異世界でもプロレスラーになれますか?
第28話 親子の再会
受付の横でトーナメント表を確認した俺とリースは通路を進む。
闘技場へと入り、出場選手が集うとやはり険悪な空気が流れる。目が合っただけで争いが起きそうだ。そんな空気の中、俺を待っていたかのようにやって来るゴツいおっさんが1人———グランのおっちゃんだった。
「来たなぁ竜平。待っとったぞ!ん?なんじゃそのドラゴンみたいなマスクは?」
「よく俺だって分かりましたね。大会ではドラゴン・ヤシマと名乗るのでそのつもりでよろしくっす」
「まぁ体つきを見ればだいたい分かるんじゃ!ほー、名前変えるんか。まぁそこは人によって自由じゃからなぁ。ところでそっちのにいちゃんは友達か?」
「あーこっちは俺の仲間でリー……」
ドスッ
そこまで言おうとしたところで俺は横腹をリースにど突かれた。
「どーも、俺はマスラオって言います。よろしくー」
何事も無かったようにリースは自分で自己紹介をした。ちょっと……痛いんだけど……
「お、おぅ、マスラオか。よろしくな。お互い頑張ろうや。ワシァちょいと便所行ってくるんでな、少し待っとってくれや」
そう言ってグランのおっちゃんは歩いて行ってしまった。
「ちょっとリース、痛いんだけど……」
「……竜平、あの人とどこで知り合ったんだ?」
急にリースの表情が暗く陰る。こんなリースの顔は今まで見たことがない。まぁ知り合ってまだそんなに経ってはいないんだが。
「あぁ、あの人はメルクスで会ってな。武道大会に出るみたいだったからとりあえず挨拶をな。さっき顔洗いに行った時にもちょいと話し込んでたんだ。もしかして知り合いか?」
「……お父さん」
ん?お父さん?
「あの人は俺のお父さんだよ。前に自己紹介した時言ったよね?俺の名前はリース・オーレンズだって」
そういえば……どっかで聞き覚えのある名前だとは思ったがまさかリースの父ちゃんだったとは。
にしても全然似てない親子だなぁ。あんなゴツいおっちゃんが父ちゃんとは。きっと母親似なんだろうな。
「と言っても本当のお父さんじゃないんだけどな。俺、捨て子だったんだよ。赤ん坊の頃捨てられててそこで俺を拾ってくれたのがあの人。育ての親で名付け親でもあるんだ」
「リース……」
本当の親を知らないリースにとってグランのおっちゃんはかけがえのない存在って事だ。久しぶりの再会できっと心から喜んでいる事だろう。
だが……
「なんでこんなとこいるんだよ、お父さんたら」
あら……思ってた反応と違う……
「この国から逃げる時お父さんに言っといたんだ。俺の事は心配いらないからって。どうせ優勝して私の事探してもらおうとかそんなとこだろ」
うん、全くその通りだと思う。人を探してもらうって言ってたしな。つまり、リースの事を探そうとしているんだろう。
「お父さん昔から俺の事凄く溺愛しててさ、悪い虫が近づかないよういつも目を光らせてたり、怪我をした時はどんなに小さな怪我でも泣いちゃうくらいで」
なるほど、とんでもない親バカ、というか過保護なんだな。あのツラとガタイで。
「良いお父さんじゃないか。顔見せてやったらどうだ?」
「やだ、ウザいから」
あーなるほど。リースの表情が暗くなったのは過保護すぎる父親がウザくなって嫌気がさしたって事か。
でも、リースもシルフィの事になるとなんでもやってしまうし、こんな大会にまで出るくらいだから充分過保護だけどな。血は繋がってなくともやっぱり親子なんだな。
◆
しばらくするとグランのおっちゃんが帰ってきた。
「待たせてすまんのぉ!そろそろ始まる頃か」
グランさんがそう言った直後……
『えー、武道大会へ出場される皆さま。大変お待たせ致しました。これよりルール説明を行いますので待機場所へお集りください』
アナウンスが流れ、選手が続々と待機場所へと向かう。見渡した感じ、どいつも粒揃いのようだ。昔見たアニメの世紀末覇者みたいな人もいれば、何故かその辺の紙袋を被って目の所のみ穴を空けている変人。それから槍やら青龍刀みたいのを持った奴らが……
……………………あれ?
