異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

53話 二人の俊哉

 「あのフードの男はいつか必ずお前の邪魔な存在となる。あいつの目的はこの世界の破壊を止めること。そして、あるやつの願いが叶ってしまう世界を作ること。」

矢澤やざわの言葉は一語一句全てに重みがあった。そのくらいに真剣で怖い顔をしていた。
まるでフードの男がどういう奴なのか、フードの男の狙いが何なのかをすべて知っているような。

 「そろそろ時間が無くなってきた。
今後してほしいことだけ言う。
パンドラの鍵を今すぐに折れ!あんな物開けてはいけない。
次に!」

言いかけて矢澤の姿は消えた。
辺りの景色が変わる。また白い空間へと戻った。
目の前にはダスピクエットがいた。

 「無理矢理切ってしまってすいません。
俊哉さん。精神世界でのお話もいいですけど、お話している間も世界の時間はゆっくりと動いているんです。
このままですと、俊哉さんの体が回復不可能な位にまで傷ついてしまいますにで切らせてもらいました。」

ダスピクエットが珍しく慌てていた。
俊哉の体はそれほどまでに傷を負っているのだろう。
だが、今の俊哉には自分の体よりも知らなければ、知っていなければならないことがあった。

 「ダスピクエット、体がヤバイのはわかった。
助けてくれようとしてありがとう。
ただ、もう一度、もう1人の俺に会わせてくれないかな?
まだ聞きたいことが…。」

少し戸惑いながら、何かを考えているようなもじもじとした動きを見せると頬を両手で叩き真剣な顔でこちらを向いた。

 「わかりました。俊哉さんの体は私が何とかします。ただ、そんなに長くは持ちません。なので、できるだけ急いでくださいね。」

再び矢澤との精神世界へと戻り俊哉は後悔した。いや、それ以上にダスピクエットへの憎しみを持った。
ほんの数分。たったそれだけの時間で矢澤は消えかけていた。

 「おい、消えるなよ!
まだ聞きたいことがあるんだよ!
踏ん張れよ!」

俊哉がいくら言っても矢澤の消える事実は変わらなかった。
足から消えていき、着々と進む。
残るは 顔だけとなったその時だった。

 「鴻上こうがみ!けして誰も信じるな!
自分のパートナーでもだ。
世界の誰も信じるな。
全てが敵だと思え。
常に自分の考えが正しいと思え。回りに流されるな!」

一言、自分の意思を継いでいる者を残したといい消えた矢澤。

酷い痛みが体を突き抜ける。
異世界に戻って来た。
自分の体の状態を確認する。
体の至る所から血を流し服は真っ赤に染まっていた。
自分の傷を確認することで能が現状を理解したのだろう。
今までと比べ物にならない程の痛みが再び俊哉の体を襲う。
悲鳴を上げる俊哉を見て上機嫌になるフードの男。

 「なんだよ。あいつは消えたのか?
くそ弱いな。
あんな弱さでよく異世界破壊ができたものだ。」

悲鳴を上げる俊哉を見てため息を一つ突き。

 「お前はここで終わる。
これは確定した。
もう十分苦しんだろ?
死んで楽になれよ。」

フードの男が死神のアルカナを握りしめ俊哉に向ける。

 「少し黙れよ。」

そういうと、フードの男は俊哉の両腕、両足の骨をアルカナの能力で砕いた。

俊哉の悲鳴が収まる。痛みがない。
死に際の人は痛みと言うものを感じないと聞く。
俊哉は異世界に来て初めて死に際に立った。

もはやいつ無くなってもおかしくないうっすらとした意識の中、俊哉はフードの男の話を聞いた。

 「お前この異世界の壊し方知ってんの?」

俊哉は、首を横に傾ける。

 「お前この世界がなくなったらどうなるか知ってんの?」

再び首を横に傾ける。

 「お前パンドラの箱がどういう物なのかも知らないんじゃないの?」

俊哉は、首をゆっくりと下に傾ける。

 「もういいや。お前この世界にいる意味ないよ。」

再びフードの男が死神のアルカナを握りしめる。

 「お前を殺した後ですぐに優花も殺してやる。会いたかったんだろ?俺からのプレゼントだ。精々あの世で楽しんでろ。」

俊哉の目に殺意が戻る。
フードの男はそんな事気にもせず死神のアルカナを使う。
これで俊哉は終わりだ。そう思った瞬間、フードの男と俊哉の間に稲妻が走る。

 「颯真か?」

フードの男が辺りを見渡していると稲妻は勢いを更に強める。
何が起きているのか理解できていないフードの男が戸惑っていると稲妻が徐々にフードの男へと近づいていく。

 「やばい!このままだと競り負ける。
強くなったな!颯真。ここまで俺と対等に競り合えるなんてよー!」

余裕を咬ましていたフードの男が体制を変え真剣に競り合う。

稲妻は更に威力を強める。
確実に、少しずつ、ゆっくりと、フードの男へと近づきながら。

砂埃と共に稲妻が収まる。
フードの男が競り合いに負け左腕を無くした。

 「くそが!颯真じゃねえな!俺があいつに競り合いで負けるわけがねえ。だとしたら誰だよ!」

近くにあった人が隠れれそうな大きな木も岩も全て爆破の能力で壊したが誰1人出てくることはなかった。
イラついたフードの男が、能力で辺り全体をマグマに染めようとしたその時、フードの男の能力が消された。

 (こんなことできるの1人しかいねえ。
でも、そんなはずねえ。
死にかけの人間にアルカナで競り負けるなんて事があるか?)

恐る恐る俊哉の倒れていた方を見るとそこには俊哉の姿はなかった。
とっさに周りを見るといつの間にか死にかけていた俊哉がピンピンとして優花の側にいた。

 「てめぇ!さっきまで死にかけてたよな?
何で平気な顔して立ってるだよ?」

 「それはね。」
聞き覚えの有る声が俊哉の影から聞こえる。

 「魔法で回復したのです。」
キテラと共にダスピクエットが俊哉の影から出てきた。

キテラがいたことに少し驚きはしたがすぐに顔色を変える俊哉。

 「助かったよ、ダスピクエット。
キテラがいる理由が全くわからないが、まぁ置いとこう。」

理解できない状態にわめき始めるフードの男。

 「黙れよ。フード!
てめぇ、とは今話す気ねんだよ!
静かにしてろ!
じゃねえと…。」

更にイラ立つフードの男。

 「なに舐めてくれちゃってんだよ?」

フードの男が優花に向かって氷の魔法を放つ。
その魔法が優花に触れるより早くキテラに炎の魔法で対処をさせた。

 「また優花を狙って…。」

ドロドロとした目に見える殺気が俊哉を覆い被る。

 「おい、フード!
それ以上優花に手を出してみろ!
殺すぞ!?」

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