異世界でデスゲーム~この世界で神になる~

流転

等価交換

 イベント内容・第一層、市街地アルディアは突如として魔物の軍勢に襲われる。

 立ち上がった勇敢な者達! 命を懸けて護るのは己の為か他人の為か。今ここに、アルディア攻防戦が始まる。

 報酬

 N・ボアの毛皮

 N・ボアの牙

 N・ボアの骨

 N・ボアの肉

 NR・ボアの頭骨

 HR・ボアの霜降り肉

 SR・???

「なるほど、コレを見る限り最下級の猪型モンスターが現れると言う事か。
 つーか、街にモンスター解き放つとかRPGかよ」

 しかし、RPGが好きな俺はイベントを見て心踊らせていたのは事実だった。

 今や、始まりの街とバベルの塔があるリーフとの中間に位置するアルディアに居る異世界転移住民は少ない。

 強い連中にとっても、こんなクソみたいなレアリティじゃ飯の足しにぐらいしかなりもしないだろう。

 クソみたいなレアリティ……。霜降り肉と同等か……。

「可哀想なララエル……」

 マジで、いたたまれない……。

「え?! マスター? 何で、涙ぐむんですか? 何で哀れみの如く鼻をすすっているんですか……!!」

 斯く言う俺も、何故アルディアにいるかと言えばイベント内容にもあるが『ボア』等と言った食材になる下級魔物が多く棲息している為が一番の理由。

 アルディアからリーフに繋がる、キアラ街道の脇には森淵ノ闇しんえんのやみと名付けられた深き森がある。マッピングが更新されてないのを見ると、誰も立ち入っていないようだが。
 森淵ノ闇からボア等と言った草食系統の魔物が多くキアラ街道に姿を表す。

 金が一切存在せず、代わりに機能している等価交換。その為、大金を持ち楽をすることは出来ない。
 しかし、食材のカードをNPCである村人や店の店主に持ってゆけば熱々のご飯を用意してくれる。

 要するに、だ。階層が上がるにつれて等価交換のレア度も上がるとしたのなら……。

「考えるだけで恐ろしいな」

「マスター! 人の話を聞いているのですか??」

「人って……。お前は天使だろ? って、面倒臭いから良いか。わりぃ、聞いてなかった」

「どんだけ、扱いが雑なんですか!!」

「すまん……」

 あら、そんな怒るなよ。声がキリキリ響くんだよね。今ね、考え事をしてるんですよ、街を移動するか否かを。

 正直、弓やナイフ、どちらかを装備して大軍に抗えるとは限らない。あいつの突進はマジで痛い。

「いや、痛そうだった、ララエルが」

「まっった! 次は、倒置法で私を虐めてるんですね!? そーなんですね!?」

「はっはー」

 マジうっせ。ボアの大軍にぶん投げてやろーか。
 おっと、危ない危ない。内なる孝介が出る所だったぜ。

「だが、ララエル?」

「むぅ……」

 不貞腐れてますな……。いじけて睨んでも駄目です。
 上目遣いをしても駄目です。

 しかし、膝の上に両手を置いているせいで強調される谷間を何とかしてください。

「だぁ、分かった。悪かったな、ララエル。弄り過ぎた。取り敢えず、今日の宿費と食費を稼ぐ為に外に出よう」

 ソファーの軋む音と共に立ち上がり、手を前に差し出す。
 今は考えても仕方が無い。その日暮らしである俺に楽は許されないのだ。
 美味い飯、寝心地のいい宿に泊まるにはそれなりの等価が必要。

「わっかりましたよーだ!!」

 まだ、不満を拭えないのかプイッとしてから手を取る。
 ヒンヤリとした冷たさと、握り感じる指の細さに天使、以前に女性を感じ少し恥ずかしくもあったがその温もりが一人ではないと言う安堵をくれた。

「じゃ、まずは宿の女将さんから情報を得るかねッ」

 二階に位置する部屋を出て、立て付けの悪いドアを押して下の階へと降りる。
 木造故の程よく優しい香りと、古臭い階段が日本の旅館を思わせる故にこの場所がお気に入り。

 加えて、店員は皆着物を着ている為に馴染みやすい。

「あら、お出かけですか? こんな朝早くからっ」

 気さくに話をかけてくるのは、菊の刺繍が施された赤い着物が似合う女将。
 しかしNPCにはAI機能が備わってるのか、毎日毎日、違う会話をしてくるのは凄い。

「えっと! 女将さん。おはよーございます!」

 いや、こいつ本当にフレンドリー。
 何なの、アメーリカンスタイルなの? そのうちハグとか普通にしちゃうの?

「あら、おはようございます。ララちゃんは、いつも元気ね?」

「えへへへー」

 おい、なんだよその蕩けた表情は。
 俺に見せた事ないだろ。くっそ、NPCに負けてるのか……おっれ!

