異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

57話 オークション

俊哉、颯真、リッカそして、明美はオークションハウスにいた。
時は少し前に遡る。
明美を助けた俊哉は厄介事に巻き込まれてた。
明美を助け一段落だと思ったら明美から思わぬことを頼まれる。

 「友達が能力者なんですけど、人拐いに捕まってしまって。今夜のオークションの目玉商品として出品されちゃうんです。初めあった人に頼むことでもないと思いますがもしよかったら友達のことも助けてはもらえないでしょうか?」

独断で決めて予定を狂わせるわけにいかなかった俊哉は二人に相談するために集合場所へと戻ることにした。

 「助けないと…。助けないといけません!俊哉さん!」

 「ダメだ!
今は何よりも優花を優先しなければならない。
いちいち他人のゴタゴタに突っ込んでたら先に進まない。」

 「うるさいです!颯真さん!
人身売買なんて。そんなもの。
そんなもの絶対に止めないと。」

過剰な反応を見せるリッカに皆が圧倒され、納得させられる。
なぜそれほどの反応を見せたのかは謎のままだが。

開催場所、開催時間なの情報を明美からきき、夜に備えた。
夜になるまでにそれぞれが手に入れた情報を整理することにした。

情報を手に入れれなかった俊哉を除き話が始まった。
リッカは、この国の裏路地の治安の悪さや、近頃頻繁に起きている人拐いの事を。
颯真は、この国の王が呼んでいると言うことを。
結果、王が会いたがっていること以外何も情報は得られなかった。

颯真に言われるがまま西の国の王、フルフィーの待つ王室へと向かった。
厳重な審査と多くの兵士からの質問攻めの後怪しいところがないと判断され、俊哉、リッカ、颯真の三人だけが王室に入ることを許された。明美には外で待ってもらうことにし、三人とフルフィーの会談が始まった。

 「わざわざ呼び立ててすまなかった。
ミア姫から直々に頼まれてな。
何やらこれから人身売買をしに行くだとか…。」

どこか砕けた口調ではあるが、その表情には少しの緩みも感じられなかった。
王なのだと知らしめるその表情に、その場にいた三人が一斉に唾を飲み込む。
自分の国で違法行為が行われていることが許せないのだろう。
これから三人が違法行為をしに行くことが許せないのだろう。
フルフィーの顔は、話を進めるにつれ激怒していた。

 「事情はミア姫から聞いている。
人助けなのだろ?
国からいくらか金を出そう。」

そういい兵士に持ってこさせたケースには数えることすらめんどくさいと思えるだけの金が入っていた。

 「ただし条件がある。
この金で三つの人拐い組織と接触してその組織を潰してはもらえないだろうか?」

どうやら、この世界の人身売買の仕組みはオークション形式で人を購入し、その後出品した人拐い組織と対面した後に、けして文句は言わないという契約書を書かされ、それから支払いに入る。という仕組みになっているらしい。

その提案を聞き一番始めに口を動かしたのは颯真だった。

 「フルフィー王、あなたの能力は事象の拒絶と聞いています。
あなたの能力ならわざわざ買い取らず拐われた事実を無かった事にすることも可能なのでは無いでしょうか?」

 「それは無理なのだよ。
拒絶と言っても、大きく因果が絡んでくるような事は拒絶出来ない。物の破壊や生き物の死は拒絶できるが、人に関することは拒絶出来ない。
家が無くなれば新しい家を買うだけ、野良犬や野良猫が死んでも誰も認知などしない。だから、因果には触れない。
だが、人が一人死んだり、いなくなったりすれば、周囲は認知をするし、その人の代わりすら作ることは不可能。」

あまりパッときていなに俊哉に颯真が補足説明をする。

 「認知され、大衆が騒げばそれは大きな因果と変わる。逆に、認知していても大衆が騒がなければ拒絶で無かったことにできる。
その事実を知っている者が少なければ少ないほどちっぽけな因果となるって事。」

その後、王が頭を下げたことがトリガーとなり、颯真の心も変わった。
リッカの反応もあったし、これからの目的がオークションハウスに向かうこと。というのもあって、ついで。という形で颯真も納得した。

簡単にまとめると、ミアの未来予知の能力でここまでうまい具合に進んでいるということだ。

服装をスーツに変え、明美の案内に付いていき無事裏路地のオークションハウスに入ることができた。辺りを見ると黄金の指輪に黄金のネックレス。金を余らせている貴族たちで溢れているのがわかる。
徐々に回りがザワツキ始め、次第にそのザワツキは雑音へと変わる。

 「俊哉、戦闘が始まれば俺はお荷物となる。どうにか君だけで勝ってくれ。」

颯真の言葉が終わると同時にオークションハウスの司会者が現れる。
盛り上がりを衰えないその場の空気はもはや異様でしかなかった。

 「それでは始めましょう。」

司会が始まりの合図をだし場が静まる。

 「最初の一品目はこちら!」

そういい舞台裏から出てきたのは一人の女性だった。明美と同じ年くらいのスタイルいいお姉さんって感じの人だった。
明美が女性を見た瞬間反応した。おそらく彼女が明美の友達なのだろう。

 「出品者はあの有名なメーベル様!
なんとこの女、この見た目にして未使用!
そしてなんと、能力者だ。能力は不明だが護身用、そしておもちゃにはぴったり。
100万から!」

金持ちたちが楽しそうに200万、800万と金を釣り上げていく。
見るに耐えなくなり俊哉は独断で金額を提示する。

 「3億!」

王からもらったお金は全部で10億程度。
三グループから買えばいいだけなので一人3億までは使えた。

 「3億が出ました。もういませんか?いませんね?」

オークション・ガヴェルの音がなりその女性は俊哉の購入品となった。

 「俊哉さん!ありがとうございます。
本当にありがとうございます。」

明美の心からの感謝を聞き少し罪悪感を消すことができた。

 「では、続きまして、出品者はお馴染みオーク様!」

あとは、誰でもよかったので若い女の人を買い取った。

終盤になり、手持ちは5億。
まだ一グループ名前が出てきていない事に気がつく。
俊哉の不快感も、メンタルも崩壊寸前な中、止めの一品が姿を表す。

 「それではお待ちかね。今回の目玉商品!」

 「沙羅さらちゃんが目玉じゃないの!能力者の沙羅ちゃんを越えるなんていったい…。」

明美が反応した。 

 「出品者はもちろんモノケロス様!」

 「やはり出てきたか。」

颯真が反応する。

 「今回の一品は、」

その瞬間俊哉の怒りが爆発した。

 「なんと、あの最強の騎手、リオンだー!」

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