異世界でデスゲーム~この世界で神になる~

流転

純白と天使

「ふう、間に合いました」

 すげぇ、あんな距離を経った一瞬で移動するなんざ人間の基礎能力、体力を超越してやがる。

「ッて、アイツは天使だもんな」

 翼は、鋭利な刃物と化し助けに行くついでに三体を一刀の下横一閃に両断。
『チート』なんて言葉を脳裏に過ぎらせつつ、ララエルはどうだか……いや、ララエルも感じていた込み上がる力の事も視野に入れ先で待つ場所へと向かった。

「に、しても酷い有様だな」

 いくら、下級モンスターと言えど集団で襲ってくれば戦後、陳列した屋台は半壊し、様々な果物が入った樽は無残にも散らばり倒れ転がってしまうぐらいのダメージは負ってしまう。
 アルディアの民、この世界に住む人達にとって、モンスターとはいかなる場合でも災害と化す要因か。
 この世界の人にとって……か。

「マスター!! この子は無事ですよ!」

 転んだ子に手を差し伸べながらララエルは安堵の色を浮かべ明るい声で言った。

 だが、無事ならそれで良かったと思える。物は直せるが者は直せない。彼等はこの世界で性を授かり生きているのだから。

「初めて、産まれて初めて人の役にたてたのかな」

 そんな気がした途端、自然と笑が零れた。
 疲れきって笑っていた膝も今までの事を忘れシッカリと支えてくれている。
 そう、俺達はこの街を守り抜けたんだ。

「なら良かった!!」

 近くまで寄り、改めて言う。

「怪我とか、無いかい??」

「う、うぬ。ういは無事じ──」

 風が吹いた。
 暖かく、そして散らばった果物の甘い香りを鼻へと運ぶ平和的な風が、運命的な風が。

 靡いた風は、被ったフードに帆を張り自然と揺蕩い頭から離れた。

「獣人……?」

 金色が少しくすんだ色をした髪。
 前髪が眉上で綺麗に切りそろえられたショートカットの頭上には、三角形をした耳がピョコンと突き出ていた。
 耳の内側は白い綿毛が詰め込まれており、モコモコと柔らかそうな反面、裏は麦色をし艶やかで品がある。

「獣人……。ん? それ即ち、ういの事かや?」

 そんな少女は、両耳をぴこぴこ動かし、子供を捨てきれていない幼げな声で言った。

「ああ。君は獣人なのだろ?」

 薄紅に頬を染め、小さい鼻を匂いを嗅ぐようにツンと突き上げると栗色をした大きな瞳で写し見つめてくる。加えて、さながら狐の尾のような太くモコモコした尻尾を忙しなく左右に振るっていた。

 やめて、俺は見つめられるの苦手なんですよ。
 そんなマジマジとかさ、心臓のトキメキがメキメキ!!

「ッて、メキメキは駄目だろ……。ガチムチ過ぎるわ!!」

「獣人……ッて事で良いな。アルディア此処では……の? ちゅか、ぬしよ? ガチムチとはなんとな?」

 古風な訛りも含めだが、すげぇ可愛い。なんだよ、獣耳ってこんな破壊力あったんかよ。
 何故今まで獣耳属性をスルーしていたんだ……おっれ……!

 しかし、口を閉じていても上唇から覗く八重歯にも似た犬歯は可愛さとかよりも違う事を思わせた。

 やはり、こんなに幼くとも肉を喰らい、血を好み、襲うのだろうか。と、何かそう思ったら悲しくなってくるな……。獣耳幼女が……。

「お、おぅい! ぬしよ。質問をしているのは、ういじゃ!
 何故に、そんな切ない目で見つめる! う、ういに何を見たのじゃ!何を思い当たり何を感じたのじゃ!」

「……グスン……。いや、そーではなくてだな……」

「おー!! コウスケ! そっちは無事だったよーだな?」

 豪快で逞しい呼び声に振り向くと、そこにはカリュハさんが、手を振り弧を描き歩いて向かって来ていた。

「ん?」

 なぜフードを被り直すんだ。
 それに、ローブで身を隠し背後へと隠れるし。
 彼女は、一体何者なんだろうか。

 もしかして、獣人とはモンスターの類なのか。だが、害を及ぼす様な雰囲気では無かった……。
 なら、何故隠れる必要が。

「どうした? コウスケ」
  
 その言葉に、背いた思考は手繰り寄せられ背後を気にしていた視線はカリュハさんへと向く。
 改めて思うが、やはり彼の迫力は何もしていなくても感じるものがある。
 素人の俺が思うんだ、玄人ならより一層カリュハさんの、凄みが分かるのだろうな。


「あ、いや。何でもないです」

「んー? ですー?」

 やめて! そんな笑顔見せないで! 怖いしい!

