転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。
23ページ目「されど僕は二人と競う」
僕達は旅路の途中だ。
行先は森人族の住む都市である〈コワウルヌ〉。ここは旅人らの中では悠久の地と、評判である。
その大きな理由としては大自然に囲まれたその地は、魔素が濃厚でや空気が綺麗である。この世界の療法の中にはこの地で行うセラピーもあるそうだ。
次の理由としては都市に住むのが森人族であるために皆美形である、という所だろう。
冒険者でもこのコワウルヌに立ち寄った時には美形である森人族の男性や女性に一度は見蕩れてしまう。見蕩れすぎて入口で動かなくなった人もいるとか、なんとか。
僕達が商業都市ハーメリアルより進むこの道は、一本の直線であり、街道である。二つの都市間は大分離れているため、片方の都市からもう一つの都市を肉眼で見ることは出来ない。但し、望遠鏡や魔法などがあれば難しくないかもしれない。
────そこまでして見る用も無いとは思うが。
街道は既に半分以上進んでおり、残りは2km程だ。目を凝らすとコワウルヌが見えてくる。
大自然に囲まれていると言うだけはあり、街道周囲に草木が茂っている。コワウルヌに近付くにつれて、木の高さが上がっているようにも見える。
と同時に段々と辺りが暗くなってくるのは仕方の無い事だろう。光が遮られているのだ。という事は当然、あれもやって来る。
「はぁ……タクト。また来た。」
「うん、僕も見えた。ドーン。」
〈無詠唱〉スキル持ちの僕は魔法を唱える必要があるが、何となく掛け声的なものを出してみたくなった。そこで「ドーン。」と言っているのだ。別に何かの魔法の発動文句になっている訳では無い。
盗賊達が現れたら〈無詠唱〉で魔法を撃ち込む。勿論手加減無しだ。手加減してあげたら盗賊達の面目が丸潰れだからね。ついでに盗賊達が持っているスキルも手に入れたいが、スキルを持っていない。
「来たわよ。」
「あーうん。ドーン。」
「来た。」
「ドーン。」
「来」
「ドーン。」
「……」
「ドーン。」
いいかげん飽きた。そろそろ大技を放ちたくなってくる頃なのだが、コワウルヌの人達とは友好的な関係でいたいから、大技が使えない。 
はっ!まさか盗賊達はそれを読んでいたのか……。恐るべし……。
「隠れたとーぞくだ~れだ。」
ドーン。また掛け声と共に気配を探知して、遠距離で魔法を放つ。それを三十回ほど続けた。
「これで隠れた盗賊全部気絶させたよ。」
よし、これでコワウルヌまでは盗賊達に悩まされることは無い。良い仕事をしたから汗をかいたようだ。汗も滴るいいおと……すみません、嘘をつきました。
……あっ、でも今度は暇になった。王女様が追いついてくれると嬉しいけど……。見えないし、無理だな。こうなったら……。
「リル、エレナ。勝負をしないかい?」
僕は笑顔でそう告げた。
「勝負?」
「うん、誰が一番最初にコワウルヌに辿り着けるか。あっ、でもコワウルヌの人に来る途中で見つかったら負けね。」
「くっ……。」
勿論、リルが竜になって本気パワーを出したら勝てる筈が無いからだ。念には念を。
「飛ぶのはあり。じゃあ用意スタート。」
一方的にスタートを告げる。瞬間に〈半魔族化〉。マッハに近い速さで街道の残りを駆ける。
「「あっ!」」
リルとエレナも遅れてスタート。しかし、この差は大きい。僕に勝てるかな……?自然と笑みが零れる。これで僕の勝ち────
「たーくと。」
────横にはリルがいた。レベル差狡いと思います。イエローカードッ!!
「タクト、遅くないかしら。」
上には同じくマッハで飛翔するエレナが。何なんだろう、このパーティー。人間じゃないじゃん。あっ、僕は魔人。エレナは森人族、リルは竜族じゃん。まともな人間いないんだ。
ここにして漸く己の過ちに気付いた僕は、言葉の綾を巧みに利用して、僕の勝ちを揺るぎないものにする事にした。
「……ドーン。」
勿論〈無詠唱〉だ。二人の走っている前に闇の障壁が出来たけど、手が滑っただけだ。二人は急ブレーキをして、どうにかぶつからずに済んだようだ。
「おっさきー。」
僕は再び駆ける。今度は先程よりも速く。風と一体化してるような気がする。風が心地良い。
「……なっ!!」
僕は目の前に突如として現れた氷壁を躱そうと身体を無理矢理捻った。どうにか躱せた。これは……
「ちっ、リルか。」
「おっさきー。」
まさか鸚鵡返しされるとは……。じゃあ、僕は鸚鵡鸚鵡返しだっ!鸚鵡返しに鸚鵡返しをする技……。要するに同じ技をするだけだっ!
