは大切なやつなのじゃろ?」
「え? あ、ああ、そうだ。ララエル? 神楽さんに貰った箱、今度は忘れたり落としたりするなよ?」
「それなら、一度開封して中身だけ取り出せばいいんじゃないじゃろうか?」
カードにして、収納すれば良いだけの話なのだがララエルは頑なに拒絶する。
自分の使命をまっとうすると言った枷があるのだろうか。だが、あんな真剣な眼差しに見つめられては駄目とも言えない。
「確かにそうだな。中身が気にならない理由でもないし」
歩き疲れたって理由も加わり、休憩がてらに箱を開けた。
パカッと短い音が切なく響く中で丁寧に高そうな綿に包まれた宝石がキラリと己で弱く発光していた。
赤い紐が付いた何角にもなったサファイアのような宝石。指先ほどの小さい形をしながらも、神々しさを感じる。
取り敢えず、詳細を見ておくか……。
鑑定ッと……。なになに?
SR・明星ノ一雫
・長きに渡り、護られてきた七つの宝玉が一つ。
力を求め、忠義を示した愛に涙は応え、器は新たな世界を見る事になる。
「ふむ。取り敢えずは、大事なものだと言うのは分かった。ララエル、ちとこっちに来い」
「はい?? なんですっ?」
上目遣いはやめなさい。そりゃ、身長差的に不可抗力なんは、わかるけどさ。
「な、なんだ? これなら落とす事も無いだろっ?」
「マ、マスター……」
首に掛けた明星ノ一雫を大事そうに両手で包み、ララエルは鼻を啜り、再び見上げる。
微かに潤んだ瞳は、とても弱く、切なく儚い。
「私、大切にします。この気持ちも、この感覚も……マスターがくれた全てを」
え、いや、ちょ。なに、すげぇ恥ずかしいんですけど。
目を合わす事すら、気持ちの高ぶる原因。
見ていられない弱い俺は、意味もない木々に視線を向けた。
「別に、気にするな。行くぞララエル」
「はい、何処までもッ」
なんだよなぁ。いやぁ、ドキドキした。女の破壊力って凄いのな、本当に。
つかさ、まって……。
女に、何かを掛けたり付けたりしたのって初めてじゃね?
わわわ、まじか。あん時は、何も考えて無かったけれど、良く良く考えたらスゲェ事したんじゃねぇの。
いやいや、いかん。情緒に乱れが生じてしまう。
ふと、逃げるように先頭を歩き出した琉璃を見やる。
はあ、落ち着く。小動物は本当に可愛いよな。
もう、触りたい。
「って、そーえば、わざわざ姿を変える必要があるのか?」
「それは、禁止されておるからじゃよ。寧ろ、人と馴れ合うの自体が許されるべきではない。と言うのが、白狐の方針じゃ」
それまずいんじゃねぇの。普通に、俺は人間だよ?
「でも、なら何でわざわざ人に化けてたんだ?」
「それは──。まあ、色々じゃ。それに、安心せい、ういが手出しをさせぬでな」
「今、手出しった??」
サラッと言ったよな。ええ、言いましたよね。
「大丈夫ですよ! マスター! 私もついてます」
「……はぁ……。大丈夫……ねえ?」
「マ、マスター!! 酷いで──グッ! な、何ですか? 今の!!」
禍々しい風だった。
幸せの時間を一瞬にして、絶望に変えるような嫌な風。それが進行方向から向い風としてやって来たのだ。
琉璃が言っていた言葉が脳裏に過ぎる。
「まさか、白狐の方々が怒って?」
「いや、それは有り得ぬ。うい達は、簡単に無用な命を取ったりせぬ。例え、脅しと言う名の忠告があってもの?まずは、現状を見定める必要があるじゃろ。どーする? 主よ」
立ち止まり、栗色の瞳で一点に穿たれる。
獣の双眸は鋭く、威圧感があるものだ。人に化けている時は感じもしなかった恐怖を覚えつつも思考を働かす。
しかし、どーするって今問われても……。いや、どーしたらいいんだ。
明らかに今感じたのは途轍もない殺気。今まで感じた事の無いものだった……。
だが、逆戻りをした所で進展は何も無い。
無情にも時間が過ぎる中、背中を小さい手が触れた。