「まあ、いい……。女将さん、何か欲しいものだったり、ありますか?」

 女将は、頬杖をつき暫く視線を伏せ黙考してから口を開いた。

「何だか、冷え込みそうだからボアの毛皮も欲しいわね……。
 それと、大女将の着物がほつれてしまってるからグルードの繭も欲しいわね」


 よし、イベント発生だ。

「分かりました。ありがとうございます! 行くぞララエル」

 引き戸を出て視野に広がる様々な建物を通り越し、キアラ街道を目指す。

「マスター、今日は弓を装備なさるんですか……?」

「ん? ああ。そうだが、何で若干、心苦しそうに眉を顰めてるんだ??」

「いや、と言う事は……」

「ああ、そうだ。いつもの作戦で行くぞララエル」

 明るく元気な声で、作戦報告。
 まあ、名付けるならば『逃走と追撃』作戦と言った所か。
 しかしながら、ララエルの表情は依然として曇ったまま。終いには、前髪を撫で付けながら苦笑いを浮かべていた。

「たはははぁ……」

 が、そんな事は一切気にしない。
 さあ、行こう! 今日の食材を求めて……。

 ☆☆☆☆

「いやぁぁぁあ!! マスター!! 早く狙撃ぎゃぁぁあ!! 追い付かれるー! 追いつかれてます! マスター!」

 背丈が低い野草が広がるキアラ街道。

 高い空、割れた雲からは太陽の光が射し込み、平野一杯に照らす。
 草花に付いた朝露がキラリと光、さながら宝石に思えるそれは、とても美しく神秘的だ。
 遥か遠方には、薄らと聳える塔が平和的な環境に、異端と言う二文字を醸し出す。
 あれがバベルの塔か、と孝介は気合を改めて大きく息を吸い込んだ。
 そよぐ風は、自然の優しい香りを鼻へと運び、体内に取り込む事で偉大さを感じる。

 そんな中で、似つかわしくはない甲高い悲鳴にも似た絶叫が相葉孝介の鼓膜を叩いた。

 彼女、天使ララエルは茶色の毛皮に、二本の彎曲した角を持つ魔物・ボア三頭に追われている。

 と、三人称ぽく状況判断してみたが、つまり作戦通りララエルは囮として逃げ回ってくれていた。もう、髪、翼、服等、至る所をふんだんに動かして、上下にとか上下にとか上下にとか……。くそ、鎮まれ我が煩悩!

「いや、本当に毎回ありがとう。そりゃあ、突進されて吹っ飛ぶよな。わははははー」

「わははははーじゃないですって!! もう!! こーなったら!!」

 刹那、さながらドラッグマシーンの如く一直線に半べそかきながら全力疾走していたララエルはコチラを向いた。
 そして、ドラ・ララ号は軌跡を描き軌道を変える。目には力がこもり、訴えるものは不服と不条理にも見えて仕方が無い。
 どんどん縮まる距離に、声は上擦る。きっと、今の俺は細い目を一杯に広げて焦りの色を浮かべている事だ。

「……ん? え? ……ちょ!! ララエルさん?! ラ・ラ・エ・ルさん!! 何で、コッチに来てるの? 引き連れて来てるの!? ちょ、やめ、くるな! くそてれがぁぁぁあ!!」

 それはもう、逃げた。逃げ続けた。
 時に足を引っ掛けようとし、失敗し。
 時に、押して失敗し。

 って、俺かなり最低じゃね。生きる故の防衛本能の凄さを感じた。

 作戦は見事に失敗し、普段の倍以上かかって討伐は完了。
 どうにかこうにか、走りながら三頭居るボアの脊髄を射抜く事に成功をした。

 横たわり、赤い魔眼で俺を写す中で言葉を紡ぐ。

「フロール」

 唱えた途端、いつもの様に内から燦然たる粒子が溢れ、ボアは姿を消した。
 代わりに、手にした三枚のカード。

 N・ボアの毛皮

 N・ボアの毛皮

 N・ボアの肉

 残念ながら、霜降りにはありつけなかったが、食事処に持ってゆけば肉料理を提供して貰える。
 後は、グルードの繭を手に入れる途中で山菜をゲットすれば完璧だな。

「シフラ」と、唱えるとカードはメニュー欄にあるカードBOXに添付される。
 まじで、ソシャゲだな。

 足元で寝転び、へばっているララエルの目は『私、もう動けないの。だから、マスター?一人でお願い』とでも訴えているようだった。

 仕方ない。俺は優しいからな……。
 一人で行くさ。と、ララエルに背を向けて歩き出す。
 大丈夫さ、一人は慣れている。一人になる事に慣れてしまった愚か者をどーか見守っていてください。

 最後に、別れを告げよう。今まで頑張ってくれたララエルを憂いて、労わって、休んでてもらおう。
 それが共に過ごす俺に唯一できるプ・レ・ゼ・ン・ト。

「ララエル……。今日飯……抜きな……」

「へっ!? ──えっと?! ん? あ、私も行きますよ! もう!!」

 ララエルは、笑っている膝に手を付き立ち上がる。彼女の体はボロボロだ。そんなの誰が見たってわかる。
 なんて、いい奴なんだよ。
 俺を一人にしまいと、限界を超えた体に鞭を打ち尚も立ち上がってくれるなんて……。
 太陽の陽が彼女を照らし、白い翼が眩い。そりゃーもう、神々しく、お告げすら聞きたい程に美しい(産まれたての小鹿のような立ち振る舞いじゃなければ)。
 はは、俺は良い仲間に巡り会えたもんだ。

「いい……のか?」

「いいも、何も!ご飯無いと私だって死んじゃいます!! 態とらしいですよ、マスター!」

「てへっ」

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