草も生えない冒険譚

たかし

11話【絶望】

前書き

加護の遺跡で女神の像を見つけたミイレとぺティラ。
そこで待ち受ける大冒険とは…?


「な、なにこれ…?」

静かに佇む女神の像を見て、ぺティラがそう呟く。

「この遺跡の古い歴史でしょうか…?」

ミイレはそう言いながら
光魔法で周囲を照らしながら女神の像に吸い込まれるかのように近づいていく。

「ちょっと!あんたが先にいったら真っ暗になるじゃない!」

そういってミイレの跡を駆け足でついていくぺティラ。

「す、すいません!」

そして二人は巨木以上にも及ぶ大きな女神像を下から見上げる。

そして、ミイレが女神像に触れたその瞬間…

「え?えぇ!ええええぇええ??!」

女神像が光りだし、
ミイレとぺティラはその光に飲み込まれていった!!


一方、その頃。

「あいつら大丈夫かなぁ…?」

そう不安げに俺は呟いた

「あの二人、回復と攻撃魔法使えるからそう簡単には死なないと思うよ?」

縁起でもない事言うなよ…
我が妹ながら恐ろしい。

でも確かに言われてみればそうだ。
ぺティラの回復魔法に
ミイレの光属性の攻撃魔法。
こんなバランスの取れた二人はまずここのモンスターの戦闘では負けないだろう。

問題は俺達。
芹那は正直言って弱い。
平手打ちは俺にしか効かない。
お疲れ。

そして俺だ。
テレパシー能力は戦闘には不向きだ。
だから殴るしかないのだが
この遺跡のモンスターはアンデッドが多い、物理攻撃が効かないのだ。

だから前までミイレの光属性魔法に頼ってたのだが。
先程失った二人は痛い。
行方もわからないから助けにもいけない。
まず遺跡は完全攻略したわけではないから
ここから先も未知数だ。
どこがゴールかなんてわからない。

そう思っていた矢先、
公園でも作れそうな大きな通りに出た。

「なーんかボス部屋っぽいところだな〜」

「お兄ちゃん…それフラグだからやめて」

確かに我ながら凄いフラグを立ててしまったが
モンスターの気配も無いとテレパシーでわかっているのだ。
残念だがこのフラグは回収できない。

と思っていたが。

ドンッ…!

「な、なんだ!?」

天井からなにかが降ってきた…!?

その方に目をやると…

アンデッド…?

ゾンビ…?

いやそんなの俺のテレパシーが見逃すはずがない!!

まさか…?

人間??!
そく見たら男の子だ…!

そうか…
俺はこの遺跡に入ってきてからずっと
モンスターを探すためだけにテレパシーを使っていた。
こんな馬鹿でかい遺跡の中を全て探すには
モンスターという一点に絞るしかなかった!
まさか人間がいるとは…!

しかも明らかにあいつはもう人間だけど人間じゃないって感じだな…!
めっちゃ襲ってきそうな感じだ…!

どうする…!?


「きゃぁぁぁあー!!!」

そしてミイレ達は…

「これは…一体なに?」

ミイレとぺティラは脳内にある映像を見せられていた。
それは女神像からのメッセージだった。
おそらくここに来た人に知らせたい事があったのだろう。



昔々、感染ウイルスをその身に宿して産まれてくる子供たちが2割を占めていた。

その感染ウイルスはゾンビ化、理性を失い、ただ暴虐に暴れ回るだけの怪物。

その時代は、子供が産まれてすぐに検査がされる、そしてウイルス判定が出た子供はこの遺跡に監獄されるのだ。

食事はとれるものの、
誰とも話せず、遊べず、喜べず、楽しめず、
ただひたすらに、泣き、悲しみ、
この体に産まれてきた自分を呪い、憎み、

そしてゾンビ化していった子供達はこの遺跡でのアンデッドとなる。

それでも我々はこんな暴虐非道な事をいつまでも続けていいわけがないと。
ワクチンを作り出すことに成功した。

しかし、その時代に魔法などはなく。
ワクチンを使用して子供たちを救おうとするにも、アンデッド化して凶暴化している子供たちに注射器を指す隙なんてありはしなかった。

私にもっと力があれば…!!
子供たちを救い、あんな被害を出すことはなかったのに…!!

