異世界破壊のファートゥム

蒼葉 悠人

18話 王都に

リオンとあきと俊哉で王都バグローズに向かうことになり馬車で何時間か揺れることになった。

 「あきちょっと聞いてもいいかな?」

 「なに?」

 「言いたくなければ言わなくてもいいけど、どうしてさっき露骨に嫌そうな顔をしてたの?」

 「どうしてって…」

言いたくなさそうな顔をするあきを見てすぐに謝る。

 「ごめん。要らないことを聞いた。」

これを見たリオンが空気を読まず笑いだす。

 「あき、別に隠すようなことでもないだろ。」

そういい説明を始めるリオン。

 「理由は簡単だよ。あきがわがままな姫の妹だからだよ。」

 「妹いたの?あき」

驚きが隠せない俊哉。

 「いや、私の妹とって言うかキアラナの妹なんだけど。」

 「え?どういうこと?」

驚いている俊哉を見て、面倒くさそうに説明を始めるあき。あきの説明からわかった事がある。この異世界での認識が全て違ったっていうことだ。

 「最初に説明されるでしょ?」

 「いや、俺は意識だけが入れ代わるって聞いたけど。」

 「あんたの相棒適当ね。」

どうやらこの世界は意識の入れ代わり。そして存在の認知の変更がされているらしい。簡単に言うと、俊哉の場合なら、意識が代わり俺はキテラとの意識が変わる。その後異世界の者からのキテラという認知が俊哉に変わると言うことだ。あきの場合ならキアラナとの意識が代わり、その後に回りからキアラナと言う認知からあきという認知に変わる。存在の入れ代わりではないからあきはキアラナとして扱われる。このようなプロセスを践んでいるらしい。ただ、俊哉の場合は少し違っていたが。

 「だから、私はキアラナという扱いはされているけど、本当はキアラナではないってこと。」

 「そうなんだー。」

俊哉とリオンが口を揃えて驚く。 

 「異世界の人は複雑なんだね。」

リオンが分かったのか、分かっていないのか微妙な反応をしながら頷く。

 「それより俊哉、あんなにそんな適当な事を教えた人は誰なのよ?」

 「え、キテラって言う赤髪のきれいな人。」

えーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 

リオンとあきが大きな声で驚く。

 「お客様大丈夫ですか?」

 「あぁ、すまない。問題ない。」

心配してくれた若い馬車の馭者(ぎょしゃ)にリオンが謝る 。

 「えーってなに?」

 「俊哉くんそれ誰にも言って無いよね?」

 「あー、はい。言ってませんよ。」

リオンが額に汗を滲(にじ)ませながら聞いてくる。

 「あんた知らないの?キテラって言うのはね。」

あきがまたもや説明を始める。キテラとはこの世界で最も凶悪とされた魔法使いで、どんな魔法も使うことができた唯一の存在。そして魔女裁判で殺せず封印するしかなかった。最悪の魔女らしい。

 「そんなのがバックにいたらそりゃ強いわ。それで俊哉の目的は?」

 「目的?」

 「この世界ですることよ。私ならキアラナの敵討ち。」

 「あ〜、世界を壊すこと。」

はぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

またもあきとリオンが同時に叫ぶ。

 「お客様。」

何度目だよ?と思いながら馭者に謝る。こんなことを何度か繰り返しながら何時間か揺られていた。


王都バグローズついた頃には俊哉のメンタルはボロボロだった。
(疲れた。あれからたくさん言われた。とにかくキテラのことは誰にも言わないようにしよう)
固く誓った俊哉だった。

 「ここがバグローズだよ。俊哉君、早速で悪いんだけど城に向かってもらうね。もちろんあきもだよ。」

嫌々なあきを連れていきながら城に向かう。

 「面を上げろリオン。よく連れてきた。下がってよいぞ。」

そういうとリオンを部屋から追い出す姫。

 「俊也とやら。この横の部屋に父上の部屋がある。父上が呼んでいるゆえそちらに向かって欲しい。」

そういわれ横の部屋へと執事らしき人に連れていかれた。

 「お姉ちゃーん。会いたかったよ。やっと会えたよ。」

 「近い。ミア」

そういうと姫としては失格な品のない甘えようであきに抱きつく。

 「で、私が来ることもわかってたんでしょ?」

 「当たり前だよ。私の、この未来が見える目が言ってたからね。」

 「だからいつも言ってるでしょ?それは目じゃなくてただの能力だって。」

 「それで?私を呼んだ理由は?」

一方俊哉

執事に連れていかれた横の部屋へと来る。

 「こちらです。」

執事に言われ、恐る恐る入るとそこには姫の言うお父さんの他におそらくお母さんだろう思われる者がいた。

 「すまないな。こんなところに一人呼び出して。そう恐がることはない。リラックスして聞いてくれ。」

 「はい。」

 「私はこの国の王オルガン、そしてこちらが私の妻リーアだ。」

王相手にどういう態度でいれば良いのかわからない俊哉はただただ立っていた。

 「あ、あの。」

 「分かった。なら、こうしよう。」

そう言うとオルガンは口調をがらりと変えた。

 「まぁ、ここに来てもらったのはお願いがあったんだよね?聞いてもらってもいい?」

口調の変わりように違和感しかなく思わず笑ってしまう俊哉。 

 「やっと柔らかくなったか。じゃあこれで話すな。お願いって言うのも、我が娘ミアの事なんだけど。最近能力者狩りが頻繁に現れるようになってな。なんでもミアの未来の見える能力を奪おうとするやからが出てきたんだよ。俊哉君には、その能力者狩りを倒して欲しい。」

 「お姉ちゃんには、私を能力者狩りから守って欲しい。」

俊哉とあきは別々の部屋で同時に反応した。

 「やりましょう。」

そう言った二人の顔はとてもワクワクしていた。

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