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忍者修行は楽じゃない?!〜普通ライフを送るために修行せざるを得ませんでした〜

フユヤマ

33話 修行の成果

 

   「いいか、俺……!冷静になるんだ。状況の整理からだ。まず、確かボス……が目の前にいて。『転移布』という黒い布を被せてきて。そして、気づいたらここに寝ていたと……」

   俺は深呼吸をし、この異世界の流れる綺麗な空気を体に取り込む。……って、もう自分から異世界って現実見てんじゃねぇか!

   「ダメだダメだ!……そうだ!何も言わずにいきなり異世界に転移させるわけがない!……うん、多分」

   俺はぐるぐると歩き回りながら考えていると、ズボンのポケットに何か違和感を覚えた。

   「ん……?何か入ってる?」
   
   ポケットの中身を取り出すと、紙らしきものが折りたたんで入っていた。

   「何か書いてある……」

   それは師匠からの手紙だった。

   『浩介へ。
   この手紙を読んでるということは今頃異世界で慌てふためいているころだろう。でも安心しろ。これはボスのマナと『転移布』を組み合わせた術だ。あるモノを転移布で覆い、ボスのマナを流し込むと、どこにでも飛ばすことができるというチート術だ。どこにでもということはもちろん異世界にも飛ばすことも可能ということだ』

   「…………」

   そうかぁ、モノだもんなぁ。モノって『物』だけじゃなくて『者』とも書くもんねぇ……。
   とりあえず、続きを読むか。

   『もう既に気づいていると思うが改めて説明する。今回の試験場はお前のいる異世界だ。
   そこの異世界にいる『魔王』を倒すか降伏させろ。これが今回の試験内容だ。しかし、今のお前レベルだと倒せないと思う。だから魔王城に行く際に、マナの性質変化その2をやれ。
    その1では形状を変化させていたが、その2は『属性』だ。これもイメージすればできるものだ。しかし、今までよりさらにイメージしなければ発動しない。
   属性は火、水、風、土、雷がある。ちなみに今までのは『無』属性というやつだ。それにこれらの属性が加わるとマナ補強やエンチャント、マナ放出の時に威力が格段に跳ね上がる。
   そういうことだ。魔王を倒せば下忍になれる。心して臨め。
   追伸
   期限は夏休みが終わる一日前までだ。それまでに倒さないとその場で強制的に地球に戻ってきてもらう。たとえ、魔王を倒したとしても、その期限の日までは帰れない。
   ほんの少しの異世界ライフを楽しめ。
                                                             師匠より』

   「…………」

   手紙を読み終えた俺は、空を仰ぐ。そして、決心する。よし!魔王を倒しにいくか……

   「ってなるかぁぁあああ!!」

    俺は悲痛の叫びをあげながらその手紙をビリビリに破り捨てた。あまりのショックで膝をついてしまう。

   「なんで、そうなるぅ?!俺まだ下忍じゃないのになんでいきなり魔王を倒さないといけないの?!レベル高すぎだろ下忍?!」

   膝をついた状態でエンチャントされた拳を地面に叩きつけ、ストレスを発散させながら、試験に対しての文句を垂れていた。
   エンチャントしていたせいで地面が抉れ、周りに重低音が響く。
   
   俺はこの数週間、剣術しか師匠から教わっていなかった。だから、マナのコントロールを密かに修行していたのだ。
   そのおかげもあって今ではいちいち集中してマナを
 出さなくても、自然に出せるようなところまでは来たのである。

   「……って、ちょっとやりすぎた……」

   地面はいつのまにか俺を中心に半径数メートルのクレーターができてしまっていた。

   「ちょっと怖いけど……人のいるところに行ってみるかぁ……!」

   俺はムクりと立ち上がり、先ほど俺の後ろの奥の方に見えた街の方に足を運ぼうとすると、

    ビィィイイン!!

   俺の危機察知能力が発動した。
   
   やばい、後ろ向いたら負けな気がする……!
   俺は恐る恐る後ろを振り向くと、そこには、

   『ぐるるるっ……!』

   体長5メートル以上あり、鋭い爪、鋭い牙を剥き出し、鋭い眼光で俺の様子を伺い、よだれがポタポタと地面に垂れており、そこにはよだれの水溜りができている。
   毛は全身紺色の俺が少し見上げてしまうぐらい大きい狼が唸りながらそこにいた。
  恐らく、俺が地面を殴って音が響いたせいでここに来てしまったのだろう。

   「……ハローアンドグッバイ……!」

   俺はそう囁くように言うとその場から逃げだしていた。

  
 〜〜〜

   「ぎゃぁあああ!無理無理無理!!なんでいきなり転移してきてこれなんだよぉ?!」

   現在、俺は先ほどの狼に追われていた。俺はマナを足に集中させ全速力で狼から逃げるが、

   『ぐらぁぁああ!』

   そう簡単には逃げれねぇかぁ!

      「くそっ!仕方ねぇかぁ、畜生!」

   俺は少し狼との間を空け、『羅』を取り出し、応戦状態になる。
   
   「マシロっ!出てこい!」
   「あいあいさー!」

   刀にそう命令すると、瞬時にマシロがぼんと妖怪チックに出てきた。

   「マシロ、あいつの足止めを頼む!」
   「おっけー!任せて!いやぁ、それにしてもまさか異世界にくるとはねぇ……!」

   マシロは辺りをキョロキョロしながら感嘆の声をあげる。
  
   「いやそんなことより!あいつの足凍らせろよ!」

   幸い、狼は俺がいきなり足を止めたことに警戒し、少し遠めで様子を伺っている。まさにハンターだ。

   「もぉ、少しは浸らせてくれたっていいのに……」
   「いや、そういう状況じゃなかったじゃん?見てたよね?」
   「わかりましたよ!その代わり後でマスターのマナちょうだいよね!」
   「あぁいくらでもやるからあいつをどうにかしてくれ!」
   「よしっ!交渉成立……!っと」

   いつのまにか狼の足元とその周辺は氷が一面に広がっていた。相変わらず鮮やかだな……。

   「よし!それじゃあ!」

   俺はその場から大きくジャンプをする。周りは氷になっていて、滑ってしまうからだ。そして、狼の頭上に刀を振り下ろそうとする。
   しかし、

   『ガァァアッ!』

   狼が吠えると、周りの地面から土塊が3個浮かんできた、と思ったら俺めがけてそれを飛ばしてくる。

   「狼ってそんなことできるのかよ?!」

   俺は咄嗟に1個目の土塊を避け、2個目を真っ二つに斬る。しかし、3個目が間に合わない。
   だから俺は少しだけ刀にマナを送り、刀身の一部分に集中させる。そして、その部分に土塊を当て右に逸らすようにすると土塊は勝手に右に逸れていった。
   これが俺がこの前まで習っていた剣術「受け流し」だ。しっかり修行の成果が出ていた。
   後は狼の頭めがけて刀を振り下ろすだけだ。

   「おらぁぁああ!!」

   俺は刀を狼の脳天に振り下ろそうとした瞬間、

   『セイクリッド・ブラスト!』

   まるで必殺技のような叫び声が響いたかと思うと、脳天まであと数センチというところで狼が白い閃光を放ち、爆発した。
   そして、俺もその爆発の爆風に巻き込まれてしまった。
   

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