異世界でもプロレスラーになれますか?
第48話 予期せぬ事態
『会場の皆様、お待たせいたしました!これより本日最終戦、準決勝第2試合を行います!』
謎のフクロマスクとの試合を終え、俺は観覧場所の石壁を背に座り込んでいた。
———のだが。
「おいマスクのにいちゃん!めちゃ強いな!」
「どんな鍛え方してんだ?」「そのマスクいくらですか?」
今日の試合で負けていった参加者数人がぞろぞろと集まってきており、あろう事か質問責めにされていてとても休める雰囲気では無かった。
「あーその、俺ちょっと疲れてるんで休みたいんだが……」
「おい!今俺が話してんだよ!」「ああ?俺の方が先に話しかけただろうが!」「僕はあのマスクを売ってもらうんです!」
なにやらもめ始めたな。というかこのマスクは俺の自作であって売り物じゃないんだよ。自信作なんだからいくら積まれても売ってやる気はない。
と、こいつらがもめてるうちにとっとと場所を変えさせてもらおう。
◆
「はぁ……」
疲れた。この世界に来て1番疲れる戦いだったがそれよりも1番ワクワクする戦いでもあった。
体があちこち痛いが、プロレスラーたるもの、その程度で根をあげていられるものか。
「そういやシルフィ達、どうなったかな」
エリオットの妹の治療をシルフィに頼んで別れてから2時間くらいか。今日はもう試合は無いし、そろそろ合流するかな。決勝は明日だしもうここにいる必要は無いだろう。
と、会場を後にしようと数歩歩みを進めた時だった。
『な、何という事でしょう!?こんな結果、誰が予想出来たでしょうか!?まさか!我らがエルフォード王国の国王、パーフェクト超人!レイドルフ・ヴィルフリート様が……準決勝敗退!決勝へと駒を進めたのは……シュナイデル王国の冒険者!バンディ・アバラン選手です!』
「……………………は?」
『なんともとんでもない結果となりました。試合はヴィルフリート様がおしているように見えましたが、終盤、バンディ選手が使用した魔法———砂の檻(サンド・プリズン)で2人の姿が見えなくなり、再び2人の姿が現れた時にはヴィルフリート様は再起不能となっておりました。あの砂の空間の中で何が起こったのか!謎は深まるばかりです!』
ヴィルフリートが負けた?どうなってるんだ?それじゃシルフィの敵討ちはどうなる。
もうなにがなにやら分からなくなってしまい、俺はその場に呆然と立ち尽くしていた。
色々と考えていたらいつのまにか周りには誰もいない。既に選手も観客も会場を後にしているようだ。
「……ひとまずシルフィ達と合流するか」
会場出口へと向かう途中、何やら視線を感じ立ち止まる。
「……誰だ?」
「おやバレていましたか。こっそり襲撃して深手を負わせておこうと思いましたのに」
物陰から現れたのはガタイのいい武闘家風の男。だが、見た目に反して喋り方が独特というか……とにかく見た目と性格が噛み合わない。
どちらかというと温和な優男風な奴だ。
「俺を襲撃って事はもしかしてお前、バンディ・アバランか?」
「おや私の事をご存知で。これはこれは恐縮千万はっはっは」
「試合前に俺に襲撃しようなんてお前くらいしか考えられないだろ」
「まぁそうでしょうなぁ。普通に考えて、ね」
何だこいつ。薄気味悪いというかなんとも……異様な雰囲気だ。
「……ふっ、まぁお楽しみはとっておくのも一興ですね。明日の決勝戦、いい試合にいたしましょう。ヤシマ・ドラゴンさん」
「お前……」
薄気味悪い笑みをあげながらバンディは去っていった。
◆
「さて」
会場の外に出たはいいもののなんだか落ち着かないな。予想だにしないヴィルフリートの敗戦。そしてヴィルフリートを倒した異様な雰囲気をもつバンディ・アバランとの接触。
これはシルフィ達と話し合う必要があるな。
「おぉ!竜平!終わったか!なかなか出てこんから心配したぞ!」
