異世界でデスゲーム~この世界で神になる~

流転

行き当たりばったり

 いや、これはどーゆ事かな。

 いきなりどん詰りとか聞いてねえよ。聞いてねぇけどかなり効いたよ、心に。

「マスター……これは……」

 いつも明るいララエルちゃんの声も絶望の意を示し震えている。
 ただ、何故に琉璃は尻尾をブンブン回してんだよ。
 この惨憺足る状況に、なに興奮してんだ。

「琉璃、涎をまず拭きなさい」

「お、おお。すまぬ、ついつい見蕩れてしもうた」

「見蕩れたって、これにか?」

 指を指すと激しく頷く。
 俺の視界に入る光景は、頑丈な外壁で出来ていたであろう検問の崩壊。
 立入禁止と書かれて、バリケードをされている現状に慌ただしい人達。

 琉璃は、良くこんな光景にワクワク出来るものだよ。

 くそ、まじでこの先どうすれば……。

「おや、君達もリーフに向かいたいのかい?」

 立ち尽くすしか、やる事が無かった時、一人の警備兵らしき人が話をかけてきた。その言い方からするに、俺達の他にもリーフに向かおうとした人がいるのだろう。
 だが、まあ、それも当たり前な事か。リーフに向かうには、この隔てる壁の先へと行かねばならないのだから。

「はい、そーです。リーフに向かおうかと」

「すまないねぇ。暫くは、リーフには行けないのさ。見てくれれば分かると思うけれど、こんな状況だからね」

 確かに、酷いものだ。
 担架等を見るからに、人も怪我をしたのだろう。
 何かに襲撃されたような成れの果てだった。

 風が運ぶ臭いはホコリ臭いし、小さい砂が時々目にも入って痛い。こんな状況じゃ無理だよな。

「でも、何があったんですか??」

「ぁあ、それなんだけれどね……。ドミヌス・ボアが興奮してしまってね……。彼は強い刺激を与え、尚且つ致命打じゃない場合。余力を破壊に使ってしまう性質なんだ。おさまるまで進む先にあるもの全て薙ぎ倒す」

「マジすか……」

 おい、マジふざけんな。どんだけ作り込めば気が済むんだよ。
 確かに深傷を負ったのドミヌス・ボアがどうなったかは気になっていたけれど……。まさか、こんな影響を及ぼすとは。

 項垂れるしか出来なかった俺に警備兵は、同情の色を浮かべて言った。

「まあ、復旧には全力を注ぐから暫くはアルディアで休んでいてくれると有難い」

 暫くはッて、期間はどれぐらいなんだよ。
 一日か、一ヶ月か、一年か。ぁあ、分かってる、これは単なる傲慢なワガママだ。
 目の前に居る人々が頑張っているのに、急かす事なんか言える訳がない。少なからず、イベントに参加した俺にも関係はあるのだから。

 だが、反面焦っていた。そんな時、袖を引っ張る力を感じる。

「ん? どーした? ……琉璃」

 袖を引っ張るのは、ララエルと思っていたが予想は外れて琉璃だった。
 逆に駄天使が何をしてるかと言えば物理的に頭を抱えている。彼女は彼女なりに考えてくれているのだろう。

「なんじゃ、主等はこの先に行きたいのかや??」

 小首をかしげる琉璃は、さっきまで興奮していたとは思えない神妙な赴き。
 吸い込まれそうな大きい瞳いっぱいに俺は映っていた。

「そうだが、こればかりはな……」

「ふむ。なんじゃ、そんな事かや」

 気落ちする自分と真逆に琉璃は腑に落ちたのか溜息を一つ付いて頷いた。

「なら、あっちから行けば良いじゃやろーて」

 赤いローブから少し伸びた爪が目立つ小さい手を伸ばすと延々と続く森を指さす。
 だが、その場所は未だに謎が多い場所だ。

「き、君達? アーテルに行くとか言うんじゃないだろーね??」

「え、いや……」

 焦った警備兵を見ればわかる。
 あの場所は未開であり、未知の領域だ。どんな奴らが現れるかも分からない。
 今までは、高レアのモンスターと渡り合っては居ないが、あの場所での状況は分からないのだ。

