異世界でもプロレスラーになれますか?

大牟田 ひろむ

第2話 街までの道中にて

2話目投稿です。最初は早めのペースで進めていこうと思ってます。まぁ仕事の忙しさにもよりますが(笑)


 気がつくとそこは異世界と呼ぶに相応しい大草原。日本とは違い澄んだ空気、車や電車が走っていることもないし、もちろん高層ビルや果てしなく家々が建っていることもない。まさしく異世界の光景だった。

「ここが異世界か、なんか想像してた通りの感じだな」

 学生の頃何度か友人に見せられたアニメの異世界もこんな感じだった。1人ジムに通いつめてた自分に面白いから見てみろと勧められた時に見た事があった。見る代わりに一緒にレスリングをやろうと誘い、最初は嫌々やっていたが高3の頃は全国大会でも良いところまで行くレベルまでなったよなあいつ。今どうしてるだろうか。

「とりあえずじっとしててもあれだよな。女神の話だと街へ行ってギルドで冒険者になれって事だったけど、俺はプロレスがしたいんだよな」

 どのみちする事もないので道なりに歩いて街を目指そう。そう思い、歩き始めた時だった。

 プルルルル……

「ん?電話?」

 ポケットに手を入れると俺のスマートフォンがあった。画面を見るとそこには女神様☆とあった。よし、拒否っと。
 すると突如耳障りな大きな声が響く。

『ちょっとなんで拒否するんですか!せっかくあなたにアドバイスしてあげようとわざわざ電話してあげたのに!』

 え、拒否押したのに繋がった。何これ怖い。

「いや、なんというか、あんまり関わりたくない名前が出たので……」

『関わりたくないってなんですか!酷いですよ、せっかくあなたを生き返らせてあげましたのに!むしろ感謝してほしいくらいですよ!』

 まぁ生き返らせてもらったのは素直に感謝だな。それにまたプロレスをやる機会をもらったわけだし。本当に出来るのかは定かでは無いけど。

「ま、まぁとりあえず生き返らせてくれてありがとう。感謝してるよ。それでアドバイスって言ってたが……」

『分かればよろしいです。それでは本題に入りますね。前にも言った通り、あなたにはこの世界に合わせた身体能力、そしてスキルを付与しました。したがってギルドで冒険者登録をすればあなたの職業、ステータス、スキル、適正魔法などがわかるでしょう。言語なども自覚はしてないでしょうがこの世界に適したものになっていますので安心してくださいね』

 やはり魔法はあるらしい。それは是非使って見たいものだ。異世界アニメなどでは定番の能力だからなぁ。だが真の目的はなんといってもプロレスをやる事だ。魔法など二の次。

「分かった。とりあえずそのギルドに行けば良いんだな?そこで冒険者になれば俺はもう自由に過ごして良いと……」

 言いかけたところで女神が突発的に口を開く。

『自由じゃありません!そもそも何の為にこちらの世界で生き返ってもらったと思ったのですか?』

「プロレスを続ける為ですよね?」

 まぁ素晴らしいとか才能がどうとか言ってたしそんなところだろう。と思っていた自分が甘かった。

『何を言っているのですか?そんな訳ないでしょう。そもそも異世界転生した時点で大体のことは想像がつくと思うのですが?』

「すみません、全く想像つかないです」

 突然そんな事言われても困る。

『異世界転生ですよ?異世界といえば魔王討伐がテンプレじゃないですか!あなたは魔王側につき、勇者を討伐する為にこの世界へ来たのです。プロレスなんてついでですついで。身体さえ鍛えて下されば私としては満足なんですがね』

 なるほどそういう事か。ん?

「な、なぁ今の話、凄ーく矛盾してるように聞こえたんだが」

今魔王討伐がテンプレとか言いながら勇者を討伐するとか言っていたような。

『ええ、それに関しては今から説明いたします』

 長々とこの女神の話を聞いていること約1時間、話が終わったようだ。女神様によるとこの世界には魔王という存在がいて、人々を苦しめているーーというわけではなく、ただ単に昔、冒険者になったらしい奴が冒険者といえば魔王と戦うのが使命!とかぬかしたのが始まりらしい。
 それが今のこの世界に浸透していて、いつしか魔王=悪とされるようになったのだそうだ。魔王には配下の幹部が過去7人いたそうだが、今では3人にまで減ってしまい、確実に滅亡の危機に瀕している。
 勇者と呼ばれる冒険者は全部で10人いたそうだが、今では7人にまで減ったらしい。
 とはいえ現状魔王側が劣勢である事、昔の馬鹿な冒険者のせいで魔王=悪と認識されている事は変わらない。

『という事であなたには魔王側についていただきたいのです。向かう先は魔王領にあるバラッサの街、そこのギルドで冒険者登録をして下さい』

「もう一つ疑問に思った事を聞いて良いか?そもそもギルドとか冒険者ってのは勇者側の組織であって、魔王側には無いんじゃないのか?」

 勇者は皆、冒険者だ。ならば冒険者は魔王側にとって敵という事になる。それなのに魔王領の街で冒険者になれってのはどういう事だ?

『その件に関しては街に着いたら分かる事です。とにかくバラッサの街に向かって下さい。あなたが私と電話しながら歩いていた方と逆側に歩いて行くと半日程でつくと思います』

「先言えよ!かなり歩いたわ!」

『すいません、なかなか言い出すタイミングが掴めなくて。とりあえずまた電話しますのでしばらくは1人で頑張って下さいね。私はこれから筋肉、じゃなかったプロレス観戦をしなきゃなので!ではまた!』

 やっぱただの筋肉フェチだな。
 考えないようにしよう。

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