「えと、何でもない……で、よ」

「プッ……! んだよ、その訳の分からねェ言葉は! まあ、良い。ちょっと来てくんな」

 自分でも思いますよ。日本人としての弊害を感じましたよ。
 これだから、イエスマン国家の日本は嫌なんだ! っても、じゃっかん引き篭もっていた俺は日本に貢献していたかと言えば微妙なんだけどな。

 しかし、カリュハさんは何処に連れていこうとしているのだろうか。

 まさか、弁償代とかの請求かなにかなのか。等価交換じゃ、何をやらされるか分かったもんじゃねぇ。
 何事か分からないであろう、間の抜けた表情を浮かべる天使も宛にならないし。

 取り敢えずは従うが吉か……。

「えと、分かっり……。分かったんだけれど、何処に??」

「──ん? ぁあ、この街の長が是非ともコウスケ、お前に会いたいんだとよ」

 これも、イベント……の途中か?
 いや、しかし、イベントは確かモンスターの討伐。
 これは、設定に……もしかして、隠しイベントなの、か?

「まあ、細かいこたァーいいから行こーぜッ! 相棒ッ」

「え? ちょ!? あ、ん? 相棒ッ?」

「はっはー! だから言ったろ? 俺はお前が気に入ったってよー??」
「え! ちょ、うお!!」

 え、なんなの? ララエルもそーだけど、この異世界はアメリカン寄りなんですか?! まって、こんな世界じゃ日本人は拉致監禁の餌食になりまするわよ!?

 肩を組まれて、半ば強引に連れてかれ着いた場所は鎧張りで出来た古風な建物。
 それは、教科書等で見た江戸時代にあるような建物だった。

「此処が……?」

「ああ、そうだ。後ろに居る御二方も中に入りゃーいいさ。この街の恩人であるコウスケの仲間なら神楽さんも歓迎だろーよッ!!」

 つか、何故ちゃっかり獣耳幼女てきてるんだ?
 しかも、頭隠して尻隠さずとはこの事を言うのだろう。
 いいから、耳を伏せる暇があるなら布越しから左右に動く尻尾を何とかしなさい。

「神楽さん!! 言われた通り連れて来たぜ!!」

 玄関に入るや否や、迷惑を考慮しない大きい声が銅鑼の音の如く薄暗い部屋に反響した。

 まるっきり人気の無い空間だし、

「留守なん……じゃ?」

 しかし、カリュハさんは留守だと思っていないのか肩を叩いて『ま、見てろッて』と、伝えるように親指を突き立てる。

 いや、だからジェスチャーじゃなくて言葉をですね!!
 とか、何とか、心で思いつつも、この場において俺は何を行動に出せる事もなく。
 かと言って説得力のある文言を伝える権利もない。
 要するに、事の成り行きを見届けるぐらいしかやるべき事が無いのだ。
 故に、カリュハさんの自信に頷き従う。

「ほほほう……。純白とな? 流石天使じゃわい」

 声がした。嗄れて歳を感じさせる貫禄ある声が。
 だが、対義語の如く舞った言の葉は戦ぐ弱い風にすら簡単に遠く飛びそうな程に軽かった。

 要するに、

「なななななななッ! なに、ぱぱぱん、パンツみてるんですかぁぁあ!!」

「ふぎゃしゃっ!!」

 ララエルの鋭い蹴りは、さながら木刀を振るうが如く鈍い音を奏で、垂直に伸び一瞬でつま先は天を指していた。

 要するに、なんだよ! その柔軟な体から繰り出されるサッカーキックは! ゴールからゴールまで届くんじゃねぇの。

 被害者であるご老人は、天井に突き刺さりぶら下がってしまった。
 が、誰一人として悲鳴をあげたり心配する者は居なかった。

「なんて世知辛いんだ……」


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