異世界でデスゲーム~この世界で神になる~

流転

スキル

「いやぁーグルードの巣穴は見つけにくいから手こずったな」

 今日も無事に野宿をせずに済む事。美味い飯にあり付ける達成感に、アルディアを歩く足取りも軽い。自然と気持ちも盛り上がり、毎度の事ながら声は弾む。

「ええ……。そーですね、マスター……」

「どうした?ララエル。肩を撫でらせ、疲れた様子をみせて」

「……ッ。疲れたんです……疲れているんですよ……」

 どうやら、相当今日は疲れているらしくいつもの勢いが無い。
 歩く歩幅も心做しか狭い気もしないでもないな。

 仕方が無い、宿まではまだ数分は着かないし、駄天使には倒れられたりしたら困る。
 囮が……じゃなくて、生活を送る上で困る。

「ほれ、ララエル」

「えっと、マスター? なにを?」

 背中から感じる困惑の視線。戸惑うのも分かる、俺だって初めての試みだし。
 しかし、ここまで膝を折り曲げ待機する姿勢が恥ずかしいとは思いもしなかった。
 通り過ぎるNPCや異世界転移者の視線が痛い。
 動悸も上がるし耳も熱いし顔も火照るじゃん。
 何これ、不治の病? 死ぬの俺。

 良く恋愛漫画等で、ヒロインをおんぶするシーンがあるがアイツら羞恥も感じずに出来るとかカッコよすぎだろ。しかも、澄顔と来たもんだ。爆発しろリア充!
 俺なんか、このまま『さあ!鍛錬の時間だ』。とか間抜けな面しつつ兎飛びで宿まで行きたいぐらいだ。

「べ、別に! 心配して、おんぶしてやろうとか思ったんじゃねぇよ!ただ、ほら、なんだ? 倒れられたりしたら困るだけなんだからな!」

「えっと、何ですか……そのテンプレなまでの『ツン』は……マスター……」

 こいっつ! 言いやがった。そこ、言うか? いいや言わないよな普通。
 しかも、疲れて覇気がない分、声は冷ややかだしよ!
 ここは、ヒロインとして何も言わずに体を預けるのがセオリーだろ。
 あー、もういいもんね。知らないもんね。

 もう、立ち上がっちゃうんだからね!

「うっせ、もう知らねぇ……よわッ?!」

 立ち上がろうとした瞬間、後ろから襲った衝撃に体制を崩しそうになるもどうにかこうにか、持ち直した。

「えへへ。んじゃあー、お言葉に甘えてマスターの、お背中借りますね」

 背中から感じる柔らかさと、髪の毛からは果実の甘い匂いが香る。

 思った以上に体重も軽く、歩く負担も少ない。
 これが、女性と言うものなのだろうか。と、勇気を出した自身に称賛を贈りながらも、真っ白な頭では会話が思い浮かばずに沈黙が生まれた。

 陳列する店も空気を読んでいるのかヤケに静かで、それがぎこちないし歯がゆい。
 もう少しいつもの様に騒いでくれた方が気も紛れると言うのに、今の俺はスグ後ろから感じる温もりで頭が一杯一杯だ。

「あの、マスターッ?」

 そんな中で、耳元に生暖かく穏やかな風がなびく。
 少し擽ったくもあり、恥ずかしくもなる綺麗な風に、平常心を保ちつつ答えた。

「は、はひっ!」

 ……分かってましたよ。

「ぷぷ。マスターは、面白い方です」

「う、うるせっ!! で、なんだよ?」

「私は、マスターの元に……いえ、マスターに出逢えて幸せです」

 神妙な趣きで言われるからこそ、余計に恥ずかしくもなる言葉。

「皆さんが、私達を武器にする中でマスター、貴方は違いました。ルフ様の手によって、この時のためだけに創ら」

「言うな」

「え?」

「それ以上は、言わなくていい」

 聞きたくなかった。が、それ以上に言わせたくなかった。
 まるで、自分が自分達が『者』では無く『物』だと受け入れているようで心苦しい。
 だけれど、四ヶ月前と今とじゃララエルの雰囲気も変わったのは事実。
 あの頃は無機質で、ただの人形当然にも思えていた。だからこそ思う、ルフが言っていた『成長』は満更でもないと。