聞き覚えのあるこのでかい声を出す人間といえばこの人しかいない。
「おっちゃん来てたのか。ちょっと色々あって遅くなった。リースの容態はどうだ?」
「なあに命に別状はないから安心せい!それより勝ったんじゃな!あのふざけたフクロを被っとる奴に」
「ああ、あいつなかなか骨のある奴だったよ。正直勝てたのは運が良かったからかも知れないな、ははっ」
「何を言っとるんじゃ!竜平は勝った!そんな謙遜しとったら相手にも失礼じゃろ!お前は堂々としておればいいんじゃ!」
「……そうだな。ありがとうおっちゃん」
「分かればええんじゃ」
ふん!と鼻を鳴らしならがら腕を組むおっちゃん。
この人声はでかくて威圧的だけどほんといい人だよな。
そうだ。おっちゃんになら話しても問題なさそうだしリースを連れてみんなで合流しよう。
「おっちゃん、悪いんだけどリースと一緒にきてくれないか?大事な話がある。リースにも関係してくる話だ」
「ほぉ?」っといつになく真剣な顔になる。
リース事になるとどんな事でもやってしまいそうで怖いな。
◆
俺たちはおっちゃんの鍛冶屋に行き、フードを被らせたリースをおっちゃんが背に背負ってきた。
「これから行く場所にある人物がいる。リースと深く関係のある人間なんだが、最初におっちゃんに1つ言っておきたい事がある」
「なんじゃ!?何でも言ってくれ!」
「えーと、そこで話す事はにわかには信じ難い話なんだ」
「そうか!」
「恐らくこの国の未来を大きく左右する、それほど重要な話なんだ」
「なるほど!」
「……だからね、できれば他人には絶対聞かれたくない事なんだよ」
「うむ!」
「つまりおっちゃんに言っておきたい事ってのは……」
「何じゃ!?」
「もうちょい声を小さくしてくれ」
こんなボリュームの声じゃすぐ他の誰かの耳に入っちゃうからな。
お久しぶりです。インフルエンザと仕事の都合上なかなか進めませんでした。相変わらず不定期になると思いますがよろしくお願いします。
謎のフクロマスクとの試合を終え、俺は観覧場所の石壁を背に座り込んでいた。
———のだが。
「おいマスクのにいちゃん!めちゃ強いな!」
「どんな鍛え方してんだ?」「そのマスクいくらですか?」
今日の試合で負けていった参加者数人がぞろぞろと集まってきており、あろう事か質問責めにされていてとても休める雰囲気では無かった。
「あーその、俺ちょっと疲れてるんで休みたいんだが……」
「おい!今俺が話してんだよ!」「ああ?俺の方が先に話しかけただろうが!」「僕はあのマスクを売ってもらうんです!」
なにやらもめ始めたな。というかこのマスクは俺の自作であって売り物じゃないんだよ。自信作なんだからいくら積まれても売ってやる気はない。
と、こいつらがもめてるうちにとっとと場所を変えさせてもらおう。
◆
「はぁ……」
疲れた。この世界に来て1番疲れる戦いだったがそれよりも1番ワクワクする戦いでもあった。
体があちこち痛いが、プロレスラーたるもの、その程度で根をあげていられるものか。
「そういやシルフィ達、どうなったかな」
エリオットの妹の治療をシルフィに頼んで別れてから2時間くらいか。今日はもう試合は無いし、そろそろ合流するかな。決勝は明日だしもうここにいる必要は無いだろう。
と、会場を後にしようと数歩歩みを進めた時だった。
『な、何という事でしょう!?こんな結果、誰が予想出来たでしょうか!?まさか!我らがエルフォード王国の国王、パーフェクト超人!レイドルフ・ヴィルフリート様が……準決勝敗退!決勝へと駒を進めたのは……シュナイデル王国の冒険者!バンディ・アバラン選手です!』
「……………………は?」
『なんともとんでもない結果となりました。試合はヴィルフリート様がおしているように見えましたが、終盤、バンディ選手が使用した魔法———砂の檻(サンド・プリズン)で2人の姿が見えなくなり、再び2人の姿が現れた時にはヴィルフリート様は再起不能となっておりました。あの砂の空間の中で何が起こったのか!謎は深まるばかりです!』
