異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

47話 二人目の仲間

長い道を歩くことになった。 否!
今回は違った。鈴華、海斗、俊哉だけならいつものようにバグローズまで歩いていただろう。だが、今回は颯真と言う最高の仲間もいた。計画的に馬車を乗り継ぎバグローズまで向かう。
馬車はタクシーと同じような仕組みで、行きたい所までにいくらかお金を出さなければ乗れない仕組みになっている。たまに商業をしている人の馬車に乗せてもらいタダで乗ることもあるが基本はお金がかかる。それ故鈴華は馬車を嫌い自分で歩いて向かうことにしている。

だが、颯真のおかげで、最小限の値段でバグローズまで行くことができた。
バグローズまでにはいくつか山を越えなければならないのだが、山の近くには必ず馭者ぎょしゃがいる。なので越えられる山は自分達で進んだり馬車と遠回りになってしまう所は自分達で歩き近道したり、消しても良さそうな山は死神の能力で消したりと、とにかくできる手を全て使い安く済ませた。

バグローズに着くと驚いた事があった。
颯真は元黒魔術師団の一人だったこともあり街の中では騒ぎになるのではと思っていたが全くそうはならなかった。
むしろ歓迎されるほどだった。

挨拶にリオンに会いに行ったとき知ったのだが、どうやらミアちゃんが手回しをしてくれたらしい。
恐るべき姫だと思ったよ。
それと、もう一つ。未だに、あきが戻ってきていないと言うこと。

何事もなくバグローズに一泊し次の日になると、鈴華のいつもの作戦会議が始まった。

 「さて。早速だけど、どうやって仲間にするかを考えましょうか。」

四人で頭を絞り出せるだけの案を出した。
普通に頼む。脅して仲間にする。誘拐。
いろんな案が出たが、やはりリッカは子供と言うこともあり簡単な理由では集落の皆が納得しないだろう。と言う答にたどり着く。

結論行ってみないとどうしようもない。ということになり、とにかく会いに行くことにした。

俊哉のうろ覚えの記憶を頼りに進むとどうにか半日を使いリッカと会った集落にたどり着いた。
集落に着き出迎えてくれたのはなんとお目当てのリッカだった。
満面の笑みを浮かべながら手を振り、小走りで走る彼女を見て可愛いと思ってしまった俊哉はロリコンじゃないぞ!と自分に言い聞かせた。

積もる話が有るとの事で、その日は集落に一泊しその話を聞くことにした。
大抵の話はそんなに重要ではなかった。リッカの嬉しかったこと。リカの件以降の出来事を聞いていただけだった。
ただ一つ気になったことがあった。それは最近夢を見るようになったという話だった。

普段なら、夢の話なんて正直気にするような事でも無いのだが、今回はそうは言ってられなかった。リッカが最近見ている夢は、白いモヤのかかった人が話しかけてくるという内容だった。
そんな夢かよと思う人はいるかも知れないが俊哉を含める四人にはどう考えてもアルカナ関係にしか聞こえなかった。

鈴華が口を開く。

 「白いモヤ。ねえ、リッカちゃん。あなた私たちと一緒に冒険する気とかない?一緒に来てくれたらそのモヤの正体わかるかも知れないわよ。」

ますますリッカが欲しくなる鈴華。
回復役を求めてきたらアルカナ所持者になりそうな人だのだから当然だろう。
もしアルカナ所持者とならなくても回復の能力を持ってるだけで貴重な存在ではある。
どう転んでもプラスにしかならない。

少し間が空いたが、リッカの口から出てきた言葉は意外なものだった。

一泊し集落の人達に別れの挨拶をし、再びバグローズに向かうことにした。
四人と一人の少女と共に。

意外にもリッカは簡単に付いてくることを選択してくれた。
元々集落から出て外の世界を見てみたい。という願望があったらしく、子供一人で魔物もいる危険な集落の外には行かせられないと言う大人たちを納得させるような言い訳がやっと出来たらしい。颯真のような大人の人が一緒に居てくれるならと理由で集落の大人達も賛成してくれた。

こうして簡単に目的を話してしまった四人は新たにリッカを含め次の目標を決めることにした。
何個か案が出てきたが、リッカのこともあったのでこの際とアルカナ所持者を集める旅をすることにした。

 「俊哉は東と西の国には行ったこと無いのよね。」

鈴華が唐突に質問してくる。
その質問に肯定すると鈴華は話を続けた。

 「することもないし行ってみない?
もしかしたら新しいアルカナ所持者と会えるかも知れないし。」

何かを言いたそうな颯真が少し口を開けたが何も言う様子はなくそのままスルーとなった。

バグローズについた頃には日も落ちかけていたという事で今日はそのまま一泊することとなった。

ちょうどその日は寝付きが悪く全然寝れない俊哉は夜のバグローズを歩いていた。
いつもとは違う雰囲気のバグローズ。
街灯が光輝き、人が一人も歩いていない静な街。いつも見る街とは全く違う風景に少しワクワクしていた。

いつも歩く道をいつもとは違う気持ちで歩いてくると後ろから颯真の声がした。
振り替えると颯真がこちらに向かって歩いてきているのを見つけた。
どうやら颯真も寝付けなかったらしく二人で少し街を歩くことにした。

 「俊哉君、その…言いづらいのだけど…」

そう話を始めた颯真から思わぬ人物の名前が出てきた。

 「優花とは会わないのかい?」

 「どうしてあんたが優花を知ってるんだよ。」

突然の事で少し警戒してしまった俊哉は申し訳無さそうに聞き直す。

 「俺と優花は幼馴染みたいなものでね。優花は昔からよく一人でいる性格だったから友達と言える存在が少ないんだよ。今でこそ明るくなったが、昔はもっと暗くてね。君をあのお花畑に連れて行かせた理由は優花の友達になって欲しかったんだよ。君なら仲良くなれるって知っていたからね。」

俊哉は少し戸惑ったがすぐに状況を整理し返事を返した。

 「颯真さんが何で俺を優花と会わせたのかは正直まだよくわかりません。でも、会わせてくれたことには感謝してます。優花には何度助けられたか。彼女がいなかったら今の俺はいない。そう思えます。」

 「じゃあ、優花と。」

そういいかけた颯真に頭を下げる。

 「すいません。まだ今の俺には優花と会う資格なんて無いんです。今のこんな無力で、すぐに自惚れるバカな俺には。」

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