 ララエルは、気持ちを汲み取ってくれたのか小さく言葉を吐露した。

「はい……マスター」

 肩に頬を預ける感覚と同時に沈黙し。何を考えているのかも分からず、もしかしたら俺の言った発言を気にしているのか。はたまた、怒っているのか、そんな分かりもしない事をひたすら考え、過ぎる時を待つ。
 ただ、黄昏に染まる長い道で伸びる影は、距離を感じること無く仲良く重なっていた。

「そんな関係になれればいい」

 今まで、一人を望み一人である事に自分を見出していた。相葉孝介という人間は孤独が似合うと。
 だが、今は違う。大勢と戯れたいとか、友達が一杯欲しいとか、そんなんじゃない。
 ただ、ララエルとは……。

「って、なんだ? また通知音?」

 イベントのお知らせだろうか。

「ゲネシス」

 んー、と。受信ボックスにはこれと言って変化はない。
 ならば、どこだ?
 立ち止まり、片手でメニュー欄をスクロールし通知音の正体を探す。

 所持品は変わりなし、装備欄も変わりなし、体調も変わりなし、……ん?

 今まで、気にもしなかったが……、どうやら此処の通知のようだ。

 スキルをタッチすると、スキル欄が表れ『???』が数多く並ぶ中で一つだけ文字が表れていた。

悠遠の先に得たモノフィリア・アネシス?」

「どうなさいました? マスター」

「んや、ちょっと待ってくれ」

 詳細説明……ッと。

 ・オートスキル、悠遠の先に得たモノフィリア・アネシス

 遥か彼方で巡り会い、互いが互いを思う事で能力は早熟し向上する。

「うん、良くわかんね」

 つまり、これアレだろ? 彼女作んなきゃ意味を成さないスキルって事だろ。
 結構、戦闘もしてきて初めて得たスキルがくそ使えねぇとか笑えねぇのな。

 こんなに、スキル欄がある事に驚いたがそれ以上に驚くハメになるとはな……逆に……。

「ははは……」
「大丈夫ですか?」

 ララエルに無駄な心配をさせる事も無いか。
 寧ろ、今までだってスキルなんかに頼らず暮らせてきたんだ。
 いつもの日常となんら変わりないと思えばどうだろうか。

「ああ、大丈夫だ。今日は、腹いっぱい飯でも食うか!!」

 こうなったら、ヤケクソだ!!

「えと? 何かあったんなら話してくださいね? 私も、マスターの力添えに……なれる事を望んでいるのですから」

「ありがとうな」

「はい! 私はマスターにお慕いしていますので。今までも、これからも」

 鼓膜を叩く声だけはいつまでも俺の心を宥め続けた。
 優しきララエル。俺はいつまでも一緒に居れるように強くなろう。
 だから、決めた。今回のイベントをクリアして上の階層を目指すと。

 決意も固まり、気持ちも落ち着くと本当に腹もすく。そして、自然と体は前に前にと進む。
 顔が綻ぶのも感じ、どうやら笑えているみたいだ。
 愛想笑いではなく、心から。

「それは、何とも心強いな? だが、それに負けないぐらいのドジっぷりを何とかしてくれよな? ははは」

「むっ!! ガブッ!!」

「いって!! おま!! 何、頭に噛み付いてんだよ!!」

「おかえひれす!!」

 いつもと変わらないやり取りに、いつもと違った気持ちが生まれ、新たな一歩を踏み出した。
 これから、どーなっか分からねぇ。
 ただ、分かる事は異世界転移者やモンスターとの命のやり取り。それだけは決定事項みたいなものだろう。
 必死に生き抜いてやるさ。

 待ってろよ──ルフ!

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