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忍者修行は楽じゃない?!〜普通ライフを送るために修行せざるを得ませんでした〜

フユヤマ

40話 旅の門出

 
   右手には俺を縛って繋いである魔法の縄、左手には50万円の入った封筒を持ったリンはギルドの出口の扉を開け、そこの脇で一息ついていた。
   まだギルドの中は歓声で沸き立っていた。

   「なぁ、『純真のリン』?」
   「その名前で呼ばないで!恥ずかしいから!」
   「あ、やっぱ恥ずかしいんだ」
   「そりゃ恥ずかしいよ!」

   リンは恥ずかしさのあまり、赤くなった顔を両手で覆いながら、しゃがんで動かなくなった。
   何これ、可愛い。

   「ってそんなことより!どうしてくれるんだよ!これじゃあ、俺逮捕されて魔王倒せないじゃねぇか!」
   「ふっふっふ……!」

   ニヤケながら芝居くさい笑い方をすると、指をパチンと鳴らし、俺を縛っていた魔法を解いた。

   「え?」
   「さっきまでのは芝居だったのだぁ!浩介、魔王と戦うんでしょ?だったらお金が必要不可欠じゃない!しかも時間もあまり無いときた!だったらこの方法が1番と考えたんだ!」
   「おぉぉおお!」

   ギルドにいる冒険者に負けないぐらいの叫び声を上げた。
   よし、これでお金には困らない。

   「ありがとう、リン!」
   「うん!でもそのかわり……」
   
   俺は封筒に入ったお金を受け取ろうとした瞬間、リンは自分の方に戻した。

   「あなたを守らせて!それなら良いでしょ?」

   そう言って、爽快に笑った。

   「……わかったよ」

   なんだろうな、女の子の笑顔にいつも負けてるような気がしてならないな。
   ……って俺守られるのぉ?!


 〜〜〜

   俺たちはギルドを後にするとそれぞれ、一旦宿に戻り街を出る準備をした。
   刀……は背中にある。着替え……は元々カバンの中にある。ポーション……は俺に効かなかったからリンに全部あげたんだった。殆ど準備という準備がないな。

  そう、俺にはポーションが効かないのだ。多分異世界からきたせいなのだろう。
   特に準備するものがなかったので集合場所である街の出口に向かった。


 〜〜〜
   
   集合場所に向かう途中。

   「おい!そっちにいたか?!」
   「いや、こっちにはいなかった!」
   「くそ!じゃあ、こっちか!」
   
   
   あっぶねぇ!リンの作戦はどうやら失敗だったようだ。
   こっから慎重に向かった方が良さそうだな。

 〜〜〜

   「遅ーい!」
   「ごめん、冒険者たちが俺のこと捜し回ってる……ってちょっとリン、カバン大きくない?」
   「だって、魔王だよ?!こんぐらい準備しないとだよ!」

   そうやって、自分の2、3倍大きいリュックを叩きながらさも当たり前のように言う。
   何が入ってるんだか。

   「じゃあ、行……」

   俺がリンに話しかけようとすると、

   「いたぞぉぉおお!!」

   後ろから大勢の冒険者がこっち目掛けて走ってきた。

   「見損なったぞ、リンさん!あんたが犯人に加担するなんてな……」
   「『純真のリン』の異名はどこにいったんだ?!」
   「その異名やめてぇ!」

   リンの顔がみるみる赤くなる。
   そんなに嫌なのか。

   「刑務所に向かってみれば、犯人は来てませんって言われたから探してみれば案の定、犯人と行動を共にしていた」
   「『純真のリン』じゃなくて、『汚物のリン』に成り下がってしまったのか…….!」
   「もうやめてぇ!」

   いいぞ、もっと恥ずかしめさせてやれ……!可愛いから!

