異世界でもプロレスラーになれますか?
第3話バラッサの街
3話公開します。本格的なバトルシーンはもう少し先になると思います。
女神に言われて逆の道に進むこと半日。ようやく街が見えてきた。
魔王領というからには禍々しい雰囲気が漂っているイメージだったが、全くそんな事は無かった。
「ようやく着いたな。ここがバラッサの街か。まずはここでギルドを探さないとだな。とりあえず観光がてら適当に街中を回ってみるか」
そうして街に入った。女神の話では魔王領には魔族が住むという。決して人間を毛嫌いしているわけではないらしいが、勇者の事もあって良いイメージは持っていないらしい。
街を歩いているとチラチラと視線を感じる。そりゃ魔王領に人間なんて珍しいだろう。ましてやこんな堂々と歩いているんだから。
そしてこれは女神の言っていた身体強化の影響なんだろうか。背後から後をつけて来る2人組の気配を感じる。
恐らくは人間に対してよく思っていない類の連中だろう。
「よし、ここらで身体強化がどれくらいのものかためしてみるかな」
俺はすぐ横の路地へと入っていく。行き止まりのようだ。するとすぐにその2人組は絡んで来る。
「おいおい、なんで人間がこんなところうろついてんだよ」
「痛い目にあいたくなきゃ金目のもの全部寄越しな」
うん、金目のものどころか金も持っていないんだがな。あ、スマホは金目のものに含まれるんだろうか。
まぁ渡す気は無いけど。
2人とも褐色の肌だが特徴は違っている。
1人はツノが2本左右対になって生えているガラの悪そうな金髪ヤンキーの様な感じの男、もう1人はゴリゴリの筋肉、まさにプロレスラーの様な風貌の男だがツノは生えていない。
「悪いが金目のものは持っていない!むしろ金も持っていない!一文無しだ!」
これで引いてくれるとは思わないけどね。とりあえず言ってみたかったから言っただけさ。
「テメェそんなかっこ悪いセリフをよく堂々と言えたもんだな!」
「この腰抜け野郎が!あるかないかは身ぐるみ剥いでから確かめてやる!」
やっぱこうなったな。よし、とりあえず凶器なんかを使ってこないなら攻撃を受けてみるか。まずは耐久面だ。どうせギルドに行ったら分かる事だけど先に少し確かめておくのも良いよね。
「オラァァァ!!」
金髪の男が右の拳でパンチを繰り出す。いきなりかよ、試合なら反則だぞ?まぁ失格にはならんけど。
というかなんだ?えらい遅いパンチだな、やる気あるのか?とりあえず受けてみよう。金髪の男の拳が俺の左の頬に当たる。が、大した痛みも感じない。
発泡スチロールにでも叩かれた様な感じだ。どうやら耐久力は非常に高くなっているらしい。
「き、効いてねぇ……」
「バカ!何やってんだ、今度は俺に任せろ!」
今度はツノ無しのゴリゴリ男が腰を下ろし突進してきた。なるほど。見た目通りのパワーバカの様だ。
「よっしゃ!んじゃ次はパワー対決といこうか」
俺は突っ込んで来るゴリゴリに向け両手を前に出し受け止める姿勢をとる。しかし……
パァン!!という音とともにゴリゴリはその場に崩れ落ちてしまった。
しまった。勢い余って力入れすぎたか。受け止めようとしたら張り手の要領で叩いてしまった。ゴリゴリはどうやら失神してしまったらしい。
「ひぃぃぃぃ化け物!」
金髪は腰が抜けたのかこけそうになりながら逃げ出した。が、その方向に1人の人影がある。
「どけぇぇぇぇ!!」
またしても金髪は拳を打ち込もうとしていた。しかしその人はひらりと拳を躱し、体勢を崩した金髪に足をかけ転ばせる。
「ブハァ」
間抜けな声を出し地面に転んだ金髪に向かいこの人は何かをしようとしている。
