異世界でデスゲーム~この世界で神になる~

流転

ルフの審判

「君達は、これから互いの命を懸けたゲームをしてもらうヨ!!」

 訳の分からない世界で、初めて自身に投げられた言葉。踊らせた声で発せられた恐ろしい言葉。
 だが、言葉を聞いた当初は、誰一人として苦言やを持ちかける者は居なかった。いや、この場合は、突如として現れた存在に言葉を無くし、出来なかったが正解か。

 空が黄昏に染まり、割れた空から舞い降りる姿は正しく荘厳。

 真っ白い翼やローブは黄昏に照らされ金色に染まっている。
 誰もがその姿を見て固唾を飲み、先程までの喧騒が嘘のように世界は静寂を迎えた。

 愕然としていたり、恐怖に臆面していたり、それこそ十人十色の人間性を垣間見つつも、それ以上に異形な彼を見るために顔をひたすら仰ぐ。

 真っ赤に染まった髪の毛に、紫色の瞳、真っ白 すぎる肌。人離れしすぎた容姿の彼は童子の如く笑を浮かべながら浮遊していた、正直不気味だと言う一言に尽きる。

 一体彼が誰なのか……。そんな事は、聞かずも喋ってくれるだろうと、次なる言葉を求め続けた。

 と、冷静に判断しているつもりだが、正直焦っている。自分が今どんな表情をしているか分からないけれど、大凡の察しはつく。

 きっと今の俺は口をポカりとだらしなく開け、目を見開き、ただ呆然としているのだろう。

 それを乾いた目と口の中。背中から伝わるジットリとした冷や汗が物語っている。

「ふむふむ。やはり、君達は、まだこの状況が把握出来ていないようだね??」

 分かるはずがない。寧ろ分かったやつが居たのなら、拍手喝采すらしたいぐらいだ。

 見る限り此処は、ヨーロッパ諸国とかそこら辺の西洋チックな広場だ。人集りの中から聳える噴水の水柱がそれらしさを醸し出す。
 だが、建物や雰囲気に統一性が全く見られない。木造住宅だったり、赤煉瓦の建物だったり、昔の日本話でよく見る古臭い建物だったりと……。
 しかし……しかしなんだ、なんなんだ? この違和感は。嫌な予感は。分からねぇ。分からねぇけど分かる事はある。それはつまり、此処が日本では無いと言う事。

「どーゆ事だよ!!」
「良いから帰せ!」
「なんなのよ……」

 人々が、自分勝手に、身勝手に、自重もせず彼の問に騒ぎ立てる。
 まるで国会議員達の言い合いのようで不快にすら思えてならない。

「やっかましいな……」

 黙ってても、目の前の彼は説明してくれるに違いない。

「此処は君達が居た世界とは違う別の世界! 満ち足りた世界では無く! 未知なる世界!!」

 漠然とし過ぎてるだろ……。まるで、ゲームのプロローグ。そして、語り手である彼は天に両手を仰ぎ感情を込めて話し続けた。

「まあ、簡単に言っちゃえば平行世界。僕が創りあげたもう一つの世界。わかりやすく言えば、君達が居た世界とは異なる世界。そう、異世界さ」

 ──異世界……。なんとも……まあ、ファンタジックな発言なんだ。
 それに、そー言うのって死んでからだとか、王国に召喚されてだとか、だろ。

 俺は死んでも居ないし、王国の召喚ならば此処に集まった個々に一貫性が無い。
 クラス纏めて異世界転移など、ラノベで良く見かけるけれど視界に入る限りの一杯居る人集りはサラリーマンや女子学生と様々だ。体を瞳に写す限り俺自身も黒い学ランを身に纏っている。


「帰してくれだって? それは聞けない話だね。僕は、君達咎人に審判を下さなくてはならない。創造主・ルフの名において」

「咎人……だっ、て??」

「そう、咎人さ。まるで罪に問われる事なんかないって表情をしているね?? 君達は殺しをした事があるだろ??」

 いやいや、あるはずが無い。人殺しなんか、する勇気もない。

「生きていく上の斜め上を行く殺しを。自分達が世界の天辺だと思い込み、自分達基準で物事を進める。悪魔的強欲さと傲慢さで他の命を苦しめてきた。紛れもなく由々しき事態。
 ──って、おや? 俺達、私達は殺しなどした事無いって表情をしているね。ま、それこそが問題なんだけれどね」

 ルフと名乗った男性は、赤髪を左右に踊らせると溜息をついた。
 無論、溜息を付きたいのも弱音をぶちまけたいのもコッチだ。

「君達は、君達目線での話だろ? 君達が自分勝手に世界に優劣を付け、その上で決めた『殺し』の話。僕は違う、総てを平等に見た上で言っている」

「平等の愛とか? 何を神様らしい事……」

「だから、神だと言っているじゃん。君達を・世界を創ったのは僕だよ」

 なに、何で独り言も聴こえてるの?
 耳よすぎなの? 俺とルフの間は声を聞くには難しく、姿を見るには簡単な中途半端な距離。

 なのに答えてくる気概が気持ち悪い。

「違うな……。これは」

 ある事に気がついた。ルフは声帯を通してではなく、頭を通して話しかけてきているのだと。そうでなければ、一定の質量で声が聞こえるはずがない。
 テレパシーみたいなものだろうか。