ヴィルフリートが負けた?どうなってるんだ?それじゃシルフィの敵討ちはどうなる。
もうなにがなにやら分からなくなってしまい、俺はその場に呆然と立ち尽くしていた。
色々と考えていたらいつのまにか周りには誰もいない。既に選手も観客も会場を後にしているようだ。
「……ひとまずシルフィ達と合流するか」
会場出口へと向かう途中、何やら視線を感じ立ち止まる。
「……誰だ?」
「おやバレていましたか。こっそり襲撃して深手を負わせておこうと思いましたのに」
物陰から現れたのはガタイのいい武闘家風の男。だが、見た目に反して喋り方が独特というか……とにかく見た目と性格が噛み合わない。
どちらかというと温和な優男風な奴だ。
「俺を襲撃って事はもしかしてお前、バンディ・アバランか?」
「おや私の事をご存知で。これはこれは恐縮千万はっはっは」
「試合前に俺に襲撃しようなんてお前くらいしか考えられないだろ」
「まぁそうでしょうなぁ。普通に考えて、ね」
何だこいつ。薄気味悪いというかなんとも……異様な雰囲気だ。
「……ふっ、まぁお楽しみはとっておくのも一興ですね。明日の決勝戦、いい試合にいたしましょう。ヤシマ・ドラゴンさん」
「お前……」
薄気味悪い笑みをあげながらバンディは去っていった。
◆
「さて」
会場の外に出たはいいもののなんだか落ち着かないな。予想だにしないヴィルフリートの敗戦。そしてヴィルフリートを倒した異様な雰囲気をもつバンディ・アバランとの接触。
これはシルフィ達と話し合う必要があるな。
「おぉ!竜平!終わったか!なかなか出てこんから心配したぞ!」
聞き覚えのあるこのでかい声を出す人間といえばこの人しかいない。
「おっちゃん来てたのか。ちょっと色々あって遅くなった。リースの容態はどうだ?」
「なあに命に別状はないから安心せい!それより勝ったんじゃな!あのふざけたフクロを被っとる奴に」
「ああ、あいつなかなか骨のある奴だったよ。正直勝てたのは運が良かったからかも知れないな、ははっ」
「何を言っとるんじゃ!竜平は勝った!そんな謙遜しとったら相手にも失礼じゃろ!お前は堂々としておればいいんじゃ!」
「……そうだな。ありがとうおっちゃん」
「分かればええんじゃ」
ふん!と鼻を鳴らしならがら腕を組むおっちゃん。
この人声はでかくて威圧的だけどほんといい人だよな。
そうだ。おっちゃんになら話しても問題なさそうだしリースを連れてみんなで合流しよう。
「おっちゃん、悪いんだけどリースと一緒にきてくれないか?大事な話がある。リースにも関係してくる話だ」
「ほぉ?」っといつになく真剣な顔になる。
リース事になるとどんな事でもやってしまいそうで怖いな。
◆
俺たちはおっちゃんの鍛冶屋に行き、フードを被らせたリースをおっちゃんが背に背負ってきた。
「これから行く場所にある人物がいる。リースと深く関係のある人間なんだが、最初におっちゃんに1つ言っておきたい事がある」
「なんじゃ!?何でも言ってくれ!」
「えーと、そこで話す事はにわかには信じ難い話なんだ」
「そうか!」
「恐らくこの国の未来を大きく左右する、それほど重要な話なんだ」
「なるほど!」
「……だからね、できれば他人には絶対聞かれたくない事なんだよ」
「うむ!」
「つまりおっちゃんに言っておきたい事ってのは……」
「何じゃ!?」
「もうちょい声を小さくしてくれ」
こんなボリュームの声じゃすぐ他の誰かの耳に入っちゃうからな。
お久しぶりです。インフルエンザと仕事の都合上なかなか進めませんでした。相変わらず不定期になると思いますがよろしくお願いします。
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