異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

38話 水の都

 「おい、どこにいるんだよ。」

何かを探す俊哉。

 「俊哉、そっちにいた?」

鈴華が聞いてくるが何も見当たらない。

 「いや、みてないよー。いったいどこにいるんだよ。リーゴは。」


時は数日前に遡る。

あきとの戦闘を終え海斗との修行も果たした俊哉はパンドラの鍵を持つことを許してもらった。
鈴華が言うには、愚者のアルカナを持っている俊哉が持っているのが一番安全とのことらしい。

 「俊哉はその愚者のアルカナを誰からもらったのよ?」

突然の鈴華の質問に考えなしで答える。

 「えっと、リーゴってわかるかな?黒魔術師団の。そいつがくれた。」

 「はぁーーーーーーー!」

出た!!
久しぶりの鈴華のオーバーリアクション!

 「あんた、スカル・リーゴって言ったら黒魔術師団隊長格の一人じゃない!」

 「あいつ隊長格なんだ。通りで強いわけだ。」

一人で納得していると、混乱した鈴華にいろいろと尋問をされた。

 「スカル・リーゴか、仲間にしたら心強い人ではある。」

リーゴとの会話、これまでの事などを鈴華に話すと何かを企み始めた鈴華。

 「俊哉、あんたアルカナが使えるようになったら会いに来いって言われてたのよね?」

 「そうだけど。」

 「いいわ。海斗準備しなさい。これからリーゴに会いに行くわよ。」

 「いやいや、でも相手はリーゴ。アルカナ持ち三人でも勝てるかわからないよ?」

いきなりの提案を止めようとする海斗。
だが、鈴華の一言で全てが終わった。

 「この三人が死ぬ運命なんて出てないわよ。」

こうしてアルカナ持ち三人の旅が始まった。

 「とりあえず、そうと決まったらまずは情報収集よね。ここは南の国って話はしたわよね。」

鈴華の言葉に俊哉がうなずく。

 「南の国にも、貴方の行ったことのあるバグローズのように大きな街があるのよ。今からそこに向かうわ。」

 「どうやって行くの?」

 「そんなもの!」

鈴華と海斗がニヤリと笑う。
もしかしたら、馬車よりすごい乗り物で行くのか!と興奮する俊哉。

一時間ほど経過。

 「あーつーいー。」

 「暑いって言うから暑いのよ。黙って歩きなさいよ。」

 「俊哉くん。こんなのすぐ慣れるよ。」

俊哉に待っていたのは馬車よりももっと過酷なものだった。そう、普通のウォーキングだった。

 「もう結構歩いたよ?」
 
 「まだ一時間しか歩いてないじゃない!」

厳しい鈴華に怒られ。さらに一時ほど歩いた。

 「ついたわよ。ここが南の国、シモン王の納める国、アクアマグードだよ。」

その国は、さすが海にある国だな。と思わせてくれるほどの綺麗な水の都だった。

 「さて、じゃあ情報収集をするわよ。」

街についてすぐ休む間もなく次の行動へと移す鈴華。

 「皆バラバラになって聞き込みよ!わかった!?三時間後にここに集合いいわね。」

こうして三人手分けしての情報収集が始まった。
俊哉はこの国に来たことも無かったのであまり遠くには行かず近くで情報を集めることにした。

が…。街の人に話しかけた所で一般人が知る訳もなく途方に迷っていたその時だった。
目の前にギルドらしき場所があったのだった。
ギルドと言ったらいろんなアニメで出てくる最も情報が集まる場所。という所だと俊哉は思っていた。
後先考えずにギルドに入るとギルドにいた一人から声をかけられた。

 「なんだ、あんちゃん。あんた見ない顔だな。新人か?」

酒を片手にいかにも冒険者が着そうな動きやすい毛皮の服装をしたおっさんが近づいてきた。

 「あ、いえ、そう言うのじゃ無いです。」

 「そうか、わかったぞ!そんならあんちゃんこれから旅人になろうと思ってる者か!申請しに来たんやろ!いいなー、俺も若い頃は…。」

そんなどうでもいいおっさんの話を聞かされていると突然年が同じくらいの男に引っ張られた。

 「勝手に先にいくなよ。探したんだぞ。ほら、まず飯だろ。すまんなおっちゃん!俺ら行くわ。」

 「おお、そうか!わかったぞー。」

男のおかげで無事に話の長いおっちゃんから逃げることができた。

 「あの、すいません。ありがとうございます。」

照れくさそうに頭を掻きながら少年は言った。

 「あー、気にすんなよ。あんな嫌そうな顔してたらさすがに助けるしか無いだろ!」

 「んで、お前は何でギルドなんかに?」

 「あ、えっと、情報収集にギルドはいいかなと思いまして…。」

少年が大声で笑う。

 「バカじゃねえの?情報収集なら、情報店に行けよ。そんで、何が知りたいの?もし俺が知ってたら教えてやるよ。」

 「あの、スカル・リーゴという男を知りませんか?」

 「スカルか!スカルなら知ってるぞ。」

それからいろいろな情報をもらった。
気づいたら二時間半が立っていた。そろそろ戻らなければならなかったので男に別れを告げる。

 「あ、そうだ。まだお名前聞いてなかった。」

 「あー、俺の名前?俺の名前は祐太。」

 「祐太ですね。僕は俊哉って言います。祐太さん、今日はありがとうございました。」

  「さん。なんていらねえよ。祐太でいいよ。」

 「祐太本当にありがとう。またどっかで会えたらいいね。」

そう言って別れようとしたときだった。

 「俊哉、これだけは覚えとけ。いくら強くても戦いにおいて一番最初に死ぬやつは自分の力に自惚れたやつだ。」

その時は俊哉はその台詞の意味が分からなかった。

 「わかった。ありがとう。覚えとくよ。」

それから急いで戻るとすでに鈴華と海斗が待っていた。

 
 「ねえー、遅いー。」

 「ごめん。ごめん。」

 「なんか嬉しそうだね祐太。」

 「あぁ。会いたかったやつにやっと会えたからな。宣戦布告してきてやったよ。」

 「なにそれー。」

 「ちょっとした余興だよ。」

ニヤリと笑う祐太。

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