異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

45話 スカルⅦ

海斗の立っている位置をスタートとし、徐々にマグマと化していく草原。ほんの数秒でマグマに侵食される草原に立つリーゴが能力を使い自分の回りのマグマを能力で消滅させる。
リーゴの立っている位置を通過したマグマは     勢いを殺すことなくモノケロスの立っている位置をマグマへと変える。
モノケロスの靴にマグマが当たりそうになった瞬間、危険を感じたアケルナルが能力を使う。
モノケロス、アケルナル、カノープスの三人は半透明となりマグマと化した草原に立っていてもなんともない体へと変わる。

異変に気づいた海斗が無意味なことをしたとこ絶望していると、しぶしぶ三人が引こうとする。

 「待て!モノケロス!どこへいくつもりだ!勝負はまだついてないぞ!」

リーゴが引こうとする三人を止めようとするとモノケロスが一言だけ言いリーゴ達を無視して引いていく。

 「この能力を発動した時点で勝負はついてるよ。この状態になったら俺らはお前に攻撃を与えることができないし、お前らも俺らに攻撃を与えることができなくなるからな。」

引いていく三人を見、気が緩む海斗。
修行していたとはいえアルカナに力をいれ続けた経験のない海斗に疲れと、全身が動かなくらる疲れ気を失う海斗。
海斗が気を失うと同時にマグマと化した草原は元の、寝転びたくなるような草原へと戻っていく。

全体が草原へと戻ったことを確認したリーゴと鈴華は、急いで海斗の元へと駆けつける。
怪我がない事を確認し、気絶しているだけとわかると、二人は黙ってライアンの家へと海斗を連れていった。


ライアンの登場によりなんとか危機を乗り越えた俊哉。

 「まさか貴方が生きていたなんてね。墓まで作らせて…。そんな大掛かりなフェイクなんてして、いったい何を企んでるんですか?」

シモンのしゃべり方からして、どうやら二人は知り合いらしい。

シモンの質問を笑いながら誤魔化すライアン。その反応を何度見たのだろう。その誤魔化しに何度腹を立てていたのだろう。
シモンの表情が徐々に曇っていく。
その顔はあまりにも殺気が剥き出して気圧されてしまう位だった。

 「ライアン!あんたはいつもそうだった。肝心なことは笑って誤魔化す。どうしてもいつも言ってくれないんだよ。」

 「すまんな。」

シモンが続ける。

 「大罪の魔女達をパンドラの箱に封印する時だって、あんたは何も言わずに出ていった。それから少し立ち、あんたが死んだことを知りワシは…。そんなにワシは信用ならんのか?ライアン。」

ライアンに熱く語り掛けているシモンの目には少しキラキラした光が見えた。

 「ワシは死んだよ。」

 「目の前に居るではないか!」

そんな少し悲しい会話をしていると。シモンの連れてきた兵士の一人が痺れを切らしたのかライアンに向かって剣を片手に突進し始めた。
それを見た他の兵士達が続くように突進し始める。

 「やめんか!そんな命令は出してはおらんぞ。正員止まらんか!」

シモンが怒り口調で兵士達を止めようとする。
しかしシモンの声など聞こえていないかのように命令を無視し続ける兵士達。
ライアンもシモンの連れている兵士だからだと、剣が当たるギリギリまではなにもしなかった。
ライアンが死神のアルカナを使う。
シモンの連れていた兵士が一人、また一人と消滅していく。

シモンの必死の呼び掛けが続くが誰も聞こうとしない。その間も一人また一人と兵士達は消えていく。

ほんの4、5分の事だった。
シモンの叫びと、ライアンの申し訳なさそうな顔。一人一人消えていく兵士。
そんな、奇妙で、不思議で、笑ってしまうような、鳥肌が立つほど、見るに耐えない時間が続いた。

シモンの後ろには最終的に一人の兵士が残っていた。

目の前で沢山の兵士が意味もわからず死んだことにより何かの能力だと察する。
残っていた一人の兵士を自分の近くに連れてきて警戒をする。

辺りを見渡しそれらしき人物がいないことを確認すると警戒を解き再びライアンと話始める。

 「ライアンいったい今のぼ…?」

口から血が吹き出てくる。何が起こったのか理解できないシモン。顔を少ししたに向けると剣のような物が刺さっていることに気がついた。
ゆっくりと体力を振り絞り後ろを振り向くと残っていた兵士がシモンの体に剣を指していることがわかった。

喋ろうと口を明けた瞬間その兵士が話始めた。

 「どうして?とかそんなお決まりな台詞言わないでくださいね。他の台詞なら聞いてあげますよ。つかさぁー、一人残ってる兵士とかフラグバンバンに立ってんのによー、どうしてそんな危険なやつ近くに置くのかなー?」

なめた口調で話始める兵士。
シモンが倒れたのを見ると突如鎧を脱ぎ始めた。
着ていた鎧を脱ぎ終わると軽くジャンプして挨拶を始めた。

 「俺の名前は山寺 達人たつとと言います。」

チャラチャラした男は軽く挨拶するとすぐに仕掛けてきた。

 「いやー、俊哉が居るって聞いたからわざわざ兵士に化けてまで来たけど、当たりだったは。ねえ、俊哉、死にたくない?」

その瞬間俊哉の心に使命感が生まれた。死ななければならないと言う使命感が。
地面に転がっている沢山の剣。気付けば、どの剣で自殺しようか迷っている自分がいた。

意識はあるのに体が言うことを聞かない。
剣をひとつ選ぶと自分の腹に剣の先を押さえつける自分。
じわじわと、ゆっくりと、確実に。
ライアンが急いで俊哉の拾った剣を消滅させる。
それを見た俊哉が再び剣を選び始める。
その異様な光景を見てライアンが達人に向かい死神を発動する。

 「待った、待った。今殺すのは得策じゃあないぜ?俺の能力、指導者は発動も解除も俺の言葉がないといけないからな。今俺を殺してもそいつにかけた能力は解除できねえぞ?」

その間にも自殺しようとする俊哉。
少しだけでも意識が戻るのではと考えたライアンは半分掛けで俊哉を殴り飛ばす。

 「ライアンさん!」

掛けが成功した事を確認すると急いで愚者を使うように命じた。

 「おい、おい、おい!愚者なんて聞いてねえぞ。坂井さんそんな事言ってたっけなー?」

 「俊哉くん今のうちに逃げろ。時間は俺が稼ぐ。」

達人がふざけている間にライアンは俊哉を逃がそうとした。が、俊哉はライアンの言葉を聞いてくれない。
時間がないライアンは俊哉に怒鳴り散らす。

 「今のお前には無理だって事がどうしてわからない。そこにいられると全力を出すのに邪魔だって言ってんだ。だから、消えろ。」

俊哉は察した。たった数日だがライアンと過ごし何となく性格は理解した。
こんな口調で話す人じゃない。
それくらいヤバイんだと。

俊哉は自分の弱さを再び実感しながら振り替える事なくその場をあとにした。

 「さて、達人とやら。本気でやらせてもらうぞ。」
ライアンの回りから黒いオーラが出る。
近くの木がそのオーラに触れると同時に消滅していった。

 「アルカナを纏ったか?」

達人が楽しそうに笑っていた。

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