異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

54話 果たせなかった約束

ドロドロとした目に見える殺気が俊哉に絡まる。
いかにも禍々しく、見てるだけで気分が悪くなるようなドロドロとした殺気。

 「おかしいだろ?まだそれを使えるようになるには早すぎる。お前本当に鴻上俊哉かよ?」

ドロドロとした殺気、それが何なのかをわかっている。それを恐れているかのように話すフードの男。
そんな事も気にせず俊哉は確実に一歩一歩ゆっくり優花の近くに歩み寄る。
冷静に優花を見るとあることに気がついた。初めて優花と会った時の水色の髪の姿ではなく、現実世界で会った優花の姿をしていることに気がついた。
だが、フードの男の事もあり、あまり深く考える時間が無いと頭を切り替えフードに意識を集中させた。

  「ごめんね、優花。
もう大丈夫だから。
あいつすぐに倒してくるね。」

気を失って倒れている優花に独り言を話し続けている俊哉を見て、焦って余裕の無いフードの男が俊哉に魔法を放った。

先の尖った氷柱が沢山宙を舞う。
それらが一つ二つと順番に俊哉の頭、首、心臓と的確に急所を目掛けて飛んでいく。
キテラもダスピクエットも動こうとしない。
氷柱が俊哉に当たりそうになったその時。
俊哉を覆っているドロドロとしたものがまるで生き物のように氷柱を飲み込むと、たちまち全ての氷柱がドロドロと溶け初め、ほんの数秒で形を失った。

優花への独り言を終えた俊哉がフードの男と向き合う。その瞬間猛烈な寒気に教われ反射的に距離をとってしまうフード。

俊哉が臨戦体制へと入る。
ドロドロとした物が俊哉から離れ地面に垂れ流れる。
俊哉を中心にし、円を描きながら広がる。
ある程度の所まで広がると、ドロドロとした物の中から数えきれないほどの、木で作られた十字架に縛られた死体が姿を表した。

 「鴻上、てめーが、どれだけそれを使いこなせてるかは知らねえが、やり合うのは今じゃねえ。だから、今回の目的も果たせたし逃げさせてもらうぞ。」

フードの男が逃げようとしたその時。
ドロドロとした物から黒い霧のような物が出て、フードの男を包み込んだ。
視界が霧に覆われる。
少したち霧が晴れるとそこには、夜と同じくらい世界に二つの暁。そしてドロドロとした物から出てきていた、縛られた死体の数々が禍々しく存在する世界に変わっていた。

 「結界なんていつの間に。
そこまで使いこなしてるのかよ?
はー、ただ逃げるだけなのに。
めんどくさい。」

やる気の無い声を出しながら、しぶしぶ力を使うフードの男。
フードの男の回りに神々しい光を放つオーラが出てくる。
強い光を出しながら、フードの男を中心に拡大していき、俊哉を飲み込んだ。
光の威力が弱まり目の前が見えるようになった俊哉の目の前には俊哉の作った結界とは正反対な結界があった。
フードの男の後ろには大きな神殿が。そして、それを回りから囲むように崇拝する人々の山。
俊哉とフードの男の結界が半々でぶつかり合っていた。

先に仕掛けたのは俊哉だった。
フードの男の方へと走りながら踏んだ地面からドロドロとした物を出し、フードの男の方へと伸ばしていく。
ドロドロとした物の中には骸骨のような物や怨念のような物が沢山浮かんでいた。
沢山のドロドロとした物を伸ばしながらフードの男が作った結界のテリトリーに入ったその時。
俊哉の頭上から大きな十字架が俊哉を目掛けて降ってくる。
俊哉の右足に十字架が刺さり倒れる俊哉に容赦なく十字架が降り注ぐ。
勢いよく降ってくる十字架に貫かれ気づけば、俊哉の姿は十字架で見えなくなっていた。

 「そんな、半端な属性で俺の属性に勝てると思ってるの俊哉?
汚物には十字架と聖水だろ。
悔い改めろ。」

俊哉の結界がフードの男の結界に侵食され消えていく。
完全に俊哉の結界が消えたのを確認し、結界を解くフードの男。

 「ったく…たったこれだけで手間かけさすなよ。」

そう言いながら俊哉を無視し、優花の方へと向かう。
奥から聞き覚えのある声が多数聞こえる。
振り向くとそこには颯真、鈴華、海斗、リッカがこちらに向かっているのが見えた。

 「俊哉!あんた死んでないでしょうね!
まだ、私に黙って勝手に出ていった事許してな…。」

鈴華が血だらけの俊哉を見て言葉を止める。
リッカが回復の能力を使おうとするが十字架によって拒絶される。
それを見たフードの男が俊哉に刺さっていた十字架を消した。

 「すまない。それで回復の能力が使えると思うよ?」

リッカがお礼を言い能力を使う。
その異様な光景を見て鈴華が動く。

 「あんた、どういうつもりよ?
俊哉を十字架でめった刺しにしたのはあんたでしょ?
なのにどうして回復能力を使わせるの?
あんたの狙いはなに?」

笑いながら答えるフードの男。

 「狙い?
強いて言うなら、破壊だよ。
それを成し遂げるために鴻上にはここで死なれたら困るんだよ。
お前らが来ることもわかっていた。だから、死ぬギリギリまで殺った。邪魔されたら困るからな。」

そう言い、フードの男は優花に向かい何かを投げつけると山奥へと消えていった。
なにもせずただ見ていただけの颯真に鈴華が怒鳴る。

 「颯真、あんた何で見てるだけなのよ。俊哉が殺されかけたのよ?何でやり返さないのよ!それに海斗!あんたもよ。」

颯真の額には汗が滲んでいた。

 「あの人には今のメンバーでは俊哉以外勝てそうな人はいない。その俊哉が負けたってことは、俺らの誰がいっても負けるって事だよ。」

何時間たったのだろう。辺りはすっかり明るくなっていた。
リッカのおかげでなんとか死なずにずんだ俊哉。

 「いやー、さすがに今回は死ぬかと思ったね。」

笑いながら話す俊哉に颯真が優花の無事と奥の荒らされていないお花畑にいることを伝えた。重要な部分を伝える事はせず。
しょうがないな。という顔をする鈴華に一礼して優花の元へと走る俊哉。

 「こっちにもお花畑あるんだね。」

 「起きられたのですね。よかった。」

そう言い摘んだ花束を渡す優花。

 「すいません。これくらいしかお礼ができないくて。」

 「いや、いいよ。これだけでも嬉しいよ。」

「あの!」二人が同時に話を繰り出す。
話したいことが沢山有ったが、優花に譲ることにした。

 「先にどうぞ!」

もじもじしながら話を始める優花。

 「颯真から聞きました。助けてくださったみたいでありがとうございます。
あの、もしよかったらお名前聞いてもよろしいですか?
あ、あと…。よかったら、友達になってくれませんか?」

その瞬間俊哉の中では何かが砕けた。

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