僕はリルから貰ったスキルを最大限に駆使することにした。最大限の皮肉を込めて。〈氷属性強化〉を使う。〈無詠唱〉で氷属性の魔法を発動。
「またっ!?」
リルが若干キレる。但し、これに追い討ち。
「おっさきー。」
「……いや、それは私の台詞よ。」
まさかここでエレナが来るとは……。さっきから姿が見えないと思ったら……。だがっ!!僕はギリギリでエレナの前に五重氷壁!!自分で咄嗟に付けた名前だけどっ!
「キャッ!」
────これで僕の勝ちだ。
僕は勝利を実感すると震えそうになった。これぞ王者の余裕ってやつですよ。僕は二人が出られないように氷壁を何十層にもして、優雅に街道を歩く。
残りは100m。僕は歩く。その時だった。何処かで竜の咆哮が聞こえた気がした。だが、ここに竜がいる筈が無い……という事は。
僕が背後を振り返るのはもう一つ理由があった。巨大な気配が近付いていたからだ。それは竜だった……。紛れもなくリルである。
さらにはエレナまで猛スピードで飛翔している。恐らくコワウルヌに近付いて妖精の力が強くなっているのだ。だからこそエレナのスピードが上がる。
「ヤバっ!」
これは果たして敗北を悟った事による言葉か。若しくはこの後に二人に何か言われる事を悟った事による言葉か。いや、どちらもだろう。タクトは少々身の危険も感じていた。まさか二人がここまで勝負好きだったとは思いもよらなかったのだ。
竜の飛ぶスピードで僕が飛ばされかねない。急がなければ。
そうして、三人は競い合ってコワウルヌに辿り着く。
「「「ハァハァハァ……。」」」
「ど、どうしたのですか?」
そう尋ねてくるのはコワウルヌの門番さん。
「何でもないです。それよりもコワウルヌに入れますか?」
「えーっと、どちら様でしょうか?コワウルヌに入るには身分証明書が必要なのですが。」
コワウルヌは森人族の巨大な集落だ。入るには国やギルドから発行される特別な身分証明書が必要となる。
「はい、どうぞ。」
僕は三人分を出した。門番さんはそれを確認して、よしと頷くとこう言った。
「ようこそ!森人族の住むコワウルヌ……人呼んで〈憩いの都市〉へ!!」
行先は森人族の住む都市である〈コワウルヌ〉。ここは旅人らの中では悠久の地と、評判である。
その大きな理由としては大自然に囲まれたその地は、魔素が濃厚でや空気が綺麗である。この世界の療法の中にはこの地で行うセラピーもあるそうだ。
次の理由としては都市に住むのが森人族であるために皆美形である、という所だろう。
冒険者でもこのコワウルヌに立ち寄った時には美形である森人族の男性や女性に一度は見蕩れてしまう。見蕩れすぎて入口で動かなくなった人もいるとか、なんとか。
僕達が商業都市ハーメリアルより進むこの道は、一本の直線であり、街道である。二つの都市間は大分離れているため、片方の都市からもう一つの都市を肉眼で見ることは出来ない。但し、望遠鏡や魔法などがあれば難しくないかもしれない。
────そこまでして見る用も無いとは思うが。
街道は既に半分以上進んでおり、残りは2km程だ。目を凝らすとコワウルヌが見えてくる。
大自然に囲まれていると言うだけはあり、街道周囲に草木が茂っている。コワウルヌに近付くにつれて、木の高さが上がっているようにも見える。
と同時に段々と辺りが暗くなってくるのは仕方の無い事だろう。光が遮られているのだ。という事は当然、あれもやって来る。
「はぁ……タクト。また来た。」
「うん、僕も見えた。ドーン。」
〈無詠唱〉スキル持ちの僕は魔法を唱える必要があるが、何となく掛け声的なものを出してみたくなった。そこで「ドーン。」と言っているのだ。別に何かの魔法の発動文句になっている訳では無い。
盗賊達が現れたら〈無詠唱〉で魔法を撃ち込む。勿論手加減無しだ。手加減してあげたら盗賊達の面目が丸潰れだからね。ついでに盗賊達が持っているスキルも手に入れたいが、スキルを持っていない。
「来たわよ。」
「あーうん。ドーン。」
「来た。」
「ドーン。」
「来」
「ドーン。」
「……」
「ドーン。」
いいかげん飽きた。そろそろ大技を放ちたくなってくる頃なのだが、コワウルヌの人達とは友好的な関係でいたいから、大技が使えない。 
はっ!まさか盗賊達はそれを読んでいたのか……。恐るべし……。
「隠れたとーぞくだ~れだ。」
ドーン。また掛け声と共に気配を探知して、遠距離で魔法を放つ。それを三十回ほど続けた。
「これで隠れた盗賊全部気絶させたよ。」
よし、これでコワウルヌまでは盗賊達に悩まされることは無い。良い仕事をしたから汗をかいたようだ。汗も滴るいいおと……すみません、嘘をつきました。
……あっ、でも今度は暇になった。王女様が追いついてくれると嬉しいけど……。見えないし、無理だな。こうなったら……。
「リル、エレナ。勝負をしないかい?」
僕は笑顔でそう告げた。
「勝負?」
「うん、誰が一番最初にコワウルヌに辿り着けるか。あっ、でもコワウルヌの人に来る途中で見つかったら負けね。」
「くっ……。」
勿論、リルが竜になって本気パワーを出したら勝てる筈が無いからだ。念には念を。
「飛ぶのはあり。じゃあ用意スタート。」
一方的にスタートを告げる。瞬間に〈半魔族化〉。マッハに近い速さで街道の残りを駆ける。
「「あっ!」」
リルとエレナも遅れてスタート。しかし、この差は大きい。僕に勝てるかな……?自然と笑みが零れる。これで僕の勝ち────
「たーくと。」
────横にはリルがいた。レベル差狡いと思います。イエローカードッ!!
