忍者修行は楽じゃない?!〜普通ライフを送るために修行せざるを得ませんでした〜

フユヤマ

6話 学校生活with修行


現在時刻、9時30分
……俺は、校門の前で腕立てをしていた。
いや、正確に言うとされていた。
15Kmも走らされた後で!
運動部に入部していれば、もう少しましに走れていたかもしれないが、生憎俺は帰宅部なので、ゼーゼーハーハーと息を絶え絶えにしながら、なんとか学校まで辿り着くことができた。しかも、初めてあの家から登校したので、G◯◯gl◯マップを利用しながらでないと登校できなかった。そのせいもあって、今俺は堂々と遅刻し、校門の前で堂々と腕立てをしていた。
生徒指導の先生に「とっとと中に入れ!」と怒鳴られてしまったが、俺は「遅刻してしまった自分に罰です!終わったら、中に入ります…!」と馬鹿みたいなことを言ったら、その先生は熱血系なのだろうか、涙ぐましく、「そうか、頑張れよ!早めに終わらせて授業にしっかり参加しろよ…?」と言って見逃してくれた。……無理矢理でも良いから教室に入れろよ、先生……。
くそっ…!なんでこんなことをしなきゃいけねぇんだ……!どうせ修行するならもっと忍らしい修行したいんだけどなぁ。
腕立てをなんとか終わらせて、次に腹筋をしようとした瞬間、
キーンコーンカーンコーン
1時間目終了のチャイムが鳴った。
もう1時間目終わったのかぁ……。
……………よし、やめるか。
俺は罰をサボり、自分の教室に向かうことにした。

教室に向かう最中に師匠と出くわすかと思ったが、そんな事もなく何事もなく普通に教室に入ることができた。2組の教室、まぁ俺のクラスに入ると目の前には腕組みをしながらそいつは立っていた。

「もう!なんで来るのこんなに遅いのさ!」

そう、幼稚園生の頃からの幼馴染である新島 紗由理
(にいじま  さゆり)だ。茶髪(地毛)のロングで、俺との身長差は頭1.5個分。結構低めだ。明るい性格なので、クラスのみんなからは「さゆりん」と愛称があり人気者である。

「あぁ、悪い。ちょっと色々あってな……。」

「色々ってなんなのさ?また「不幸」なことが起きたの?」

紗由理は唯一俺の「不幸体質」を知っている一般人だ。

「まぁ、不幸といえば不幸……なのかな?まあ、また今度話すよ。なに、心配するほどのことではないよ。」
 
そう言って俺は、紗由理の頭を撫でた。紗由理はとても心配性だ。しかも俺の「不幸」のことになると特に心配になる。
……まだ昔のことを引きづってんのか…。

「……うん、わかった…。でも隠し事はなしだよ?私しか浩介の事情、知らないんだからさ…。」

「あぁ、わかってるよ。」

そう言って俺は紗由理の頭を撫でた。昔からこうすると紗由理は落ち着く。そして、とても嬉しいがる。
現にさっきまで心配顔になっていたが、頭を撫でたことにより顔が綻んでいる。
しかし、俺以外が頭を撫でるとめっちゃ怒るんだよなぁ…。そこらへんがよくわからない。まあ、良いけど。
俺が紗由理を落ち着かせてると、

「ヒューヒューお熱いねぇ、二人とも〜」
「やっぱり将来良い夫婦になりそうねぇ〜」
とクラスの皆から茶化された。
…いつも俺と紗由理が話してると何故かこうも茶化される。別に付き合ってないのになぁ…。

「そ、そんなんじゃねーよ!な、なぁ?紗由理…?」
くっ…!わかっていても動揺というのは隠せないものなんだなっ……!

「……夫婦……ふ、夫婦……」

紗由理はブツブツ言いながら硬直していた。
そして、
「はっ…!そ、そんなわけないじゃん!ば、馬鹿ーーー!!」
「ぐへぇっ!!」

そして、何故か俺が腹を殴られた。さっきまで長距離走ってたからものすごいダメージ…!多分、走ってなくても結構痛かったと思う。俺はその場で膝をつき悶えていた。すると、紗由理が心配そうに、
「だ、大丈夫…?浩介…?」
とまた、心配顔になって言った。
「ッ!?」

その時、紗由理の顔を見て、昔のことを思い出した。
……あぁ、前にもこんな顔見たことあったなぁ……。
あの時は本当に大変だった…。まじで死ぬかと思った。まぁ、今はその話はいい。俺が悶え死にそうになんだっ…!