「まあ、話を戻すね? 君達は、小さい命を殺したりしてる。端的に言えば君達が、勝手に『害虫・害種』と決めた生き物さ」

 それは、ドブネズミやブラックバスやゴキブリなどと言った生き物の事か……。

「ふむ。中には、反発している顔ぶれもあるけれど、大半は納得したみたいだね? ……宜しい」

「まず初めに、君達の薬指に何か変化が無いかを見て欲しい」

 変化? 言われるがままに両手の平を瞳に写す。

「何だ?左手の薬指の根元が赤く光って……?」

「それは、元々輪廻転生を行うのに必要な器と魂。魂魄こんぱくを繋ぐ聖石。今回は、その聖石を掛けて君達にはゲームをしてもらう」

 依然として、明るい声。
 だが、待ってくれ。輪廻転生を行うのに必要なモノと言った。
 となれば、奪われた場合どうなるんだ?
 ……いや、答えは出していた。奪われた場合、魂と肉体が乖離する。加え、一生生まれ変わる事も無いと言う事か……。

「今、君達が想像した通りさ。それを奪われれば実質的な永遠の死が約束されている。
 じゃあルールを説明しよう」

「一つ、この世界には、君達が想像して産まれた種が蔓延っている。無論、僕がデータを元に作り上げた存在。彼等には命と言う概念が無いから、いくら殺してもいいよ?」

 淡々と、指を折りつつルフは続ける。

「一つ、想像種を倒しフロールと唱えると、その種のランダムなカードが排出される。しかし、簡単に手に入るとは思わない事。当たり前だけれど、負ければ待っているのは死」

「一つ、これから僕が君達に神託する彼女達を武器にして、カードを発動させより強くしてね」

「一つ、ゲネシスと唱える事で、この世界では君達の成長過程等を見る事が出来る。君達は苦労をする事により成長する事が出来る……色々な、意味で」

 色々な意味ッて、説明が雑だろ。しかも、そんな事誰も聞いちゃいないと言うのは周りを見てれば分かる。
 つか、ルフの話自体を聞いてるやつ自体が少ない事態なんじゃねーの。ただ愕然と聞いてる俺を除いてさ。え、何、俺むっちゃ偉いじゃん有能じゃん。

 ッて、違った。俺、赤の他人に話しかけられる程コミュ力ある訳じゃないンでしたそーでした。
 俺みたいなキャラは主人公的な立ち位置には向いてねぇーんだろうな。
 いいし、構わないし、モブキャラ万々歳だし。
 ルフは、自虐ネタを知らずにひたすら説明に興じていた。

「一つ、カードは永続的に使えるが、個々に所有し使えるのは一枚のみ。ただ、生きてゆく上で必要なカードは五枚まで所持可能。
 しかし、例外もある」

「一つ、例外とは君達が戦い、敗者から聖石を奪いフロールと唱えれば、その分の容量が一つアップする。つまり、多くてに入れれば入れる分君達は簡単に強くなれる」

「一つ、しかし。三つの容量を持った人物が、負けたとして、相手が得られるのは一つの容量のみ」


 なるほど、消去法みたいな感じか……。
 しかし、淡々と話しているが、ルフの発言は本当に殺し合いをしろと言っているようなものだ。

「一つ、敗者の聖石を奪い取れる時間は、指から乖離して五秒。その間に手に入れなければ勝者には無駄なものになってしまうから気をつけてね?!」

「一つ、僕の場所まで辿り着けた者には、現世への帰還と神としての権限を使い、願いを一つ叶えてあげる」

「一つ、君達人間は、命を無駄にしすぎた。大切さを思い出しながら奮起するよーに!! そして、最後にコレが僕から君達二万人にプレゼントする天使達さ! さぁ、念じて武器にするんだ!!」

 天高くから舞い降りてくる天使の数は凄まじく多いい。
 だが、それ以上に地上は声で震える。当たり前だ、普通に生活していたのに突然死と隣合わせになれと言っているようなもの。普通の人間なら恐怖、不安の色を浮かべながら臆して戦慄くに決まってる。
 俺だって、まだ十七歳だぞ! 大きな病気もせず、今まで生きて来たと言うのに創造主の意向により異世界に来て、待っているのは死とか勘弁だ。

 次第に他人の興奮は絶頂に達し、逃げようとするものや、ルフに食ってかかろうとする奴らの行動により押し問答がはじまった。さながら大波のそれは、爪先やら肩やら顔やらが至る所に当たりかなり痛い。

 ふざけんなよ、マジで。怪我したらどーすんだよ。はぁ、大声で言えたなら苦労はしない。
 そう、なんて事は無いンだが、俺は注目を集める行動が嫌い……つか、出来ない。あれ、恥ずかしいだけじゃん。だからこそ、窓際で風に当たってるスクールライフが生き甲斐だったのに……!!
 俺が口の端を噛み締め痛みを堪えていると、ルフは鳴り響く鐘の音と共に言った。

「ふざけるなよ、人間。これは僕が決めた決定事項だ。我を崇拝しろだの、崇めろとは言わぬ。だが、その分、自分達の傲慢さ故の愚かさを脆さを存分に味わうが良い。我は寛大ではあるが温厚ではない。ここに居る意を履き違える者共はそこまでよ」

 重鎮足る振る舞いに、俺は偉大さを感じたのは事実。
 この時から理不尽なデスゲームが始まってしまった。
 そして、最後にケロッと表情を変えてルフは言う。

「より、詳しい説明はゲネシスと唱えてヘルプを見てね! 僕の場所に辿り着けた人間が居たのなら、もう一度言うけれど元の世界への帰還と、願い事を一つ叶えてあげるネッ」

いや、待ってくれ。俺はそんな事より言いたい事がある。
「何処のソシャゲだよ!」

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