私は研究科。
このメッセージをここに残します。
未来でもしもこの遺跡に来た人がいれば。
お願いします。
この女神像の手元にスイッチがあります!
そこを押せばワクチンが入った箱が出てくるはずです!!
頼みましたよ、旅のお方。


そして、ミイレ達は女神像の前に戻された。
そして二人は迷うことなく女神像の掌のスイッチを押した。すると、

「これね。」

女神像の足元からワクチンと思われる注射器がたくさん詰まった箱が出てきた。

「これで子供たちを救ってあげなくちゃ!」

ミイレがそう心に誓う。
そして突然女神像が揺れだし。
女神像が隣にズレた…?
どんな仕掛けかはわからないが。

隣にズレたのにはなにかしら意味があるのだろう。
そう2人が思ったのもつかの間

「ぺティラさん!階段がありますよ!」

女神像がいた所の後ろに隠し階段があったのだ。

「なるほどね、面白いじゃない!」

冒険熱心なぺティラにはとても心躍る光景だった。
そしてミイレとぺティラは顔を見合わせて
大きく頷いて、階段を駆け上がった。


その頃、宇宙は

「くっそ!!こいつなんてスピードだ!」

交戦中だった。

こいつ本当に人間か?ほとんどゾンビ化してんじゃねぇのかよ!
いやこんなアクロバティックな動きするゾンビは嫌だよ!?

ひとまず芹那は後ろに避難させて交戦している。
芹那は戦えない。
そしてなにかあったら困る。

実はというと
俺はこの人間に何発も殴りを入れている。
俺の殴りは普通の人より何倍も強いはずなのだが。

「ァァァアア…ァゥア…」

全然効いていないようだ。
もうこいつゾンビだよね??!!
ゾンビ判定出てますよ!?

くそ!このままじゃらちがあかねぇ!
ミイレさえいてくれれば…!

って違う違う!
そうやって他力本願するんじゃなくて
今考えるべきはこの戦いの脱出口、打開策だ!

すると、そのゾンビは芹那に視点を変えた。

「なっ!?」

芹那が気づかれた!?

嘘だろおい。
俺が戦うだけで精一杯ってのに…
芹那を守りながらなんて…!

そんなこと思うすきもなく

「ガァァァァァアッ!!」

鬼の形相で芹那の方に音速で突進していった。

「やめろぉー!!!!!」


「見て!ぺティラさん!アンデッドですよ!」

一方、ミイレとぺティラは宇宙達の事なんて忘れてるんじゃないかと言うぐらい、アンデッドを探していた。

そして現在。

「ぺティラさん!ワクチンをあのアンデッドに指してください!」

「おうよ!私は体術なんてできないけど…!あんたらの攻撃を受けてもずっと回復魔法使っとけば死なないよ!!」

それでも痛みは感じる。
ぺティラはかなりの苦痛だ。

「がァァ!!ガァァァァァアッッッ!」

アンデッドの刃がぺティラを貫く。

「痛いけど、あんたらの心の痛みに比べちゃぁ…!小さいもんよ!!」

そう言ってぺティラはアンデッドの首元にワクチンの注射器を刺し、薬を注入した。

これで、子供たちは元に戻る…
アンデッド化した子供たちを救って
楽しい事とか嬉しい事などを教えてあげよう。
そうミイレとぺティラは思っていた。

が…

「ガァァァァァァァァア!!」

「う………そ?」

アンデッドが人間に戻らない…?
ワクチンが効いていない…??

「なんで…、なんで!!!」

「ぺティラさん!一旦引いてください!あなたは回復魔法を使いすぎです!もう…」

ぺティラが回復するすべは残っていない。
魔力もつきかけていた。

「救ってあげてくださいって…言ってた…じゃ…」

「ぺティラさん!!!!」

その瞬間、ぺティラにアンデッドが襲いかかった。


後書き

ワクチンがアンデッドに効かない…?
そう知って絶望するミイレとぺティラ。
そして大ピンチの4人はどう動くのか…!?

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