その光景を見て俺はーーー感動を覚えた。
俺はこの人が何をしているのかを知っている。うつ伏せに倒れている金髪を仰向けにし、両足を自身の脇の下に挟み込み、またぐ様にして身体を入れ替え、相手の背中を逸らし腰、背中にダメージを与える技ーーーそう、逆エビ固めである。俗にリバース・ボストンクラブとも呼ばれる技だ。
激痛に耐えかね、金髪は地面をタップしていたがレフェリーなんぞこの世界にはいないだろう。しばらくすると金髪は力が抜けた様に失神した。
「ふぅ、終わった終わった。君、大丈夫?怪我とかない?」
大きめのマントにフードで顔を隠していたが、終わるとフードを外し素顔を晒す。なんと女の子だった。
「ん?あ、あぁ、大丈夫だ。突然コイツらに絡まれてカツアゲされるところだったんだ。助かったよ、ありがとう」
「いいってことよ。困った時はお互い様さ♪」
おそらく年齢は俺と同じくらい。肩の辺りまで伸びた栗色の髪の毛、顔立ちも整っていてなかなか可愛い女の子だ。
「また何か困ったことがあったら路地を抜けてこの先にあるギルドに来るといいよ!大体はそこにいる事が多いからね」
「それはちょうど良かったよ。実はこれからそのギルドに行って冒険者になろうと思っていたところだったんだ。もしよかったら一緒に行ってもいいかな?」
「そういう事ならお安い御用だよ。仲間が増えるのは嬉しいことさ。でも君人間だよね?珍しい事もあるもんだ」
珍しいのか。まぁここは魔王領らしいし当然なのかな?とりあえず気にしないでおこう。
金髪とゴリゴリは置いてきてしまったが、まぁそのうち目を覚ますだろう。それよりもこの子の逆エビはなんだ。誰に教わったんだ。もしかしてこの世界にもプロレスという文化があるのかもしれないと。
期待に胸を膨らませながら2人でギルドに到着した。
次はギルドでのお話になります。
女神に言われて逆の道に進むこと半日。ようやく街が見えてきた。
魔王領というからには禍々しい雰囲気が漂っているイメージだったが、全くそんな事は無かった。
「ようやく着いたな。ここがバラッサの街か。まずはここでギルドを探さないとだな。とりあえず観光がてら適当に街中を回ってみるか」
そうして街に入った。女神の話では魔王領には魔族が住むという。決して人間を毛嫌いしているわけではないらしいが、勇者の事もあって良いイメージは持っていないらしい。
街を歩いているとチラチラと視線を感じる。そりゃ魔王領に人間なんて珍しいだろう。ましてやこんな堂々と歩いているんだから。
そしてこれは女神の言っていた身体強化の影響なんだろうか。背後から後をつけて来る2人組の気配を感じる。
恐らくは人間に対してよく思っていない類の連中だろう。
「よし、ここらで身体強化がどれくらいのものかためしてみるかな」
俺はすぐ横の路地へと入っていく。行き止まりのようだ。するとすぐにその2人組は絡んで来る。
「おいおい、なんで人間がこんなところうろついてんだよ」
「痛い目にあいたくなきゃ金目のもの全部寄越しな」
うん、金目のものどころか金も持っていないんだがな。あ、スマホは金目のものに含まれるんだろうか。
まぁ渡す気は無いけど。
2人とも褐色の肌だが特徴は違っている。
1人はツノが2本左右対になって生えているガラの悪そうな金髪ヤンキーの様な感じの男、もう1人はゴリゴリの筋肉、まさにプロレスラーの様な風貌の男だがツノは生えていない。
「悪いが金目のものは持っていない!むしろ金も持っていない!一文無しだ!」
これで引いてくれるとは思わないけどね。とりあえず言ってみたかったから言っただけさ。
「テメェそんなかっこ悪いセリフをよく堂々と言えたもんだな!」