「タクト、遅くないかしら。」
上には同じくマッハで飛翔するエレナが。何なんだろう、このパーティー。人間じゃないじゃん。あっ、僕は魔人。エレナは森人族、リルは竜族じゃん。まともな人間いないんだ。
ここにして漸く己の過ちに気付いた僕は、言葉の綾を巧みに利用して、僕の勝ちを揺るぎないものにする事にした。
「……ドーン。」
勿論〈無詠唱〉だ。二人の走っている前に闇の障壁が出来たけど、手が滑っただけだ。二人は急ブレーキをして、どうにかぶつからずに済んだようだ。
「おっさきー。」
僕は再び駆ける。今度は先程よりも速く。風と一体化してるような気がする。風が心地良い。
「……なっ!!」
僕は目の前に突如として現れた氷壁を躱そうと身体を無理矢理捻った。どうにか躱せた。これは……
「ちっ、リルか。」
「おっさきー。」
まさか鸚鵡返しされるとは……。じゃあ、僕は鸚鵡鸚鵡返しだっ!鸚鵡返しに鸚鵡返しをする技……。要するに同じ技をするだけだっ!
僕はリルから貰ったスキルを最大限に駆使することにした。最大限の皮肉を込めて。〈氷属性強化〉を使う。〈無詠唱〉で氷属性の魔法を発動。
「またっ!?」
リルが若干キレる。但し、これに追い討ち。
「おっさきー。」
「……いや、それは私の台詞よ。」
まさかここでエレナが来るとは……。さっきから姿が見えないと思ったら……。だがっ!!僕はギリギリでエレナの前に五重氷壁!!自分で咄嗟に付けた名前だけどっ!
「キャッ!」
────これで僕の勝ちだ。
僕は勝利を実感すると震えそうになった。これぞ王者の余裕ってやつですよ。僕は二人が出られないように氷壁を何十層にもして、優雅に街道を歩く。
残りは100m。僕は歩く。その時だった。何処かで竜の咆哮が聞こえた気がした。だが、ここに竜がいる筈が無い……という事は。
僕が背後を振り返るのはもう一つ理由があった。巨大な気配が近付いていたからだ。それは竜だった……。紛れもなくリルである。
さらにはエレナまで猛スピードで飛翔している。恐らくコワウルヌに近付いて妖精の力が強くなっているのだ。だからこそエレナのスピードが上がる。
「ヤバっ!」
これは果たして敗北を悟った事による言葉か。若しくはこの後に二人に何か言われる事を悟った事による言葉か。いや、どちらもだろう。タクトは少々身の危険も感じていた。まさか二人がここまで勝負好きだったとは思いもよらなかったのだ。
竜の飛ぶスピードで僕が飛ばされかねない。急がなければ。
そうして、三人は競い合ってコワウルヌに辿り着く。
「「「ハァハァハァ……。」」」
「ど、どうしたのですか?」
そう尋ねてくるのはコワウルヌの門番さん。
「何でもないです。それよりもコワウルヌに入れますか?」
「えーっと、どちら様でしょうか?コワウルヌに入るには身分証明書が必要なのですが。」
コワウルヌは森人族の巨大な集落だ。入るには国やギルドから発行される特別な身分証明書が必要となる。
「はい、どうぞ。」
僕は三人分を出した。門番さんはそれを確認して、よしと頷くとこう言った。
「ようこそ!森人族の住むコワウルヌ……人呼んで〈憩いの都市〉へ!!」
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