英雄の終わりと召喚士の始まり
1-1 うにぃにあす。
「ん……いい加減にしろよな…俺……」
嫌な夢だ。
忘れたい過去。
ドス黒い悪意と、輝かしい時代の残骸。
夢ってのは脳が記憶の整理をしているらしい。
整理してまとめてくれるぐらいならそのまま捨て去ってくれれば楽になれるのに。
なんて益体もない事を考えながら、弱まった焚き火に薪をくべる。
この辺りは馴染みのある森のはずだ。
方角さえ分かれば、遅くとも夕刻までにはグリトニルに着けるだろう。
まずはゆっくり寝たい。いやその前に飯を…もう食糧も残りわずかだ。
「うにぃ〜?」
もたれていた木の後ろから変な鳴き声が響くと、
茶色い細長い小動物がその小さな手足をちょこちょこと動かしながら音も立てずすり寄ってくる。
「ん、ごめんごめん。見張りありがとな、ほらっお礼に残りの干し肉食っていいぞ」
「うにっ!」
ペシッ!鋭い爪のついた短い手?足?で差し出した手には触れる事なく器用に干し肉だけ払われる。
「あッ!貴重な食糧だぞ!ワガママ言うな!」
「に〜にうにぃ!うにっ!」
「ウニスケこのやろー、グルメぶりやがって!分けてやるだけありがたいと思えこらっ」
このうにうに鳴いてる変な小動物は俺の相棒の1人、召喚獣でカマイタチのウニスケだ。
俺が人間の食事を与え続けてしまったが為にかなりの美食家に育ってしまった……
本当は召喚獣は術師の魔力があれば腹も減らないし、食べる必要もないのだが……このウルウルした目には抗えない魔力がある。
うん、俺に罪はない。
「うに!うにに!うにぃ!!」
「野営中はどんな食糧も貴重なんだぞ?!餓死する奴だって一杯いる!そんなこともわからん奴にやる飯はない!」
「にっ!…うにぃ……うにぃにあす。」
と鳴きながら頭を下げるウニスケ。
うにぃにあすはゴメンナサイ。の意味だ…たぶん。
「…ん、よし、いい子だ。分かってくれたらいいんだ。でもさっきの干し肉が最期の食糧なんだ。大切に食べないとな」
「うにぃ〜に?……うに!うに?」
少し眉を下げ、干し肉を見つめたかと思うと断腸の思いでさっきの干し肉を自慢の爪で半分切って差し出してくる。
「あははっ、半分こしてくれんのか、ウニスケ!うにぃにあす。」
今のうにぃにあすはありがとう、の意味だ。(勿論こんな言葉は存在しない)
伝わってるはず…たぶん…
相棒の優しさ?(そもそもウニスケは食べる必要がない)に少し癒されつつも
遠慮なく差し出された半分の干し肉を受け取って齧り付くと不意に腰の短剣に手を添える。
――なにかいる――
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