異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

52話 裏からの支え

 「おいおい、どうしたよ?
てめーも異世界破壊までは行ったんだろ!
それならある程度の力は付いてるはずだ!
やっぱりハッピーエンドじゃあダメだってこったろ。色ボケやろうが!」

フードの男の攻撃が思っていた以上に強力で手も足も出すことの出来なかった。
確実な実力の違い。
同じ能力を使っているはずなのに勝てる気がしなかった。
魔法においてもそれは言えた。

フードの男が氷の魔法を使う。
後出しでキテラと共に炎の魔法を使うが…。
物理の原理では有利に立っている。
氷も水も炎で熱してやれば蒸発し気体へと変わる。
だから、相手より強い力を込めて魔法を発動したはず。
そもそも、こっちはキテラの力も入れて二人分の魔力を使ってるんだ。

入れ替わった俊哉とキテラの魔力がフードの男よりも弱い事を意味した。
フードの男が放った氷の魔法で地面は氷河期のように凍っていき、草木を殺した。
対して、入れ替わった俊哉とキテラは大地も燃やし尽くす程の強力な炎を生成したにも関わらず競り負けた。
入れ替わった俊哉の立っている地面を徐々に凍らせていく魔法。
ついに入れ替わった俊哉に到達すると思われたその時。

押し飛ばされた。
魔法の影響がない地面まで。
誰に?誰が?
目線を元立っていた場所へと戻す。
赤い綺麗な髪。よく知っている。
凍っていくキテラを見ながら発狂するしかなかった。

笑顔をこちらに向けながら凍ったキテラに身体強力の能力をつけたフードの男が強力な蹴りを入れた。
復元不可能なほどにバラバラとなったキテラ。
凍ったキテラはフードの男により殺されてしまった。

あれ?どこで間違えた?
何を間違えた?
どこで選択を間違えた!
タイミングか?準備か?心構えか?
いや、違う。そんなんじゃない。
そう。そんな事じゃない。ただ単純に劣っていたんだ。あいつより全てが劣っていたんだ。ただそれだけ。はっきりとしていて完璧な回答を俺とキテラは導けなかった。二人ならと。戦う前から負けていた。

自問自答をしているとフードの男が話始めた。

 「今にも壊れそうだな?
そもそも世界を救うために七魔女と一緒にいることを選んだのが間違いなんだよ。
俺らの運命は決まってんだよ。
俺らのファートゥムは異世界破壊だ。異世界救済じゃねんだよ。
てめえらじゃ俺は止められねえよ。」

フードの男が死神のアルカナを出し、崩壊寸前の俊哉の体に向かって投げつけた。
俊哉の体にアルカナが当たると同時に能力が発動する。

暗い。いつもなら入れ替わった後の景色は全部目を通して見れるはずなのに。
いつもとは異なる交代に戸惑う俊哉。
どうしたものかと考えていると視線の先から一人の男がこちらに向かって暗闇を進んでいるのが目に入った。

 「よお、俊哉、久しぶりだな。いつぶりだろうな?」

その声、その喋り方。
俊哉がピンチになると助けてくれた謎の男だった。
驚いたことに、顔は確かにあるのに顔を見ようとすると視界がぼやけてしまう。

 「お前は一体…。」

俊哉が謎の男に話しかけると男は指パッチンをし暗い空間を一瞬にして草原の景色に変え机と椅子、そしてお茶を用意し座るように言った。

 「お前には話さなきゃいけないことがある。俺が消える前に。」

男に言われるがまま椅子に座りお茶を飲みながら長い話を聞くことにした。


これは男の話。
謎の男が体験した話。

何の能力も持たない普通の男の子がいた。
そいつは突然夢を見るようになった。
暗い空間の中で女の子に、一方的に話しかけられている夢を。

 「ちょっと待てよ。お前も俺と同じって事は…。異世界人なのか?」

 「まぁ、黙って聞けよ。」

男が話を続ける。

何度か見ているうちに話ができるようになった。
そして、異世界破壊と言う使命を託され異世界へと連れていかれた。
その使命を託してきたのがキテラだ。

何か言いたそうな俊哉を黙らせ再び話に戻る。

俺は異世界を頑張ってこなした。
だが、結果は散々だった。
あきを目の前で殺され。
みあと仲良くなることができず4カ国の王と敵対することになり。
仕方なくリオンを殺し、リオンの代わりに黒魔術師団を潰した。
お前の世界では、あきが生きているから優花はまだ生きているが。俺の世界は、あきが居なかったから優花は殺されてしまった。それにより殺しの重圧や心の支えを失い闇落ちしてしまった。
そこからは力を振るう度に世界を壊していき最後は全部無くなったよ。
全部無くなった俺に残ったのは契約したキテラのみだった。
だから俺は、キテラに頼みやり直すことにした。キテラの人脈を使い。

 「もう誰も殺されないようにするために。」

その時の表情は見えなかったが、声でわかった。悲しみと、苦しみ。そして怒りと憎しみがごちゃごちゃに混ざり合った。
今にも全てを壊したくなる。
それくらい絶望した声だった。

 「ちょっと待てよ。やり直したって。」

男がため息を一つつき答えた。

 「やり直すなんて馬鹿げた能力を持っているのは一人だけだろ。」

俊哉の口から勝手に名前が出てきた。

 「七魔女の一人。
ダスピクエット。」

うなずいた後特に男が話を始める事はなかった。

 「あんたがどれだけ苦しんだかは俺にはいまいちわからない。けど、これだけは言わせてほしい。俺のためにありがとう。」

 「そうだ。お前が経験した事。そして出会った人間。それらが俺と一緒何だがお前は一体何者なんだよ?」

男はコップのお茶を全部飲み答えた。

 「答えを言う必要はあるのか?
もう分かっているだろ?
俺が誰なのか。
俺が何者なのか。」

つばを飲み込み考えすぎだと言う自分の考えを殺し答えた。

 「お前は俺なのか?」

男の顔にあったモザイクが消える。
はっきりと顔が見えるようになった。そして自分の考えが間違っていない事を確認した。

 「矢澤やざわ 俊哉だ。よろしく。」

男は自己紹介を終えると本題に入った。

 「俺の経験は正直どうでもいい。
俺が俊哉だと言うことを気づかせるためのものだからね。
ここからが本題だ。この世界の俺。
あのフードの男を俺の代わりに倒してほしい。
頼む。鴻上こうがみ 俊哉」

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