「な、なぁおっちゃん。この大会は武器禁止だよな?なんか持ってる奴ら沢山いるんだけど」
「なんや竜平、聞いとらんのか?今回の大会は武器や魔法の使用も認められとるんじゃ」
な、なんですとぉぉぉぉ!?
見るといつのまにかおっちゃんは大きな鉞の様なものを携えている。
「へぇ、面白いじゃん。身体検査とかやらないのかと思ったらそういう事だったのか」
ニヤリと笑うリースは服に仕込んでいたらしい短剣を2本取り出した。
「お、俺も何か武器を……」
すると再びアナウンスが流れる。
『それでは皆様お集まりいただいたところでルール説明を行います。今回は特別ルールとして、武器や魔法の使用が認められます。ただし、武器の貸し出しは一切行なっていませんのでお使いになられる方は各自用意しているかと思います。』
終わった……
見た感じ武器持った人が大多数の中俺は何も無し。
観客の中にパイプ椅子使ってる人とかいないかなぁ。いる訳ないよなぁ。ここ、異世界だし……。
『えー、そしてもちろん相手の武器や盾を奪い、使う事も可能ですので忘れた方はご安心ください』
あ、そっか。相手から奪えば良いのか。それならなんとかなるかもな。
『そして今回は参加者が32名と去年より大幅に増えておりますので、特別ルールとして、1試合30分とさせて頂きます。もし決着がつかない場合、両者脱落となりますのでご了承ください』
30分か。それだけあれば全然戦えるだろう。
『さらに今回は2日間に分けての大会となります。決勝戦は明日になりますので本日は準決勝までとなります』
なるほど。それならゆっくり休んで決勝に臨めるわけだ。まずは1回戦を勝たなきゃな。
『ルール説明は以上となります。最後にエルフォード王国国王レイドルフ・ヴィルフリート様よりお言葉を頂戴します』
ついに勇者の面を拝む時が来たな。
すると俺の後ろから1人の人物が前へと進み、全選手の前で振り向く。
「みな、良い面構えだ。改めて名乗ろう。私がこのエルフォード王国国王、レイドルフ・ヴィルフリートだ」
闘技場へと入り、出場選手が集うとやはり険悪な空気が流れる。目が合っただけで争いが起きそうだ。そんな空気の中、俺を待っていたかのようにやって来るゴツいおっさんが1人———グランのおっちゃんだった。
「来たなぁ竜平。待っとったぞ!ん?なんじゃそのドラゴンみたいなマスクは?」
「よく俺だって分かりましたね。大会ではドラゴン・ヤシマと名乗るのでそのつもりでよろしくっす」
「まぁ体つきを見ればだいたい分かるんじゃ!ほー、名前変えるんか。まぁそこは人によって自由じゃからなぁ。ところでそっちのにいちゃんは友達か?」
「あーこっちは俺の仲間でリー……」
ドスッ
そこまで言おうとしたところで俺は横腹をリースにど突かれた。
「どーも、俺はマスラオって言います。よろしくー」
何事も無かったようにリースは自分で自己紹介をした。ちょっと……痛いんだけど……
「お、おぅ、マスラオか。よろしくな。お互い頑張ろうや。ワシァちょいと便所行ってくるんでな、少し待っとってくれや」
そう言ってグランのおっちゃんは歩いて行ってしまった。
「ちょっとリース、痛いんだけど……」
「……竜平、あの人とどこで知り合ったんだ?」
急にリースの表情が暗く陰る。こんなリースの顔は今まで見たことがない。まぁ知り合ってまだそんなに経ってはいないんだが。
「あぁ、あの人はメルクスで会ってな。武道大会に出るみたいだったからとりあえず挨拶をな。さっき顔洗いに行った時にもちょいと話し込んでたんだ。もしかして知り合いか?」
「……お父さん」
ん?お父さん?
