忍者修行は楽じゃない?!〜普通ライフを送るために修行せざるを得ませんでした〜

フユヤマ

22話 式神の能力



  3つの刀、『凍』、『焔』、『樹』が合体し『羅』になってから1時間後。

  俺は師匠から刀を隠す用の黒色の風呂敷みたいな包みを受け取り、師匠が俺に初めてマナを見せてくれたあの山の中に来ていた。
  師匠が言うには、
  
  「マナで刀全体を包んで性質変化すれば、忍者以外、要するに一般人には見えないぞ」

  だから俺は、

  「だから、最初から言えよ!?一応袋はもらっとくけど!」

  と、ツっこんどいた。
  本当にあの人は情報の提供が遅い。
  ちなみに、俺が消滅させた場所近辺は立ち入り禁止になっていた。
  そりゃそうか……。
  それより、こいつらの能力を見ないとな。
  正直、期待している。マシロの能力が意外と強かったからだ。
  触れたものやその周囲を凍らす、だっけ?
  しかも、指パッチンで元通りだ。これはだいぶ優れているに違いない。
   
  「マスター?何私をジロジロ見てるの?変態さんなの?」
  「冗談でもやめて?!そんなんじゃないから!」

  こいつはいきなり何を言いだすんだか。

  「よし、じゃあこれからノノとアマの能力を見ていく。マシロは後でだ。てことで、ノノからやってみてくれ」
  
  俺がノノに指示すると、ノノはこくりと頷き近くにあった少し大きな木の前に静止する。
  
  「で、では……いきます」
  「いいよノノちゃん!ぶっ放しちゃえぇ!!」
  「お前はうるさい」
  「あで?!」

  俺はマシロの頭にチョップをいれた。
  その間にノノは後ろに背負っていた瓢箪を下ろしていた。
  ドスンッ!!と、大きな音を立てながら。

  「いや、重すぎじゃね?!それ!」
  「まぁ、ノノちゃんはああ見えてとても力もちだからね」
  「ギャップがありすぎじゃない?いくらなんでも……」

  人見知りでおとなしそうなノノが、あんなでかくて重い瓢箪を常日頃背負ってる……。
  人は見た目だけで判断しちゃいけないってよく言うけど、この言葉考えた人天才だな……。
  と、ここでノノが瓢箪の栓を抜く。
  
  がぶがぶがぶがぶっ!と、そのまま一気に中に入ってるであろう酒を胃に流し込んでいく。
  腹が酒のせいで膨れていた。 
  そんなに飲んだのかよ……。
  そして、今から何かを吹き出さんとばかりに頭を後ろにする。
  すると、ノノの額から角らしきものが2本生えてきた。

  「あれは、……角?」
  「うん、ノノちゃんは能力を使う寸前に角を出して能力のパワーを高めるんだ。見ればわかるよ」

  すると、ノノを元々包んでいたマナのオーラが口元に集中していく。そして、そのまま、

  「ブハァァァアア!!」

  と口から火を放った。目の前にあった木はもちろん、奥にさらに奥にある木までもを根本から焼き尽くした。

  「……おぉ…!」
  「すごいでしょ?ノノちゃん?」

  とマシロが共感を求めてくる。
  うん、確かにすごいんだよ?すごいけどさ……、

  「これ、後始末どうすんの……?」
  「……?あぁ、大丈夫!それはアマちゃんがなんとかしてくれるから!…多分」
  「おい、自信なくすなよ、どうすんだよ」

  完全に後のこと忘れてた!
  ていうか、ノノはあそこで何倒れてんだ?
  
  「あぁ、そおいえばノノちゃんは酒に弱いからすぐに酔っ払って倒れちゃうんだよねぇ」
  「そんなんでやっていけるのかよ…」
  「まぁでも刀の中にいる時は全力は出せないから大丈夫じゃない?」
  「それなら良いんだけど…」

  それにしても凄まじい威力だったな……。
  刀の中にいる時も能力が使えるってことは刀から火がでるってことか。…なにそれカッコよ!
  俺はノノに駆け寄り抱っこする。
  
  「あぁ、ご主人が私のことお姫様抱っこしてりゅ〜…。うれしぃいなぁ……」
  「酔いすぎじゃね…?」

  あんなに人見知りなのに今日初めて会った男にお姫様抱っこされてるのに嬉しいって……。
  照れるなぁ……!

  「マスター、鼻の下伸ばしすぎ…」
  「え、そんなに?!」
  「とにかくノノちゃんのことは任せて。次にアマちゃんの番でしょ?」
  「そうですね、では私はあの焼かれた木の根元の方で準備しますね」

  アマはそう言うと焼かれた木の根元に手をあてて静止していた。

  「アマちゃんはああやって集中してから能力を使うんだよ」
 
  マシロはノノの額に掌をかざして頭を冷やしていた。

  「ルーティンってやつか、ちょっとカッコいいなぁ」
  「旦那様、準備できました」
  「おう!じゃあやってみてくれ!」

  俺がそう言うと、アマがかざしていた場所が緑色に光輝く。
  すると、焼け焦げて何もなかったであろう場所からズンズンと木が生えていく。さっきよりも大きく成長している。
  す、すげぇ……!……だけど、俺もそこまで馬鹿じゃない。どうせ……
  俺はアマの方を見ると、アマはガリガリになっていた。顔色も青くなっていた。

  「だ、旦那…様……。私の、の、能力は…木の成長、え、栄養奪取と風をあ、操るという、の、能力です……、うっ…」
  「もう何も喋るな!死ぬぞ?!」

なんでこんな茶番みたいなことしないといけないんだ。
  ん……?栄養奪取?

  「……おいアマ?この木に触れて栄養を摂るんだ。そうすればお前は助かる」
  「い、いやで、す。き、木が可哀想です…」
  「そんなこと言ってる場合かよ!」
  「大丈夫だよ。アマちゃんは何でもいいけど光を浴びれば自然と元通りになるから」
  「なにそれ光合成?!」

  そっか、なら平気か。

  「アマも刀にいる時は全力だせないんだろ?」
  「……え、えぇ、そ、うです…」
  「ごめん、喋らせちゃって」
 
  刀で木に触れると木が成長したりするってことか。
  しかもさっき風を操るって言ってなかったか……?
  てことは刀を振れば、風を飛ばすことができるってことか?!なにそれカッコよ!

  「じゃあ、最後にマシロ!」
  「了解!早速いくよ!……はっ!」
  「ちょっ、まっ!はや……!」

はやすぎる……!そう言おうとしたのだが、俺、ノノアマ、そして周囲の木が氷漬けにされてしまった。

  「私、うまくコントロールできないんだよね…」
  
  マシロは頭を手でぽりぽりかいて、てへっ!と言ってみせた。
  こいつら、刀の中にいた方が役に立つんじゃね?
  氷漬けにされながら思ったことだった。
 
 

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