「あ、あぁ……大丈夫…」 
そう言うと、
「本当、大袈裟なんだから……」
そう言って紗由理が手を出した。
紗由理はなんだかんだで良い奴なのだ。それは幼馴染である俺がよく知っている。
「ありがと……」
そう言って、紗由理の手を掴もうとした瞬間、
「ガラガラガラパーン!!」
と思いっきり教室のドアを開けるが響き、
「おい、浩介、高島浩介はいるか…?」

「げっ……し、師匠」
師匠は教室を見渡し、俺を見つけるとズカズカと教室に入ってきた。
周りでは「え、あの人ってたしか……」とか「高島とどういう関係…?」とか、一部の男子からは「高島ーー!俺たちは仲間だと思ってたのにー!」と嘆いている奴もいる。俺は知らん、お前たちの仲間になってない!まぁ、心の中で言っても仕方ないけど……。

「そうだぞ、浩介。心の中で言ったってどうにもならないぞ?」

「あんただけは別だ!あんただけは!」

この人にツッコミしかしてないような気がする…。
俺が師匠にツッコミしてると、制服の袖を引かれた。

「浩介…その人は……?」
そっか、一応、紗由理には言っとくか。
「この人は俺の師匠だ。まぁ、色々あって今は弟子をしてるんだ。詳細はちょっと長くなる……」

「そうだ、私はこいつの師匠をやっている者だ。今日から私とこいつが1つ屋根の下で暮らし、共に汗水流して修行をし、夜になったらもちろん〜……」 

「ぅおおぉぉいぃぃい!あんたは何を言ってるんですかぁああ?!!」
 
本当にツッコミが多くて困る……。てか走ったあとだからツッコミにめっちゃ体力とられるんですけど…。

「……よ、夜になったら……?」

「おーい?紗由理さーん?興味示さないでくださーい?」

周りはもう騒然、「えー!?嘘?!」とか、「高島お前だけは殺す!」とか、誤解がどんどん広まる。
しかも、紗由理までも誤解してるときた。
そして、紗由理は泣きながら、

「こ、浩介の……浩介の馬鹿ぁぁあああああああ!!」
「ぐほべっ…!!」
本日二度目の腹パン……。まじでそろそろ死ぬって……。
そして、空気が読めないのか師匠が
「倒れてるとこ悪いが、昼休み修行するからな?」
と真顔で言ってきた。当たり前みたいな顔で。
いや死なす気かよ!ってツッコミたいけど、今俺にその体力も気力もない。

「あぁ、そうだな、死ぬ気で修行しろ。じゃあ、また昼休みな。もちろん弁当持ってこいよ?」
そう言って、すぐに教室を出ていった。

「ゲホッ……ま、まじかよ……」

俺は絶句していた。ここまで今までの日常が崩されるとは思ってなかったからだ。
俺は何とか立ち上がると、

「んで、浩介は何の修行してるの?」
と、紗由理が尋ねてきた。
あ、そういえば言ってなかったな……。でもここで、「俺、忍者の修行してんだぜ?」って言ったらひかれるな……。うん、絶対ひかれる…。やめよう、だから俺は、

「ま、まぁまぁ色々と…な?」
と、誤魔化した。しかし、紗由理は浮かない顔だった。
「ふーん。まぁ、良いけど。浩介があんな美人さんと1つ屋根の下で暮らしてても別になんとも思わないから良いけど…?」

あれ?なんか話ズレてね?まあ、誤魔化せたから良いけど…。
ちょうどその時、キーンコーンカーンコーンと2時間目開始のチャイムが鳴った。俺たちの学校の休みは10分だが、こんなに長い10分に感じたなぁ……。
あぁ、昼休みしんどい……。
まぁ、やるからにはやるけどさ!
そう覚悟し、重い足取りで席に着いた。


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