   「なんで浩介もそっち側なのよ!」
   「いやごめん、つい」
   「ついじゃないわよ!」
   「「「俺たちのリンとイチャつくんじゃねぇええ!」」」

   総勢30名近くの冒険者が俺に向かって飛び込む。
   しかし、

   「『氷遁・氷蓋ひょうがいの術』!」
   「「「うわぁぁあ!!なんだこれ!氷?!」」」
   
  いつの間にか、刀の中から出てきたマシロがそんなカッコいい詠唱をすると、冒険者30名全員を氷でできた鍋の蓋のようなもので閉じ込める。
   
   「ノノちゃん、お願い!」
   「わ、わかった!……『炎塊』!」

   いつの間にか、刀の中から出てきたノノは掌に頭の大きさぐらいの火の玉を作り、それをマシロの術によって作られた氷に向けて投げ飛ばそうと構える。

   「ダメだよ!このままじゃ、あの中にいる冒険者が……!」
   「大丈夫!炎がぶつかったら真っ直ぐ街を出て!」

   マシロがリンを鎮め、指示を出す。
   なんだ、めっちゃ頼りになるんですけど。

   「ノノちゃん!」
   「う、うん!……せいっ!」

   ノノが炎を投げ飛ばした。物凄いスピードだ。野球の選手も口を開けて驚くほどのスピードだ。

   ドゴンッ!……シュゥゥゥウウウ

   炎が氷にぶつかると、衝撃音が鳴り響く。すると急激な温度変化のせいだろう、水蒸気が発生し周りが見えなくなった。
   なるほど、これで冒険者からは完全に見えなくなったということか!

   「マスター!行こっ!」
   「お、おう!」

   俺は酔ったノノを抱えて、真っ直ぐ出口に向かって走った。瓢箪は刀の中に置いてきたようだ。
   良かった。あんな重いもん持てるわけないしな。

   「みんな……ごめん!」
   「リン、行こう!」

   俺はリンの所に戻り手を差し伸べる。リンは一瞬躊躇ったが、決心したのか手を取ってくれた。

   「うん!」

   リンの手を引きながら俺は再び出口に向かって走った。

   「それにしてもマシロ、あの術すげぇな!どこで覚えたんだ?」
   「あれね、ブローチで力を制御できるならって思って、刀の中に色んな術が書いてある書物があるのを思い出して、試してみようって思ってね!
   それで冒険者が傷つかない、プラスこっちに来れなくする術を探したらこんな術があったってわけ!でも、念には念を入れようってことでノノちゃんの炎を氷にぶつけて、水蒸気を出して視界を奪おうって作戦を思いついたんだ!ね?ノノちゃん?」
   「そ、そうでしゅ……」
   
   俺は今マシロの成長に感動してる。今まで威力も制御できないでいたのに、今や術をも使いこなしている。

   「マスター!凄いでしょ?褒めて褒めて褒めて?」
   「俺の感動返してくんない?」

   結局マシロはマシロだった。

   「リン、本当に俺たちについてきて良かったのか?」
  
   俺は改めてリンに問いた。ここからの旅は危険を伴う。それに魔王を倒すときた。死ぬ可能性だって充分ある。わざわざリンがついてくる必要はない。
   だからもう一度、リンに問いた。
   すると、リンは

   「うん!だってなんか浩介たちといた方が楽しそうだったし。何より浩介のこと気に入ったし!だから私もついてく!そして、私が浩介を守るよ!」

   そう言って、無垢な笑みを浮かべた。

   「……そうか」

   女性に守られるっていうのは変な話だが、リンがここまで一緒に行きたいと言ってるのだ。拒否する理由がないしな。
   ……やっぱり俺は女子の笑顔に弱いみたいだ。

   「じゃあ、一緒についてきてくれ!」
   「うん!」

   こうして俺たちはガナタルを出て、魔王討伐の旅に出るのであった。


 〜〜〜

   一方その頃。
   水蒸気が晴れ、浩介たちを完全に見失ってしまった冒険者たち。

   「ちっ……!見失っちまったか……!」
   「でもよ、リンちゃんがあんなに人と共に行動してるなんてことないぞ。いつも臨時でパーティに入ってもらうだけだったしな」
   「確かにな、それに俺たちに最後『ごめん』って言ってやがった」
   「多分、なんかしらの事情があるのかもしれんな」
   「やっと、一緒にいたいと思える仲間を見つけたんだな、リンちゃん」
   「やっぱり、『純真のリン』だった!『汚物』なんか言っちまってすまねぇ!」
   「じゃあ、リンちゃんの新しい旅の門出に乾杯するかぁ?」
   「「「おおおお!!」」」


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