「マスター、大丈夫ですよ。私が付いています」
慕う優しき声に、凍りついた時は動く。
前へ、そう前へと進むんだ。
奥歯を噛み締め、足に力を入れて一歩を踏み出す。
「行こう。進もう、その先へ」
「そうこなくてはのっ」
「はい! マスターッ」
****
「剛気ノ覇気、力翼の風、淵炎ノ衣現出」
深紅の鎧を纏う男性の全身を、覇気が覆い、加えて風で出来た翼が生えていた。
燃え盛る長刀は、風も加わり激しさを増す。
「さあ、いっちょ始めようか? お前達ならハイレアのカードが手に入りそうだしな? お前も、思うよな? ククク……」
「巫山戯るなよ人間。我が、負けるとでも思っているのか?」
「ああ、思っているね? と言うか、確信してるねぇ!! 死ねやオラァ!!」
翼が巻き起こす風に乗せた、大火は津波に成り、燃やす間もなく辺りを灰に化した。
高出力で放たれる炎が可能とした力技。男性は辺りを見渡し、満足気味に口を開く。
「やはり、このカードの掛け合わせはつえーな。剛気ノ覇気で力を増幅させ、力翼の風で自分中心に風を舞い起こし、淵炎ノ衣を強風に乗せて放つ……。だが、こんなんで、終わりじゃ、ねえよな?」
「無論だ」
岩陰から姿を表したのは真っ白な毛に覆われ、紫根の双眸に、二本の尻尾をした狐だった。
それも、一体や二体では無い。体長は大きくなくとも、十は下らない群れで襲われては一溜りもないはず。
だが、男性は笑っていた。
不敵に、怪しく、恐ろしく、このば全てを飲み込むが如くに。
「上等だ……。てめぇら纏めて経験値だ!!」
琉璃の発言に、きっと今の俺は不安の色を隠しきれていない。一気に走った悪寒が全身に行き渡り鳥肌が立つ。
恐る恐る問いかけた言葉に、落ち着いた様子で琉璃は言った。
「ふむ……。まあ、気のせいかもしれぬ。故に、気にせんでも良い。それよりも、ララが持っているソレは大切なやつなのじゃろ?」
「え? あ、ああ、そうだ。ララエル? 神楽さんに貰った箱、今度は忘れたり落としたりするなよ?」
「それなら、一度開封して中身だけ取り出せばいいんじゃないじゃろうか?」
カードにして、収納すれば良いだけの話なのだがララエルは頑なに拒絶する。
自分の使命をまっとうすると言った枷があるのだろうか。だが、あんな真剣な眼差しに見つめられては駄目とも言えない。
「確かにそうだな。中身が気にならない理由でもないし」
歩き疲れたって理由も加わり、休憩がてらに箱を開けた。
パカッと短い音が切なく響く中で丁寧に高そうな綿に包まれた宝石がキラリと己で弱く発光していた。
赤い紐が付いた何角にもなったサファイアのような宝石。指先ほどの小さい形をしながらも、神々しさを感じる。
取り敢えず、詳細を見ておくか……。
鑑定ッと……。なになに?
SR・明星ノ一雫
・長きに渡り、護られてきた七つの宝玉が一つ。
力を求め、忠義を示した愛に涙は応え、器は新たな世界を見る事になる。
「ふむ。取り敢えずは、大事なものだと言うのは分かった。ララエル、ちとこっちに来い」
「はい?? なんですっ?」
上目遣いはやめなさい。そりゃ、身長差的に不可抗力なんは、わかるけどさ。
「な、なんだ? これなら落とす事も無いだろっ?」
「マ、マスター……」
首に掛けた明星ノ一雫を大事そうに両手で包み、ララエルは鼻を啜り、再び見上げる。
微かに潤んだ瞳は、とても弱く、切なく儚い。
「私、大切にします。この気持ちも、この感覚も……マスターがくれた全てを」
え、いや、ちょ。なに、すげぇ恥ずかしいんですけど。
目を合わす事すら、気持ちの高ぶる原因。
見ていられない弱い俺は、意味もない木々に視線を向けた。
「別に、気にするな。行くぞララエル」
「はい、何処までもッ」
なんだよなぁ。いやぁ、ドキドキした。女の破壊力って凄いのな、本当に。
つかさ、まって……。
女に、何かを掛けたり付けたりしたのって初めてじゃね?
