転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。

深谷シロ

5ページ目「そして僕は再会する」

 僕がリルと出会ってから約1ヶ月。異世界に来て、早くも数ヶ月経っていた。自論だけど有意義な時間を過ごしていると時間って早く経つよね。今はそんな感じだ。

 僕のレベルが上がってきたので『刃蟻の根城』や『ブレイリルザードダンジョン』の出現する生物のレベルを上げてみた。平均レベルは10から40になった。今まで楽に倒せていた刃蟻カットアントも異世界転生した初日ぐらい苦戦していた。

 リルに関しては、それすら小指で十分みたいだけど。

 リルのステータスを〈情報〉スキルで検索してみたところ、表示できた。

◆◆◆◆◇ステータス◇◆◆◆◆

氷竜王ブレイリルザード

種族:竜
年齢:7810歳
性別:女

レベル:19520
HP:83169400/83169400
MP:32673625/32673625

称号:
氷竜王
迷路王

スキル:
氷属性強化(通常)- レベル10
変幻自在(通常)- レベル10

加護:
氷竜王の加護

パーティメンバー:
神代拓人

◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆

 レベルとHP、MPの値が異常である。これが竜王の力なのだろう。人間のなせる技ではない。それにしてもレベルに限界が無いとは思わなかった。僕でも流石にこのレベルに追いつける気はしない。何かが起こらない限り。僕的には何が起こって欲しい。

 僕もそんなこんなでレベルが急上昇していた。

◆◆◆◆◇ステータス◇◆◆◆◆

神代拓人

種族:人間
年齢:8歳
性別:男
職業:冒険者(青色)

レベル:59
HP:59102/59102
MP:94018/94018

称号:
氷竜王が認める者

スキル:
情報(固有)- レベル10
万能(固有)- レベル10
翻訳(特別)- レベル10
└竜言語(通常)- レベル10
保有地管理(通常)- レベル6
収納(通常)- レベル7
変幻自在(通常)- レベル3

加護:
転生神の加護、氷竜王の加護

パーティメンバー:
リル

保有地:
刃蟻の根城、ブレイリルザードダンジョン

◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆

 レベル59まで上がる冒険者は全冒険者の一握り程しかいない。過去最高のレベルは70と言われている。ここでの鍛錬を積んで是非とも越したいのだが、レベルが上がりにくくなっている。そして、最大の難点が『刃蟻の根城』の出現生物のレベル最大値が60なのだ。既に最大値まで上げているため、もう上げることは出来ない。そろそろ新しい地へ旅立ちたい。

 出来ることならばカハメルの地に家を建てたかったのだが、それも叶いそうにない。魔法が全く使えないのだ。使う為にここよりも大きな都市に行く必要がある。勿論、リルは一緒だ。リルと一緒にいるのは楽しいので大歓迎だ。

「リル~。」
「どうした?」
「その言葉遣いもう少し女の子っぽく出来ないの?」

 これは僕が前から思っていた事だ。竜の特性上、こういう話し方が普通のようだが、人間の住む地でこの話し方は、目立ってしまう。ましてや女の子なのだ。リルが気にしなくても僕が気にするのだ。

「……その話し方が良いのかと思ってたよ。」

 お。ちょっと話し方がボーイッシュになった。もうちょっと可愛らしくしてほしい所だ。

「それが普通なの?」
「うん、これが普通だよ?」

 あー充分です。充分、女の子です。ありがとうございます。人間そっくりです。

「リルにはその話し方が似合うよ。」
「そうかな?じゃあ、今からはそう話す。」

 ……口調だけ聞いてるとどちらがリルなのか僕なのか分からないな。キャラ被り……なのか!?ま、いいや。気にしたら負けだ。

「リルにはどこか行きたい所ある?」
「風竜王ゲイリルウィントのトコ。」
「それって何処なの?」
「えっと……この国の王都。」

 王都か……。辺境にいても良いけど、1回は王都にも行ってみたいし、何としても魔法は覚えたい。でもリルはそういう情報を知らないだろうし……やっぱり行ってみるか。

「じゃあ、行ってみようか。」
「うん!」

 僕らは宿を出る準備をした。カハメルから王都までは1ヶ月ほどの旅だ。僕の〈収納〉のレベルが7まで上がっていることで、既に無限に近いほどの物が入る。食糧を大量に調達する費用がある。お金には困っていない。伊達に青色冒険者にしてはいない。下級貴族並には持っているだろう。一応、預けているお金を引き出すためにギルドに行った。