「あの人は俺のお父さんだよ。前に自己紹介した時言ったよね?俺の名前はリース・オーレンズだって」
そういえば……どっかで聞き覚えのある名前だとは思ったがまさかリースの父ちゃんだったとは。
にしても全然似てない親子だなぁ。あんなゴツいおっちゃんが父ちゃんとは。きっと母親似なんだろうな。
「と言っても本当のお父さんじゃないんだけどな。俺、捨て子だったんだよ。赤ん坊の頃捨てられててそこで俺を拾ってくれたのがあの人。育ての親で名付け親でもあるんだ」
「リース……」
本当の親を知らないリースにとってグランのおっちゃんはかけがえのない存在って事だ。久しぶりの再会できっと心から喜んでいる事だろう。
だが……
「なんでこんなとこいるんだよ、お父さんたら」
あら……思ってた反応と違う……
「この国から逃げる時お父さんに言っといたんだ。俺の事は心配いらないからって。どうせ優勝して私の事探してもらおうとかそんなとこだろ」
うん、全くその通りだと思う。人を探してもらうって言ってたしな。つまり、リースの事を探そうとしているんだろう。
「お父さん昔から俺の事凄く溺愛しててさ、悪い虫が近づかないよういつも目を光らせてたり、怪我をした時はどんなに小さな怪我でも泣いちゃうくらいで」
なるほど、とんでもない親バカ、というか過保護なんだな。あのツラとガタイで。
「良いお父さんじゃないか。顔見せてやったらどうだ?」
「やだ、ウザいから」
あーなるほど。リースの表情が暗くなったのは過保護すぎる父親がウザくなって嫌気がさしたって事か。
でも、リースもシルフィの事になるとなんでもやってしまうし、こんな大会にまで出るくらいだから充分過保護だけどな。血は繋がってなくともやっぱり親子なんだな。
◆
しばらくするとグランのおっちゃんが帰ってきた。
「待たせてすまんのぉ!そろそろ始まる頃か」
グランさんがそう言った直後……
『えー、武道大会へ出場される皆さま。大変お待たせ致しました。これよりルール説明を行いますので待機場所へお集りください』
アナウンスが流れ、選手が続々と待機場所へと向かう。見渡した感じ、どいつも粒揃いのようだ。昔見たアニメの世紀末覇者みたいな人もいれば、何故かその辺の紙袋を被って目の所のみ穴を空けている変人。それから槍やら青龍刀みたいのを持った奴らが……
……………………あれ?
「な、なぁおっちゃん。この大会は武器禁止だよな?なんか持ってる奴ら沢山いるんだけど」
「なんや竜平、聞いとらんのか?今回の大会は武器や魔法の使用も認められとるんじゃ」
な、なんですとぉぉぉぉ!?
見るといつのまにかおっちゃんは大きな鉞の様なものを携えている。
「へぇ、面白いじゃん。身体検査とかやらないのかと思ったらそういう事だったのか」
ニヤリと笑うリースは服に仕込んでいたらしい短剣を2本取り出した。
「お、俺も何か武器を……」
すると再びアナウンスが流れる。
『それでは皆様お集まりいただいたところでルール説明を行います。今回は特別ルールとして、武器や魔法の使用が認められます。ただし、武器の貸し出しは一切行なっていませんのでお使いになられる方は各自用意しているかと思います。』
終わった……
見た感じ武器持った人が大多数の中俺は何も無し。
観客の中にパイプ椅子使ってる人とかいないかなぁ。いる訳ないよなぁ。ここ、異世界だし……。
『えー、そしてもちろん相手の武器や盾を奪い、使う事も可能ですので忘れた方はご安心ください』
あ、そっか。相手から奪えば良いのか。それならなんとかなるかもな。
『そして今回は参加者が32名と去年より大幅に増えておりますので、特別ルールとして、1試合30分とさせて頂きます。もし決着がつかない場合、両者脱落となりますのでご了承ください』
30分か。それだけあれば全然戦えるだろう。
『さらに今回は2日間に分けての大会となります。決勝戦は明日になりますので本日は準決勝までとなります』
なるほど。それならゆっくり休んで決勝に臨めるわけだ。まずは1回戦を勝たなきゃな。
『ルール説明は以上となります。最後にエルフォード王国国王レイドルフ・ヴィルフリート様よりお言葉を頂戴します』
ついに勇者の面を拝む時が来たな。
すると俺の後ろから1人の人物が前へと進み、全選手の前で振り向く。
「みな、良い面構えだ。改めて名乗ろう。私がこのエルフォード王国国王、レイドルフ・ヴィルフリートだ」
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