わわわ、まじか。あん時は、何も考えて無かったけれど、良く良く考えたらスゲェ事したんじゃねぇの。
いやいや、いかん。情緒に乱れが生じてしまう。
ふと、逃げるように先頭を歩き出した琉璃を見やる。
はあ、落ち着く。小動物は本当に可愛いよな。
もう、触りたい。
「って、そーえば、わざわざ姿を変える必要があるのか?」
「それは、禁止されておるからじゃよ。寧ろ、人と馴れ合うの自体が許されるべきではない。と言うのが、白狐の方針じゃ」
それまずいんじゃねぇの。普通に、俺は人間だよ?
「でも、なら何でわざわざ人に化けてたんだ?」
「それは──。まあ、色々じゃ。それに、安心せい、ういが手出しをさせぬでな」
「今、手出しった??」
サラッと言ったよな。ええ、言いましたよね。
「大丈夫ですよ! マスター! 私もついてます」
「……はぁ……。大丈夫……ねえ?」
「マ、マスター!! 酷いで──グッ! な、何ですか? 今の!!」
禍々しい風だった。
幸せの時間を一瞬にして、絶望に変えるような嫌な風。それが進行方向から向い風としてやって来たのだ。
琉璃が言っていた言葉が脳裏に過ぎる。
「まさか、白狐の方々が怒って?」
「いや、それは有り得ぬ。うい達は、簡単に無用な命を取ったりせぬ。例え、脅しと言う名の忠告があってもの?まずは、現状を見定める必要があるじゃろ。どーする? 主よ」
立ち止まり、栗色の瞳で一点に穿たれる。
獣の双眸は鋭く、威圧感があるものだ。人に化けている時は感じもしなかった恐怖を覚えつつも思考を働かす。
しかし、どーするって今問われても……。いや、どーしたらいいんだ。
明らかに今感じたのは途轍もない殺気。今まで感じた事の無いものだった……。
だが、逆戻りをした所で進展は何も無い。
無情にも時間が過ぎる中、背中を小さい手が触れた。
「マスター、大丈夫ですよ。私が付いています」
慕う優しき声に、凍りついた時は動く。
前へ、そう前へと進むんだ。
奥歯を噛み締め、足に力を入れて一歩を踏み出す。
「行こう。進もう、その先へ」
「そうこなくてはのっ」
「はい! マスターッ」
****
「剛気ノ覇気、力翼の風、淵炎ノ衣現出」
深紅の鎧を纏う男性の全身を、覇気が覆い、加えて風で出来た翼が生えていた。
燃え盛る長刀は、風も加わり激しさを増す。
「さあ、いっちょ始めようか? お前達ならハイレアのカードが手に入りそうだしな? お前も、思うよな? ククク……」
「巫山戯るなよ人間。我が、負けるとでも思っているのか?」
「ああ、思っているね? と言うか、確信してるねぇ!! 死ねやオラァ!!」
翼が巻き起こす風に乗せた、大火は津波に成り、燃やす間もなく辺りを灰に化した。
高出力で放たれる炎が可能とした力技。男性は辺りを見渡し、満足気味に口を開く。
「やはり、このカードの掛け合わせはつえーな。剛気ノ覇気で力を増幅させ、力翼の風で自分中心に風を舞い起こし、淵炎ノ衣を強風に乗せて放つ……。だが、こんなんで、終わりじゃ、ねえよな?」
「無論だ」
岩陰から姿を表したのは真っ白な毛に覆われ、紫根の双眸に、二本の尻尾をした狐だった。
それも、一体や二体では無い。体長は大きくなくとも、十は下らない群れで襲われては一溜りもないはず。
だが、男性は笑っていた。
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