異世界でデスゲーム~この世界で神になる~

流転

嵐の前の静けさ

 革張りのソファーに腰を落ち着かせると隣に座るララエルがわかり易く相槌をして口を結ぶ。
 こー言った空気を読む素直な部分は評価に値するな。うん。

「まず初めに、ゲネシスと唱え視界に広がるメニュー欄。その上にはライフバーみたいなのがあるよな?」

「あの、マスター。私にはそー言った機能が備わってないので……」

「ああ、そうだったすまない。取り敢えずわかりやすく言えば、二万人居た人間の四分の一程が現世界から居なくなった」

 初めは、HP関連の機能だと思っていたが冷静に考えれば命をかける以上、それは必要が無い。
 血を流し続ければいずれ死ぬし、首が吹っ飛べば即死だ。
 それに、何もして無くても減っていく様子を見るからに今の見解が一番真実に近い。

「四分の一? とは、何です?」

「は? ……ぁあ、そうだった」

「マスター? 今何で諦めたように視線を落としたんですか!!」

「いや、気にするな。つまり、五千人程が居なくなったんだよ」

 まあ、そーなるわな。
 消去法になる以上、戦力差と言うのは意外と均衡を保つ。強いヤツが強いやつを倒し、また、強いヤツが倒す。装備を重ねがけ出来る特権も一から始まる。そして、最後に残ったヤツが最強と言うことだ。

 もし、このゲームの趣旨が最強を決めるものだったらの話だが……。

 俺は戦闘と言う戦闘をした事が無いから詳しくは分からないが、そんなもんだろ。

「それに、バベルの塔には階層主が居る。ソイツを倒すには、より一層と素材が必要になり、よりレアリティの高い装備を重ねがけするには、結局人間同士で戦う他ない」

「ですよね! なら早く私を!」

 食い入るようにララエルは見つめる。
 気持ちは正直嬉しい。きっと、彼女は彼女なりに憂いてくれての事なのだろう。
 が、俺は良く仕込まれたこのゲーム性に乾いた笑いをする。

「ははは。そーじゃない。そーじゃなかったんだよ、ララエル」

「と、言いますと?」

 と、キョトンとした顔色で問いかけるララエルは本当に分かっていないようだ。

「ルフは言った。『彼女達を武器にして』と、しかしそこには彼女達を武器に変化させてとは言っていない」

「ですが……」

「ああ、そうさ。あの状況なら、お前等を武器に変化させると思い込むだろう。
 そして」

 ララエルが固唾を飲む中、淡々と今まで考えていた有り様を話し続ける。

「『命を無駄にしすぎた』『努力をして』そして『成長』。ルフはしっかりと、この世界の意を織り交ぜていた。しかし、それ以上に『死』と言った言葉が強すぎたんだ」

 あんな状況で、冷静に思考が働くはずもない。
 それらを踏まえて、おどけ笑って見せたルフは計算高い。

「龍やオーク。彼等はデータで、命の概念が無いと言ってたよな?」

「はい、言ってました。それと何か関係が?」

「あるんだよ。間違いなくそれは、命の重みに対する思考を鈍らせる。やればやる程、感覚は麻痺をして俺達人間すら、命と言う概念よりも強くなる上での素材としか見れなくなっている。
 極めつけは、五秒と言った制限時間だ」

 相手を労る時間すら与えないそれは、身勝手な人からすれば焦りしかない。

 早く手に入れなければと、必死にフロールを唱え、気がついた頃には存在すら無い状況だ。

 誰もが狂気と恐怖に怯え、生きている。
 さながら家畜のように。

「だが、良心的と言えるのは街中じゃあ人殺しは行えないと言う事だな」

「しかし、それは食料を調達する為に外に行くたびに危険と言う事ですよ?なら、尚更……」

「お前な……一応、天使だろ? 武器に化け自我を無くしているのなら兎も角な……。ヘルプにも書いてあったが、防具や武器は一つしか装備出来ない。だが、俺はどーだ?」

「狩りに行く時は、ナイフや弓をその日に合わせて装備しています、よね?」

 自信なさげに、ララエルは共感を求める。

 そして紛れもなく正しい。俺は山菜や動物を狩る時に弓やナイフを使う。

 そうでもしなきゃ、野生は甘くない。生きて行く過酷さを思い知りましたよ。

「ララエルが居るのにだぞ? 気が付かないか?」

「えっと……。へへへ」

 自分の前髪を撫で付け、愛想笑いをする。
 あざと過ぎて逆にこっちが困る。なんて言えば良いの? 馬鹿にすればいいの? 優しくすればいいの? ねえ、女子とはどーやったら付き合えるの。

 危ない危ない。これ以上は、俺の心をワームホールにするどこだったよ。勿論、繋がる場所は孤独な空間。

「ッて、俺のばっか……!」

「マスター?」

「あ、いや。すまない。つまり、最初から天使を武器に化けさせるなんて決まりはない。お前を強くする=成長なんだ」

 ルフが、ソシャゲに影響されていたのなら間違いなくあるはず。
 ……ララエルを進化させる素材が。武器ではなく天使として強くさせる方法が……。分からない現状、ただの憶測には過ぎないし、若しかしたら俺が間違えてるかもしれない。
 けれど、そうだと信じたい。だって、こんなにも喜怒哀楽がある少女が自我を持たない武器と化すなんて余りにも可哀想だ。

 ララエルは、急に立ち上がり何を思い立ったのか腰に手を当て鼻息を漏らした。
 なんだよ、そのドヤ顔。

「えっへん! と言う事は、今の私は何もしなくても強いって事ですね?そーなんで」

「いや、マジで雑魚」

「ふぇー!! マスター……さっきから言葉が酷いですよ!!」

 半べそかきながら肩をポカポカ叩くな、痛いだろーが。つか、可愛いだろーが。だろーがだろーがよ。しかし、そろそろ身の振り方を考えなければ行けない。
 何かと計算高いルフの事だ、この第一層に入り浸る俺を含め、多くの奴らにイベントと言う名の何かしらをやって来る可能性だってある。

 だが、それを言えば意外と責任感があるララエルは何かしら行動に出てしまうに違いないな。

「ははは。まあ、だからお前はお前のまま居ればいいんだ。武器と化すとか物騒な事は考えないでいい」

「それで良いんですか??」,

 放たれる視線は罪悪感の為か力がないものだった。

「ああ。今は良い。──って、ちょっと待ってくれ」

 なんだ、この音は……。ハープの音色が脳裏に響く。告知音か何かなのかは分からないが──。

 取り敢えず……。

「ゲネシス」

 可視化されたビジョンには、受信ボックスに一通のお知らせがあった。

 タッチをして、開封をすると長々とした文が書かれている。
 冒頭から始まる嫌な予感。それは、俺の予想を透視したかのような文面が広がっていた。

「やあやあ! 君達に、初のイベント告知だよ!! ドンドンパフパフ!」

 いや、ドンドンパフパフって……。文体でやるかそれ……。
 相変わらずの、ルフスタイルに溜息を零しながらも一字一句読みこぼしが無いようにユックリと瞳を動かした。

 ゲームならまだしも、俺の命がかかっている。
 死ぬのはゴメン被りたい。

 俺は絶対に生き残るんだ。

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