「すみません、お金の引き出しをしたいのですが。」
「あ、神代さん。」

 僕は毎日ギルドに出入りしているのでギルド職員とは顔見知りである。この受付の人も、だ。

「幾らほど引き出されますか?」
「あー全部でお願いします。」
「……ぜ、全部ですか?」
「はい、そうですが?」
「何の為に……?」
「そろそろ次の街に行こうと思いまして。」
「…………え、ええ!?」

 あ、ちょっと……。受付嬢の声を聞いた周りの冒険者が反応した。

「おぉ!我らの親分ボスが遂に街を出るのか!」

 ん?想像していたのと反応が違うぞ。

親分ボス!次の街でも頑張ってくだせえ!」

 え?いやいや。喧嘩売ったり、無理だろ的な事言うのかと思ったのに。

親分ボース親分ボース!」

 何故か冒険者ギルド内に親分ボスコールが響き渡った。受付嬢も親分って言ってるよ。この空気……。早くお金を……。

「あのー早くお金を。」
「……す、すみません!」

 受付嬢は奥へ走っていった。途中でコケていたが、見なかったことにする。タタタタッと足音が聞こえてきたかと思うと、受付嬢が戻って来た。

「すみません、私達ではここまで持ってこられないので奥へどうぞ。」

 そう言われると僕は奥へ付いていった。

 僕達が着いた場所は巨大な金庫だった。受付嬢によるとここにはお金や買い取った素材などがあるため、大きい金庫が必要だと。僕は受付嬢の後に続いて、金庫に入った。僕の金庫は最奥にあるらしい。

 僕は受付嬢に冒険者カードを預けた。この冒険者カードによって金庫を開くのだ。1つの冒険者カードにつき、1つの魔法回路のようなものがあるらしい。ICカードに似ている。

 扉が厚い金庫が重々しい音を立てながら開いた。金庫の中には金貨や銀貨で一杯である。全て僕の財産だ。青色の冒険者になるまでに数万の依頼を達成してきた。特に討伐依頼を中心に受けたこともあり、依頼達成金が多かったのでここまで貯まったのだ。

 この世界の通貨の価値は以下のようになっている。
 王金貨>大金貨>金貨>小金貨>大銀貨>銀貨>大銅貨>銅貨>鉄貨

 1000枚貨幣で1つ上の価値の貨幣1枚になる。僕の金庫には未だ王金貨は無いものの、大金貨なら数100枚はある。全部で大金貨800枚ほどだ。

 僕はそれを全て〈収納〉に入れた。〈収納〉の5%ほどを貨幣で消費した。まだ75%ほど余っている。スキルって使えるね。

 僕は受付嬢に御礼を言うと、急いで部屋に戻った。

「タクト、どうしたの?」
「あ……リルか。……ギルドで騒がれたんだよ、親分ボスって。」
「……ボス?タクトはマスターじゃないの?」
「……リルもか。」

 この街の人達は何なんだ。僕が何をしたって言うんだ。この国で最も早い期間で青色冒険者になったぐらいだよ!?……いや、それが原因なのか。リルがいるから討伐依頼とかは楽なんだけどね。小指だけで勝てるし……。この街には愛着があるけど急いでお暇するとしよう。さよなら、カハメル!

 僕らが宿のチャックアウトをすると──鍵を返しただけだが──夕暮れになっていた。

 街の門へ体を向け、第一歩を踏み出そうとした時……その声は響いた。

「神代拓人さん!待って下さい!」

 そう、声を上げるのはこの国のたった1人の王女陛下であった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品