「この腰抜け野郎が!あるかないかは身ぐるみ剥いでから確かめてやる!」
やっぱこうなったな。よし、とりあえず凶器なんかを使ってこないなら攻撃を受けてみるか。まずは耐久面だ。どうせギルドに行ったら分かる事だけど先に少し確かめておくのも良いよね。
「オラァァァ!!」
金髪の男が右の拳でパンチを繰り出す。いきなりかよ、試合なら反則だぞ?まぁ失格にはならんけど。
というかなんだ?えらい遅いパンチだな、やる気あるのか?とりあえず受けてみよう。金髪の男の拳が俺の左の頬に当たる。が、大した痛みも感じない。
発泡スチロールにでも叩かれた様な感じだ。どうやら耐久力は非常に高くなっているらしい。
「き、効いてねぇ……」
「バカ!何やってんだ、今度は俺に任せろ!」
今度はツノ無しのゴリゴリ男が腰を下ろし突進してきた。なるほど。見た目通りのパワーバカの様だ。
「よっしゃ!んじゃ次はパワー対決といこうか」
俺は突っ込んで来るゴリゴリに向け両手を前に出し受け止める姿勢をとる。しかし……
パァン!!という音とともにゴリゴリはその場に崩れ落ちてしまった。
しまった。勢い余って力入れすぎたか。受け止めようとしたら張り手の要領で叩いてしまった。ゴリゴリはどうやら失神してしまったらしい。
「ひぃぃぃぃ化け物!」
金髪は腰が抜けたのかこけそうになりながら逃げ出した。が、その方向に1人の人影がある。
「どけぇぇぇぇ!!」
またしても金髪は拳を打ち込もうとしていた。しかしその人はひらりと拳を躱し、体勢を崩した金髪に足をかけ転ばせる。
「ブハァ」
間抜けな声を出し地面に転んだ金髪に向かいこの人は何かをしようとしている。
その光景を見て俺はーーー感動を覚えた。
俺はこの人が何をしているのかを知っている。うつ伏せに倒れている金髪を仰向けにし、両足を自身の脇の下に挟み込み、またぐ様にして身体を入れ替え、相手の背中を逸らし腰、背中にダメージを与える技ーーーそう、逆エビ固めである。俗にリバース・ボストンクラブとも呼ばれる技だ。
激痛に耐えかね、金髪は地面をタップしていたがレフェリーなんぞこの世界にはいないだろう。しばらくすると金髪は力が抜けた様に失神した。
「ふぅ、終わった終わった。君、大丈夫?怪我とかない?」
大きめのマントにフードで顔を隠していたが、終わるとフードを外し素顔を晒す。なんと女の子だった。
「ん?あ、あぁ、大丈夫だ。突然コイツらに絡まれてカツアゲされるところだったんだ。助かったよ、ありがとう」
「いいってことよ。困った時はお互い様さ♪」
おそらく年齢は俺と同じくらい。肩の辺りまで伸びた栗色の髪の毛、顔立ちも整っていてなかなか可愛い女の子だ。
「また何か困ったことがあったら路地を抜けてこの先にあるギルドに来るといいよ!大体はそこにいる事が多いからね」
「それはちょうど良かったよ。実はこれからそのギルドに行って冒険者になろうと思っていたところだったんだ。もしよかったら一緒に行ってもいいかな?」
「そういう事ならお安い御用だよ。仲間が増えるのは嬉しいことさ。でも君人間だよね?珍しい事もあるもんだ」
珍しいのか。まぁここは魔王領らしいし当然なのかな?とりあえず気にしないでおこう。
金髪とゴリゴリは置いてきてしまったが、まぁそのうち目を覚ますだろう。それよりもこの子の逆エビはなんだ。誰に教わったんだ。もしかしてこの世界にもプロレスという文化があるのかもしれないと。
期待に胸を膨らませながら2人でギルドに到着した。
次はギルドでのお話になります。
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