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ノベルバユーザー162508

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月曜日はいつも憂鬱だった。
昨日、友人である石崎真は結局酒に呑まれ既婚者は〜と管を巻きながら帰っていった。
ただ橘絵理が俺の視界に入り、会話をするようになってからは休み明けの月曜日はそれほど憂鬱ではなくなった。
俺が電車に乗って一駅で橘さんが乗車してくる。
橘さんも俺を見つけると近寄ってきて苦痛だった通勤時間が楽しいものへと変わっていた。
これは橘さんに恋をしているのだろうか?
いやいや、相手は真の言うように既婚者だ。
恋愛に発展する可能性は0ゼロだ。
仕事以外で女性と接する機会のない俺は今までになかったささやかな楽しみを見つけただけだ。
そう自分に言い聞かせて今日も電車に乗る。
一駅遅れて乗ってくる橘さんと世間話をしながら通勤し、今日も元気に仕事にはげむ。

だが、この自分への言い聞かせが全くの無駄になるのは今日の仕事終わりだ。
俺は今日の夜、橘さんに完全に恋をすることになる。
仕事も終わり帰路に着こうとすると駅とは反対方向に見慣れた小柄な女性が見えた。
橘さんである。
どうやら電話をしているようだが様子がおかしい。
泣いている・・・・?
しばらく様子を見て電話を切った彼女に声をかけた。
「橘さん?」
やはり彼女は泣いていたようで目には涙を溜め、鼻も真っ赤になっている。
それでも涙を零さないよう精一杯の笑顔を見せながら返事をする彼女。
「あら川本さん!こんなところでどうしたんですか?駅なら反対方向ですよ?」
それはこちらの台詞だ。
「橘さん、これから少し時間あります?そこのカフェでお茶でもしませんか?」
今のこの顔では電車になど乗れるわけもないだろう彼女にそう持ちかけると、彼女も俺の意図に気付き小さくはいと返事をして俺の一歩後ろを付いてきた。

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