ナイモノネダリ

茶々抹子







昼休みの終わり頃、5限目の授業が始まる5分前。
校内放送が学校中に流れた。

「校内の皆さんに連絡致します。今からの5限目の授業は無しとします。その代わり皆さんは、体育館に集合して下さい。サプライズで、テレビ局の方々が皆さんをお待ちしております。詳しい事は後ほど、お話しますので、落ち着いて体育館へ集合して下さい。」

その放送はいつもとは違い、聞いた事の無い人の声だった。

ざわざわと騒ぎ出す生徒、テレビ局だからって化粧をし始める生徒、体育館へ走り出す生徒。

さまざまだったが、
一方で私はもうすでに体育館の舞台裏で原稿用紙を握りしめ待機していた。





「皆さん、こんにちは。GBテレビ局の宮沢と申します。本日はお集まり頂き、ありがとうございます。少年少女という番組の企画でこの学校に来ました。」

『少年少女』は老若男女問わず、人気な番組でやっぱり生徒は皆んなこの番組を知っていた。
「やばくない?」
「誰か有名な人来てるのかな?」

自分が主役だと言わんばかりに騒ぐ生徒たちを哀れだと思った。

ーあなただけが中心の世界なんて存在しないー

「今から、この本校の女生徒がスピーチをします。内容は私たちも、先生方も、誰も、教えられていません。私は彼女のスピーチに感動する事を期待しております。では、校長先生に代わります。」

宮沢さんはマイクを持っていた手を離し、校長先生に会釈をしていた。

「皆さん、こんにちは。今回は本校の生徒の言動がテレビ局の方の目にとまり、このような形でお伝えすることとなりました。私としては、大変優秀な生徒だと誇らしく思っております。では、拍手と共にお願いします。」




私の企画がはじまる。

今回の目的、それは、
全員の期待を裏切る事。
日本全国に衝撃を与える事。

それと。


彼女に、私という存在を気付かせる事。




番組から連絡が来た5月26日から私は行動をしていた。
「嫌がらせ」から「イジメ」に変える事。

こちら側からイジメをされるように持っていった。
そうする事で私の企画が更に盛大なものになる。

この考えは、案の定うまくいった。

A子の席の横を通るとき、私はA子の机を自然に触って歩いた。するとそれに気付いた周りの女子達は、私の腕を掴んだ。その衝動に、私の腕にその女子の爪が食い込んだ。
そして、真っ赤な血が教室の床に零れ落ちた。

担任の桜井はやっぱり、私に気付いたものの、教室を出て行って、知らないフリをした。
誰も心配する人なんて居なかった。

みんな、笑ってたんだ。

その日から、「イジメ」は更にエスカレートした。


計画通りだった。


しかし、私がスピーチをするとなれば、「言葉」が必要となる。それに悩んでいる時、宮沢さんは1つの提案をしてくれた。

それは、パソコンで文字を打ち、体育館のスクリーンに文字が映し出されるというものである。




準備は整った。

あとは、私の演技力にかかっている。





「では、お願いします。」


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