 ゲームでも良くある話だ。

 初めのステージに初期ステじゃクリアが出来ない強モンスターが出現したりする場所が。そして、大抵そーゆ場所はレベルが上がり後々に行くとレアアイテムやレアモンスターが居たりする。

 未だにマッピングが更新されていないのがいい証拠だ。

 故に、詳細に記されている事も大まかな事だけ。

 ・森淵の闇、通称アーテル。

 第一層の七割を占める広大で偉大ないにしえ大森だいしん
 不規則に流れる電磁波は、全ての機材を無効化し、迷った者は二度と出ることが出来ない。
 古き種族が護る森は、穢を許さず遥か彼方から時は止まったままである。

 ──別名・死神の降り立つ地アスケンシオ

 こんな場所に、装備もままならない俺達が行けるはずがない。
 けれど、くそ……どーしたら……。

「なんじゃ? ビビっておるのかや?」

「べべべつに、ビビってねぇし!! 俺、伊達にロープレしてねぇし!?」

「ふむふむ。じゃ、決定じゃな?」

「──なっ!?」

 なんと情けない……。まんまと獣耳幼女の口車に乗せられてしまった、と言うのか……。
 くっそ、勝ち誇った顔しやがって。
 リアルで初めて見たよ、ドヤ顔ってやつをよ。

「ララも良いじゃろう??」

「ララとは……私の事、です、か?」

 顎に手を添えて首を傾げ、間の抜けた反応をするララエルに琉璃は自分の頬を、ぷにっと抓り言った。

「うむ。ララエルとはちと呼びにくいのでな……。頬の肉を噛みそうで堪らん」

 まあ、あんな尖った歯で頬肉を切ったら血がドバドバだろーな。
 つか、何故に琉璃様が指揮を取ってらっしゃるのかしら。
 え、僕って主人公じゃなかったの。

「し、しかし! 君達ッ」

「うむ。気持ちは嬉しいが、もう決まった事故。すまぬが、それぐらいにしといてもらえぬか? こやつらも、決まった信念が揺るぎかねぬでな……」

 おお……。何とも、包容力のある言い方。相手に嫌な思いをさせず尚且つ配下を気配る姿は正に総大将。
 一生付いていきやすぜ、御館様!!

「ッて、ちがぁぁあう!! え、なんなの? 俺の立場ってなに? まさか、本当にモブってんの?!」

 もう、この際だ、顔を引き攣る警備兵なんか気にしてられっか!

「良く考えてみろよ!! 俺達はまだ冒険つー冒険に出た事は無い」

 出ようともしてなかったけどさ……。

「でもよ、わざわざ危険を承知で行く必要もないだろ? 俺にも、お前らにも命があんだ」

「マスター……」

「それに、だ。古の種族ッてのも気になる。女将さんは、言っていたんだ。森淵の闇で何やら慌ただしい事が起きてるってな」

 不思議だった。何故だか、思った事を空気を読まずに口に出せていたのだ。

 琉璃は、肩を揺らして笑う。

「ふふふ。主は面白い奴じゃな……。そんな大袈裟に身振り手振りせんでも、良かろーに。じゃが……言えたじゃろ? 自分の考えを」

 笑い、零れた涙を指で掬いながら琉璃は言う。

 コイツは、俺の本音を聞き出すため態と意見を自分勝手に纏めていたと言うのだろうか。
 だとしたのなら、大人げなかったのは俺なのかもしれないな。
 情けない。

「それに、じゃ。ういが居れば大丈夫じゃて」

「え??」

「ういは、アーテルに住まう古の種族・白狐なんじゃからなッ」

「「ぇえ!!」」

 その悲鳴は、琉璃を残した三人によるものだった。
 そう、何故だか警備兵も一緒に驚いたのだ。
 後に、上司に呼ばれこっぴどく怒られていたのは流石に心が傷んだ。
 少し面白かったけどさ。

「だが、白狐ったら何で人間を模しているんだ?」

「こうでもしなきゃ、人と触れ合えぬじゃろ??変化は白狐の特権じゃ!」

「んな、馬鹿なッ!!」


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