異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

34話 運命

真っ暗な空間にガチャガチャと鎖が擦れるような音が鳴り響く。音の反響が大きい。まるでトンネルにいるような、そんな感覚にもなる。しばらくガチャガチャした音が鳴り響く。突然空間に明かりがつき何も見えなくなってしまった。少しして明かりに目がなれてくると、そこが何かの部屋だということに気がつく。

 「やっと起きたんだね。あきちゃん。」


ダスピクエットと新に異世界生活を始めた俊哉はスタートしてすぐに終わりを迎えた。パンドラの箱の鍵を持っていたから、という訳ではない。むしろ俊哉にとってパンドラの箱の鍵を最初から持っていたのは今までの頑張りのおかげ。今までのご褒美のようなもの。としか思ってなかったからだ。


時は数時間前に遡る。

ダスピクエットに無理やり異世界に飛ばされた俊哉はキテラの時と同様に何もない草原に飛んでいた。一時間ほどかけて歩いていると目の前には大きな海があった。

 「あれ?おかしい。こんなはずでは…。」

戸惑う俊哉。最初にいた草むらが、キテラに飛ばされたときの草むらと同じように見えた事からまず、リッカに会いに行こうと覚えてる範囲で歩いていった。とにかく川にそって歩いていけばいつか見慣れた場所に着くだろうと。
しかし、その結果は海だった。
唖然とした俊哉はとにかく来た道を戻ることにした。

 「やらかした。迷ったこれ。」

川を沿って歩き、草むらに戻り歩くが俊哉のよく知っている草むらの場所には戻れなかった。だが、俊哉は飽きられずに歩いた。走った。スキップした。すると俊哉は唖然を通り越して愕然とした。海の反対に歩いたら砂漠が広がっていたからだ。
俊哉はまた戻ることにし一度草原へと行った。

草原についた俊哉は立っていた位置から90度体を回転させまた歩き始めた。鼻歌を歌いながら。休憩しながら。トレーニングしながら。すると俊哉は絶望した。目の前には森。いや、森を通り越して樹海と言った方が正しいかもしれない。そのくらい暗くて霧が出てている景色が出てきた。
俊哉は走った。とにかく走った。休憩し、また走った。樹海と反対方向に。草原を無視しとにかく走った。

 「これ、詰んだじゃん!」

目の前にはかなり高い雪山が一面に広がっていた。周りを見渡すと雪が積もっていた。

 「これ、歩いて遭難とかしたら本当に終わる。」

俊哉は180度回転し歩いた。とぼとぼと。グダグダと。タラタラと。とにかく歩いた。
草原戻ってきた俊哉はとにかく考えた。考えた。考えることに疲れてきた。最終的に草原に倒れこんだ。
風で草がサラサラと動く。

 「あ、草原に転がって、風を感じるのも結構良いものかもしれないな。風がすごく気持ちいいや。」


 「ねえ、鈴華。」

 「なによ?」

 「何でまた草原に戻ってきたの?バグローズに向かってたんじゃないの?」

 「海斗が、グダグダしてるからじゃない。」

二人が草原で何かを探すように歩く。

 「別にグダグダはしてないよ。ねえ、バグローズ戻ろうよ。もう歩きたくない。」

 「仕方ないでしょ!運命のアルカナがここに行けって言ってるんだから。」

 「なに探してるの?」

 「男。」

泣き出す海斗。

 「なに、泣いてるのよ!まさか男を探してるからって嫉妬?」

 「いや、そうじゃないよ。」

 「じゃあ、なによ!」

 「やっと鈴華にも運命の男が見つかったんだねって思ったら涙が。」

 「シバくぞ!」

そんな会話をしていると海斗が1人の少年に気づく。

 「ねえ、鈴華あそこに誰か倒れてるよ!」

二人の目の前に倒れていたのは俊哉だった。

 「海斗、あの人!あの人を探してたの。」

そういうと運命のアルカナカードを取り出した鈴華。
アルカナカードが消えていくと鈴華の頭に今一番何をすれば今後の自分に得になるか、どうすれば自分の目的が果たせるのかが流れ込んできた。

 「間違いない!その男であってる。海斗連れてくよ。」

驚き、一瞬フリーズした海斗が鈴華に一言言った。

 「いくら運命の男だからって誘拐はダメだよ。」

 「違うわ!」

二人のコントが始まった。

 「誘拐じゃないなら、人拐い?」

 「両方意味は同じでしょ。それ。」

 「じゃあ〜。」

 「もういい。そうじゃないから!この男が鍵の有りかを知ってるってこと。」

 「鍵って、パンドラの?」

 「そういうこと。」

海斗の目付きが変わる。

 「鈴華、海を進むけど体力まだ残ってる?」

 「ちゃんとあるわよ。」

 「じゃあ、さっそく帰ろうか。」

海斗が俊哉を担ぐ。

 「ところで、鈴華。」

 「なに?」

 「南ってどっち?」

俊哉を担いだままフリーズする二人。

 「待って今からアルカナで調べるから。」

 「いつも方角はアルカナで調べるよね~。」

 「うるさい!」


同時刻

 「私をこんなところに監禁して何のつもり。」

ガチャガチャと音をたてながら抵抗するあき。

 「貴方を勧誘しようと思って。黒魔術師団に。」

優花が笑いながら答える。

 「何で私を。そもそも私は白魔術師団の1人。どうしてそんな私を。」

 「あんなネーミングセンスの欠片もない所にいたらあなたの目的は一生果たせない。」

 「私の目的?今の私にそんなものはない!」

優花があきの耳元で何かを呟いた。

 「あなたどうしてそれを。」

 「私も貴方と同じだからよ。」

 「でも私はあなたたちの敵で!」

 「黒魔術師団の目的と、あなたの能力について教えてあげる。」

あきを拘束していた器具が全て外れ自由の身となったあき。だが、逃げようとはしなかった。

笑う優花。

 「ようこそ。黒魔術師団へ。貴方はこれから私の部活としてまずは動いてもらうわ。いいわね。あき。」

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