異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

48話 彼女への思い

 「カッコつけて待ってろって言ったんだ。こんな愚か者な今の俺と会っても優花は喜ばないだろう。それに優花が求めてる俺は強くてカッコいい俺だ。優花の理想とはかけ離れてるよ。」

俊哉の言い訳は終わらなかった。耳にタコができるんじゃないかと心配するくらい続いた。

 「俊哉君!」

俊哉の言い訳を聞き飽きた颯真は俊哉の腕を掴むとそのままバグローズの外へと向かった。

颯真はバグローズの外に出ると俊哉を投げ飛ばした。尻を着いた俊哉にアルカナを翳すかざすと勝負を仕掛けた。

当然乗る意味が無い俊哉は颯真の事を無視して宿に戻ろうとする。
それを見た颯真は俊哉を脅し始めた。

 「俊哉君、君勘違いしてないかい?俺は元黒魔術師団の一人だよ?元は敵対していたんだ。信用してるのか何なのか知らないけど、ちょっとした事ですぐに裏切ることもできる。そう言う薄い仲なんだよ。君が勝負に乗らないのなら俺は一人ずつ君の仲間を殺していこう。まずは弱そうなリッカから。」

頭にきた俊哉は自分でも気づかないうちに、颯真の胸倉を掴んでいた。

 「少しはやる気になったかな?」

胸倉を掴まれながら微笑む颯真。

 「俺の前で仲間を殺してみろ。簡単には殺さんぞ!」

殺気をバンバンに出す俊哉に向かって容赦なく死神を使う。
とっさに距離を取りながら愚者のアルカナで無力化する。
無力化されたことを確認するとすぐさま自分の能力で俊哉の左肩の骨を破壊した。
痛みを必死に堪えながら颯真の頬を右手で殴ると衝撃で体が傾いた颯真の胸倉を掴みそのまま左に倒し、そのまま勢いに任せ颯真にまたがりマウントを取る。
マウントを取られた颯真は、俊哉に顔を殴られながらも、左腕を必死に伸ばし俊哉の左肩を掴む。そのまま出せるだけの力で握り締めた。
痛みがさらに強くなり我慢できなくなった俊哉が悶えもだえだす。
体制を整えやすくなった颯真はマウントを解くと俊哉を蹴っ飛ばし殴りにかかった。
俊哉は即座に魔術師のアルカナを使い颯真の拳を全て交わす。
颯真はアルカナが変わったことを確認するとタイミングを見計らい死神を使う。
アルカナが見えたと同時に俊哉も愚者に変え無力化する。
アルカナは囮だと言わんばかりにアルカナを愚者に変えたと同時に強烈なアッパーを繰り出す。
反射的によけた俊哉が颯真の右脇腹に拳を決める。
膝を着き呼吸を整える颯真に容赦なくたたみかける。

突然精神世界へと誘われる俊哉。
目の前には白ワンピースをきた女の子。
アルカナが変化し始めたのだろう。

 「あなたはピエロ。
人を笑わす道化。
道化は至るところで人を笑わす。」

少女の口調が変わった。

 「人と関わることで人となりを学びました。
これからは貴方が教えてあげてください。
アルカナが進化しますよ。魔術師から女教皇へ。」

呼吸を整え終わる前にたたみかけたい俊哉はアルカナを変えた。

颯真にはっきりと見えるように愚者のアルカナをかざしアルカナを一回転させアルカナを女教皇に変えた。

 「この短時間で更にアルカナを進化させるとは。まったく…。」

感心しているのか、呆れているのか。颯真はため息をすると優しい顔になった。

女教皇のアルカナを発動した瞬間俊哉の殺気が消えてしまった。

 「今の君なら解るはずだよ。」

敗けを認め戦う意思がなくなった颯真が続ける。

 「女教皇の能力でバレちゃったね。全部。」

反応にこそ困ったが表情はしっかりと優しくなっていた。

 「わかったよ。颯真さん。全部。
あんたは不器用だ。」

 「これ以外にいい方法はあったかな?」

笑いながら聞いてくる颯真に何も答えることができなかった。

 「女教皇その能力はどんな小さな伏線からでも真実に結びつける。颯真さんの言いたいことは全てわかった。でも…。」

颯真が怒鳴り出した。

 「優花が本当に強い君しか求めてないなら能力を奪われて異世界にすら行けなくなった君の前に現れるはずがない。
なのに優花は現れた。それは、強い弱い関係なく君との関わりを消したくなかった。そう言うことだろ!」

 「つっ…。」

 「君は会いに行くべきなんだ。会わないといけないんだよ。
そして安心させてあげてくれないかな。
俺にはできなかったから…。」

そう言った颯真の顔はとても悲しくて、虚しかった。

 戦意を失った二人は宿に帰ることにした。
お互いボロボロだったため肩を貸し合いながらゆっくりと帰った。
しかし、その間会話が始まることはなかった。

次の日になりボロボロになった二人を見てリッカが治癒の能力を使ってくれた。
治癒能力で怪我が完全に治るまでの間今後どうするのかを決めることにした。

 「さて、今後だけど西の国に行こうと。」

鈴華が提案してる。颯真と目が合い少し気まずくなる。
こんな状態で言いたくない。私情なんて言いたくない。
そう思っていたら、勝手に口から言葉が出ていた。

 「私情って何よ?」

鈴華が問い詰めてくる。
颯真がこちらを見つめる。
逃げ場なんてない。

  「会いたい人が!
いや、会わなきゃいけない人がいる。
だから…。」

やはり私情を持ってきたのは間違いなのだろう。
鈴華が少し苛立っているのが解る。

 「あんたねぇ、会いたい人がいるなら昨日会いに行けば。」

苛立っている鈴華を止めたのはなんと、海斗だった。
何かを察した様子の海斗がこちらに笑みを浮かべながら鈴華を止めに入る。
リッカも一度会ったことがあるからだろう。
優花だと察し鈴華に街を回ってみたいと提案し始めた。
颯真は行ってこいと言わんばかりの顔をこちらに向けていた。

(皆が俺のためにここまでしてくれたんだ。)

鈴華に謝罪をし、優花の元へ走っていった。

優花に会いに行こうと街を走っていると後ろから誰かに鈍器のような固いもので頭を叩かれ気を失ってしまった。

目を覚ますと目の前にはダスピクエットがいた。
その瞬間俊哉は察した。
今回の異世界生活はここまでなのだと。

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